バッサ・パルメンセ地方の話の続きです。
エミリア・ロマーニャ州パルマ県北部の、ポー河南岸の平地、バッサ・パルメンセ。
パルマと言えば生ハムが有名。
ところが、バッサ・パルメンセ地方はポー河があるため、パルマの中でも独特な気候(多湿、霧)と地形(低地、平野)です。
そのため、DOPの生ハムの産地には含まれていません。
つまり、バッサ・パルメンセで生ハムを作っても、プロッシュット・ディ・パルマDOPと名乗ることはできないわけです。
ちなみに、パルマのもう一つの名物、パルミジャーノ・レッジャーノは、パルマ県全体がDOPパルミジャーノの産地なので、バッサ・パルメンセでも作っています。
ポー河のおかげで牧草が豊富に生え、それを餌にして牛を育て、牛乳からパルミジャーノを作ったら、その残りで豚を育てる、というサイクルです。
皮肉なことに、生ハムの産地に入れてもらえなかったバッサ・パルメンセの名産品は、サルーミの王様と言われるクラテッロです。
サルーミとは、生ハムやサラミなどの総称。
その王様ということは、生ハムもサラミも全部ひっくるめて、その頂点に君臨するもの、ということ。
すごいですねえ。
クラテッロもパルマの生ハムも、豚のもも肉を塩漬けして熟成させたものです。
いったい、サルーミの王様と生ハムは、どこが違うのでしょうか。
モデナのホテル・リアル・フィーニのクラテッロ・ディ・ジベッロDOPといちじくのモスタルダ
スイスの家庭のパルマの生ハムとメロン
↓まずは生ハムはどうやって作るのかを、プロッシュット・ディ・パルマDOP管理組合のPVで確認してみましょうか。
一番最初に、
「パルマの生ハムの生産地区の境界は正確に決まっていて、北限はエミリア街道から5km南です。
それは、ポー河の霧と湿気から十分に離れるためなのです」
と、地図まで示してきっぱりと言っています。
↓そしてこちらがクラテッロ。
生ハムは骨付きなのに対して、クラテッロは骨を外した肉のみ。
さらに、クラテッロは肉を豚の膀胱で包みます。
↓こちらもクラテッロの作り方を説明している動画ですが、アメリカ人向け(?)のせいか、目の付け所が少し違います。
英語です。
クラテッロのことを、「世界で一番高価なハム」と紹介しています。
また、「生ハムもほぼ同じ作り方だが、需要に答えて大量生産しているし、熟成期間も短いので、値段が安く、スーパーでも売っている」と、かなり歯に衣着せない言い方。
クラテッロ・ディ・ジベッロDOPの熟成期間は10か月から18か月程度で、平均14か月。
大きさが違うので単純には比べられませんか、プロッシュット・ディ・パルマDOPとそれほど違いません。
やはり最大の違いは、霧に包まれながら熟成する点。
そのあたりの話は次回に。
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関連誌;『ラ・クチーナ・イタリアーナ』2008年5月号
“バッサ・パルメンセ地方”の解説は、「総合解説」'08&'09年5月号に載っています。
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