今日はカルドンの話。
『ヴィエ・デル・グスト』の記事の解説です。
カルドン。
イタリア語では“カルド cardo”。
見た目はセロリ。
『ヴィエ・デル・グスト』の記事にもありますが、店先に並んでいても、知らない人なら、「育ちすぎたセロリだなあ・・・」、ぐらいにしか思わない。
カルドン, photo by tvol
カルドンを使ったイタリア料理と言えば、ピエモンテ料理のバーニャ・カウダが有名。
カルドンはイタリア各地で栽培されていますが、ピエモンテ(特にアスティ地方)のグルメたちは、この野菜には格別の思い入れがあるようです。
カルドンは野生のアーティチョークが祖先。
味もアーティチョークにやや似たところがあります。
繁殖力の旺盛な植物で、放っておくと、縦にも横にもどんどん成長します。
育ったカルドン
これをそのまま食べようものなら、渋い、苦い、硬いの三重苦。
そこで人間は、カルドンを美味しく食べるために、軟白栽培の方法を用いることを思いつきました。
カルドンを土の中に埋めたり覆いをしたりして、光を当てないで育てる方法です。
『ヴィエ・デル・グスト』によると、カルドンの軟白栽培の方法が記された16世紀の書物が残っているそうですから、かなり昔から行われていたんですねえ。
カルドン自体は、地中海地域では古代からお馴染みの野菜だったようですが。
軟白の方法は地方によって違います。
最も一般的なのは、茎を縛りながら下2/3を遮光性のシートで覆う方法。
ピエモンテやトスカーナなど一部では、
茎を束ねて縛り、覆いをしながら根元に土をこんもりかぶせたり、
茎が根から離れないようにしながら倒して横に掘った穴に埋める、
という方法も用いられています。
この方法で栽培したカルドンはゆるやかに曲がっているので、“カルド・ゴッボ cardo gobbo”、または“スパドーネ spadone”と呼ばれます。
“ゴッボ”とは「猫背」という意味で、“スパドーネ”は「剣」という意味。
この軟白栽培は、経験が物を言うデリケートな作業。
そしてその技を高度に極めているのが、ピエモンテの栽培農家なんですねー。
この地方のカルドンは、収穫の最低20日前に、先端だけ残して土の中に15~30cm程度埋めて軟白します。
カルドンは冬の間だけ出回る野菜ですが、土の量や埋める時期が適切でないと、霜の被害を受けた、腐ったりします。
だから、経験に頼るこの方法はとても難しく、イタリアでもこの地方でしか行われていない特殊なもの。
特に、ベルボ川流域の砂質の土壌で栽培される“カルド・ゴッボ・ディ・ニッツァ・モンフェッラート”は、生で食べることができる唯一のカルドンとして、とても高く評価されています。
スロー・フードの後援食材にもなっています。
カルド・ゴッボ・ディ・ニッツァ・モンフェッラート
旬の時期は10月から1月と、かなり限定されています。
秋から冬にかけてピエモンテ、特にアスティ地方を訪れる人は、ワインと白トリュフ、そしてカルド・ゴッボ・ディ・ニッツァ・モンフェッラートは、食べておかないともったいないですねー。
カルドンの話、もう少し続けます。
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関連誌;『ヴィエ・デル・グスト』2007年12月号
“カルドン”の記事の解説は、「総合解説」'06&'07年12月号、P.32に載っています。
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