今日はワインの話。
『クチーナ・エ・ヴィーニ』の記事の解説です。
カンパーニアのワイン、モンテヴェトラーノ。
ラベルのデザインが印象的なワインですね。
モンテヴェトラーノは、造っているカンティーナの名前もモンテヴェトラーノ。
というか、このカンティーナでは、このワイン以外造っていません。
コッリ・ディ・サレルノIGTの赤ワインです。
サレルノからほんのわずか内陸に入った、サン・チプリアーノ・ピチェンティーノというところで作られています。
近くにはアマルフィやポンペイがあって、場所的には典型的なカンパーニア地方ですね。
ところが、このワインのぶどう品種は全然カンバーニア的ではありません。
カベルネ・ソーヴィニヨン60%、メルロー30%、アリアニコ・タウラージ10%。
90%が外来種です。
このワイン、商業的な最初のビンテージである1993年のものが世に出た時は、イタリアでは誰も注目しませんでした。
それが、あることを境に、突然スーパーワインとして絶賛されるようになります。
ロバート・パーカーが、モンテヴェトラーノを「南のサッシカイア」と称賛して、100点満点中96点という高得点をつけたんですねえ。
とたんに世界中が注目しました。
それでイタリアもこのワインの存在に気づき、大人気となったわけです。
10年以上たった今でも、このワインのセールストークに、「ロバート・パーカーが南のサッシカイアと呼んだ」、という話は欠かせないようですね。
ここまでなら、ふーん、格付け本の影響力って半端じゃないんだなあ、なんて話で終わってしまいます。
でも、『クチーナ・エ・ヴィーニ』の記事はなかなか面白いですよ。
この話の裏にあった人間模様にスポットライトを当てたんです。
このモンテヴェトラーノの生みの親で、カンティーナの経営者でもあるのは、シルヴィア・インパラートさん。
この女性、元々はカメラマンでした。
カメラマンとして活躍していた頃は、ワイン業界に入ることは全く想像もしていなかったそうです。
でも、ワイン好きと知り合って影響を受け、家族が農場を所有していたこともあって、いつしか、上質のワインを造ることを本気で考えるようになります。
次第にその思いが強くなり、友人たちとの間で生まれた“上質なワイン”の漠然としたイメージを元に、小さな畑でワイン造りを始めました。
出来上がったワインは想像以上に良い出来で、知り合いの間でも大好評でした。
それに自信を得て、シルヴィアさんはロバート・パーカーに試飲用のワインを送ります。
当然、高得点を期待していたのでしょうが、実際に起きたことは、彼女の想像を超えていました。
突然、世界中が彼女の小さなカンティーナに注目しだしたのです。
世界中が注目するワインを、趣味のレベルで造ることはもはや不可能。
自分が持っているものは、わずかな畑と4匹の猫。
これでこの先、市場にワインを出し続けることができるのか。
シルヴィアさんは、ワイン造りをやめることも考えたそうです。
世界的な名声を手に入れながら、それを手放そうと考えるなんて、名声のプレッシャーってそんなに重いものなんですねえ。
しかも、モンテヴェトラーノは外来品種のぶどうが90%。
これはカンパーニアのワインではない、フランスワインだ、という言われ方もしたそうです。
畑と地元に強い思い入れがあるシルヴァーナさんにとっては、きっときつい批判だったはず。
そんな時、頼れる相談相手となったのは、エノロゴのリッカルド・コタレッラ氏でした。
悩んだ末に、シルヴィアさんはワイン造りを続けようと決断します。
結局、モンテヴェトラーノはますます注目を集め、カリスマワインの一つとなった訳です。
シルヴィアさん、こんなことを語っています。
「他のカンティーナを訪れるたびに、いいなあ、と思うのですが、ここに戻ってくると、この場所にかけた私の情熱は、他の誰にも負けていない、という思いが強くなります」
一見、ラッキーなサクセスストーリーのように見えるカリスマワインにも、色んな物語が隠れているんですねえ。
シルヴィア・インパラートさんとモンテヴェトラーノ
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関連誌;『クチーナ・エ・ヴィーニ』2008年1月号
“モンテヴェトラーノ、シルヴィア・インパラートへのインタビュー”の解説は、「総合解説」'07&'08年1月号、P.38に載っています。
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高くて手が出ないし地品種じゃないしと見ないふりしていた蔵元ですが、プレッツェーモロさんのお話を読んで、そうなのかと見直しました。ありがとうございます。うわべだけで判断してはいけませんね。とはいえ、やはり手が出ませんが。あ、シッラの銅像はどちらもシッラではありませんでした(ややこしい)。写真を見直したら人魚と漁師でした。
返信削除くるりさん
返信削除このワインは、やっぱり値段がネックですよね。シルヴィアさんは、モンテヴェトラーノは買占め競争の犠牲者だと言ってます。外国の市場の主導で投機的に値段がつけられているのに、結局カンティーナに不信感を抱かれてしまうと。有名になると、しょいこむ物も多いんですねえ。
銅像フェチとしては、シッラの銅像、なんだかやたら気になる存在になっちゃいましたよ~(笑)
私もくるりさんと同じ感覚でした、ロバートパーカーjrさんが南のサッシカイアと言うのですから、注目しますね、私の所に卸しているワインアドバイザーはよくロバートパーカーjrさんの名前を使います、
返信削除裏話っていいですね、ブドウ種でフランス的だと言う方もおられるのでしょうかねぇ~。
一回試飲して、お店にも思うのですが、やはり値段がネックですね、私の所の最高価格ワインはアマローネ·コスタセーラぐらいなんです。
でもprezzemoloさんの記事を読んで機会あれば飲んでみたいワインです。
ワインの味をあれこれ語るのはシロウトには難しいのですが、裏話ならおまかせください。得意分野です(笑)。
返信削除シロウトがワインの値段を判断するのはもっと難しいですよー。特に高級ワインは滅多に口にすることがないし。
レストランのワインの品揃えや値段には、そのお店の考え方が出ますよね。
アマローネ・コスタセーラが最高という選択は面白い~。ヴェネト好きですねー♪