2018年5月30日水曜日

レモンのティラミスとババミス

ここのところ毎週水曜日にはクレアパッソで販売しているお勧め本を紹介しています。
今日は、そろそろカンパーニアのドルチェが食べたくなる季節になったので、アマルフィの有名パスティッチェーレ、サルヴァトーレ・デ
リーゾの本、『ドルチ・デル・ソーレ』の紹介です。



この本は、サルヴァトーレのレトロな子供時代や美しい地元の写真が、美味しそうなドルチェの間に満載で、眺めていると、アマルフィでバカンスを過ごしている気分になります。

前回のブログのテーマがマスカルポーネだったので、アマルフィのティラミスはどんなドルチェだろうと思って見てみたら、やっぱりというか当然と言うか、レモンのティラミスでした。
今気が付いたけれど、マスカルポーネは自家製ですねー。

スポンジ生地の代わりにナポリ名物のババを使うのと、ババミスだって。
真面目に言うから頭から離れなくなったー!



彼のサヴォイアルディのリチェッタは以前紹介しています。
こちら

レモンのティラミスは、マスカルポーネクリームにレモンクリームと自家製リモンチェッロを加えます。
シロップもリモンチェッロとレモン汁のシロップ。

彼のドルチェの重要な主役、アマルフィのレモン
 ↓


動画に登場するレモンの有名な生産者、ルイジ・アチェート氏は本にも登場します。
カンパーニアに行ったら、地元産のレモンを味見することをお勧めします。
分厚い皮に覆われた大きなそのレモンは、今まで知っていたレモンの味とは全然違います。
酸っぱいだけでなく、コクがあって甘く、おやつにレモンを食べる感覚が理解できます。

カンパーニアの名物チョコレートケーキ、トルタ・カプレーゼも、彼の手にかかれば美味しそうなレモンケーキに変身します。

粉の材料はチョコレート、アーモンドとヘーゼルナッツ、コーンスターチで、グルテンフリーなので、小麦アレルギーの人も食べられるケーキです。



このケーキの醍醐味は粉糖をふりかけて作るステンシル模様だと個人的に勝手に思っていますが、
このガラはちょっと普通ですね。
本のデザインはもっと素敵で、店のレモンのカプレーゼと同じです。
こちら

さらにもう一つ、決定的な違いがあります。
本のカプレーゼはホワイトチョコレートで作るので、ケーキが黄金色なんです。
なのでレモンが一層強調されています。
レモンはチョコレートと一緒に皮のすりおろしを加えます。

アマルフィのレモンツアーはバギーで巡ります。
 ↓





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『ドルチ・デル・ソーレ』のページはこちら
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2018年5月28日月曜日

マスカルポーネ

現在発売中の「総合解説」には、2種類のチーズが取り上げられています。
マスカルポーネとカステルマーニョです。
 あ、正確に言うと、マスカルポーネはチーズではなく、
 un derivato del latte, anzi della panna/牛乳の、いや生クリームの副産物
です。

ホームメイド・マスカルポーネ
 ↓


上質の生クリームが手に入るシェフは、マスカルポーネも手作りしてこだわっているんですね。

 ↑
手作りフレッシュチーズの本、
によると、マスカルポーネの材料は、

生クリーム500mlにレモン汁大さじ2
これだけ。

作り方は、
・生クリームを湯銭にかけて80℃に熱し、レモン汁を加えます。
・数分かき混ぜて濃度を出し、サラダボウルに入れて冷蔵庫で6~10時間休ませます。表面に軽くホエイが浮かびます。
・ガーゼで覆ったざるかシノワに入れて冷蔵庫で最低12時間水気を切ります。
・密閉容器に入れます。冷蔵庫で5日程度保存できます。

なるほど、生クリームに酸を加えて固めて、レモン汁のクエン酸をホエイと一緒に排出して出来上がり。

レンネットではなくクエン酸で固めます。
チーズ臭さのないチーズです。
昔はもう少し酸味が残っていたけれど、時代と共に、酸味はほとんど消えたのだそうです。
傷みやすいので、1970年代までは寒い季節にだけ造られていたというのも納得。

