地中海を代表的するマグロは、大西洋クロマグロ。
イタリア語では、トンノ・ロッソ tonno rosso。
大西洋クロマグロ, photo by José Antonio Gil Martínez
マグロは魚の中では唯一、“血が熱い”んだそうですね。
イタリア語では、“サングエ・カルド sangue caldo”、と呼んでいます。
温血ってこと?
その方面が専門の人なら常識だとは思うんですが、血が温かいなんて、素人にはちょっとびっくり。
これは、体温を海水より高く保って、広大な海域を回遊する体力を得るためなんですね。
だから季節に合わせて、海水温が最適の場所へ移動するわけかあ。
春の終わりから夏の初めにかけてイタリアにやってくるクロマグロは、大西洋からジブラルタル海峡を通って地中海にやってきます。
下の地図の一番左のマークがジブラルタル海峡。
海峡を抜けたマグロは、東に向かいます。
一部はスペイン、フランス、リグーリア沿岸を通り、イタリア沿いをシチリアまで南下します。
そしてシチリアにぶつかったら島の北側を通り、シチリアと本土の間のメッシーナ海峡を抜けて南に出ます。
この後、再びジブラルタル海峡を通ってメキシコ湾流まで出ていきます。
この間に産卵も行うそうです。
マークは左から、ジブラルタル海峡、カルロフォルテ(サルデーニャ)、ファヴィニャーナ(シチリア)、メッシーナ海峡
こうやって見ると、シチリアはマグロ漁には絶好の位置にありますねえ。
昔はシチリアの沿岸部はどこでもマグロ漁が盛んだったそうです。
シチリアだけでなく、トスカーナ沖のエルバ島やナポリのマグロ漁も知られていました。
ちなみに、メッシーナ海峡を南下した先、シチリアの一番南端の岬は、パッセロ岬と言います。
これは、マグロの群れを見張る漁師たちが、「マグロが通るぞ(パッサロ)!」と叫んだから、こう呼ばれるようになったのだそうです。
別のルートもあります。
フランスの沖から季節風に乗って、サルデーニャの西側にやってくるルートです。
カルロフォルテのマグロはこのルート。
『ラ・クチーナ・イタリアーナ』によると、島の北側で2、3日吹き荒れた季節風が収まった時がマグロ漁のタイミングだとか。
この季節風、イタリア語では“マエストラーレ”と呼びますが、フランス語の“ミストラル”という名前の方が有名。
北西の冷たい風です。
回遊するクロマグロ
メキシコからイタリアまで、大海を泳ぎ回るマグロに国境なんてないけれど、人間に捕まった場所がそのマグロの運命の地。
イタリア沿岸で捕まったマグロは、日本に運ばれたら「イタリア産天然本マグロ」と呼ばれて、高級ブランド品となる宿命。
でも、もちろん一部はイタリアでも消費されているわけで、次は、イタリアのマグロがイタリアでどう食べられているのか、見ていきます。
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関連誌;『ラ・クチーナ・イタリアーナ』2006年5月号(クレアパッソで販売中)
“カルロフォルテ~サルデーニャのマグロ漁の島”は「総合解説」P.2に載っています。
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