トリュフの話の続きです。
↓ピエモンテ州のトリュフ研究センターが作った渾身のPV。
最初に、雷が落ちて、そこにトリュフが出来た、という映像がありますが、これを解説するとこんな話になります。
この雷、ローマ神話の一番偉い神様で、雷神でもあるジョーヴェ(英語だとジュピター、ギリシャ神話でいうところのゼウス)が落としたもの。
そばにあったのは、神聖な木とされるオークの木。
雷が落ちた土の中から生まれたのが、最初のトリュフ、というのが有名な言い伝えです。
PVでは、雷の後、ドラマ仕立ての話が始まります。
語り手が子供の頃、9月末のある日、ランゲ地方のおじいさんの家に遊びに行きました。
夜中、おじいさんが犬を連れて森に出かけるのを見かけて、不思議に思った少年。
翌朝、父親に聞いてみると、夜の森なんて野生の動物がいて危険なんだから、子供は興味を持たなくていい、と怒られます。
でも、余計に好奇心が募った少年は、祖父がいない間に納屋に入って、あるものを見つけます。
なんだかきのこのようで、変な形で、強い香りがします。
これをポケットに忍ばせて、その晩、少年はおじいさんの後を追いました。
ところが足をすべらせて捻挫してしまい、暗い森の中で動けなくなってしまいます。
懐中電灯の電池も切れてしまいました。
そしてそのまま眠ってしまい・・・。
そして、予想通りの展開が。
結局、少年はトリュフに命を救われたと信じてイケメンに成長し、今ではピエモンテ州のトリュフ研究センターの仕事を立派にPRしているのでした。
めでたしめでたし。
この少年は、トリュフというか、トリュフ犬に命を救われたんですねえ。
トリュフの収穫には、訓練を受けたトリュフ犬が大活躍。
どんな犬種でもトリュフ犬になれますが、イタリア土着のラゴット・ロマニョーロという犬は、トリュフ犬として特に有名。
↓ラゴット・ロマニューロのトリュフ犬
イタリアでも、以前はトリュフを探すのに豚を使っていましたが、戦後、トリュフの需要が増えて訓練しやすい犬を使うようになり、トリュフ豚(?)は完全に姿を消しました。
豚の場合、メスの方が従順でオスに従うが性質があるので、トリュフ探しには向いているのだそうです。
ただし、半分野生の状態で放し飼いで育てた“森の豚”であることも条件。
そもそも、トリュフのあの香りは、トリュフが生き延びて種を増やしていくための生存戦略なんだとか。
外から見える他のきのこと違って、木の根に共生するトリュフは、土に埋もれて成育します。
土の下で育つトリュフは、何の必要があってあんなに強い香りを放つのでしょうか。
まるで、嗅覚の鋭い動物に、ここにいるから掘り出して!と教えているみたいではないですか。
そう、そうなんですよ。
あの匂いは、特定の動物にはとても美味しそうとか、とてもセクシーとか、そんな風に感じるように出来ている訳ですねえ。
その香りに誘われたキツネやアナグマやイノシシが、トリュフを掘り出す。
するとトリュフが地表に出て、胞子が空中に拡散する。
そして新しい木の根までたどり着き、そこで新たに共生を始める、という訳です。
考えてみれば、トリュフの香りに引き寄せられるのは、何も豚やキツネだけではないんですよねえ。
そう、人間だって、トリュフの戦略にまんまとのせられている口です。
何しろトリュフは、イタリアから地球の裏側の日本まで移動することに成功しているんですから。
トリュフに大金を払う人間は、むしろどんな動物よりもトリュフの戦略にはまった生き物に違いありません。
次は黒トリュフの話。
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関連誌;『V&S』2009年4月号
“タルトゥーフォ・ネーロ・プレジャート”の記事の解説は、「総合解説」'08&'09年4月号に載っています。
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雷の落ちたところにトリュフが生える理由ですが、
返信削除このサイトによれば落雷によって窒素が固定されて(NO2-), nitrate (NO3-), or ammonia (NH3+)になり、それらがトリュフの養分になるそうです。
http://botit.botany.wisc.edu/toms_fungi/more.html
http://syrianfoodie.blogspot.com/2010/03/desert-truffles.html