「総合解説」ではリチェッタもドルチェ、サラート各種紹介していますが、その中に、マスカルポーネのジェラートというのがあります。
原材料が生クリームなら、マスカルポーネのジェラートが簡単にできるのも納得です。
リチェッタも色々ありそうですが、ザクロのシロップとカボチャの種のプラリネ添えというのは、さすがにイタリア人でないと思いつかないだろうなあ。
チコリにマスカルポーネがベースの詰め物をしてオーブンで焼くチコリのグラタンも、マスカルポーネとパルミジャーノでマンテカーレしてくるみを散らす白いリゾットも、発想
はかなり上級なイタリアン。

記事ではマスカルポーネの名前の由来もさらっと説明していますが、かなりさらっとなので、きっと諸説あるんですね。

発祥地ローディには、アルティジャナーレのマスカルポーネの伝統があります。
 ↓

こ、これは美味しそうですねー。
プーリアのアンドリアでブッラータが美味しいと評判の店に行った時のことを思い出しましたよ。
買う前に、店員や他のお客に、しつこく「冷蔵庫には絶対入れるな」と念を押されたのです。
アルティジャナーレのチーズの世界では、冷蔵庫は天敵か何かかと思いましたが、上の動画を見る限り、冗談じゃなかったみたいです。
ローディに行ったら、アルティジャナーレの(大量生産のじゃないですよ)マスカルポーネを味見しないと。
ただし旬は冬。
店のwebページはこちら


次はカテルマーニョの話です。




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“マスカルポーネ”の記事とリチェッタの日本語訳は「総合解説」2016年1月号に載っています。
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2018年5月25日金曜日

スパゲッティの盛り付け方

今月号の「総合解説」で、


訳していて一番印象に残ったのは、『サーレ・エ・ぺぺ』の“シックなスパゲッティ”の記事の1品目のリチェッタ、「ポロねぎのフォンドゥータ、ヘーゼルナッツ、黒トリュフのスパゲッティ」の盛り付け方の説明文。

...unite gli spaghetti formando un torchon con la pinza.

スパゲッティをピンツァ(ピンセット型トング)でtorchonの形にして加える。

torchonですと?
初めて目にした言葉です。
そもそもこれ、フランス語だし・・・。
でも、なんの説明もないので、イタリア人なら理解できる言葉なのでしょうか。
フランス語でtorchonトルションとは、布、布巾、キッチンクロスなどという意味。
料理用語の場合は、フォアグラ・オ・トルションなど、フォアグラの調理方法を表す時に使う表現。
フォアグラをテリーヌ型ではなく布で包んで調理したもの。
ひょっとして料理人なら、知ってて当たり前の言葉?

トルション調理中
 ↓
The making of the Torchon
photo by Nick Dawson

とにかく私は布巾という言葉で勝手に納得しました。
そして料理の写真を見たら、皿の上に巻いたナプキンが置かれているような形をしています。
今月のパスタのテーマは、いつものスパゲッティをちょっとゴージャスに、です。
スパゲッティをヘーゼルナッツ入りの黄金色のバターであえてポロねぎのフォンドゥータの上にトルションに盛り付け、黒トリュフを散らしたこのパスタは、かなりゴージャスに見えました。
ちょっと太めのパスタはトルションの盛り付けがよく合います。
スパゲッティの盛り付け方でよく使われるのは、nidi/巣という言葉。
フォークでくるくる巻いて作る形です。

スパゲッティのニーディ
 ↓



ピンツァとレードルで盛り付け
 ↓


抜き型を使った盛り付け
 ↓



ピンツァを使った一般的な盛り付けは円錐形になりますが、トルション型は長さがあるので円筒形になり、料理に奥行きが生まれます。

この盛り付けはトルション型ではありませんが、イメージは伝わるかも。
 ↓



トルションに盛り付けると言うテクニックを知ってから、トップシェフによるパスタの料理集、『パスタ・レボリューション』を見てみると、



やはり円形の盛り付けが主流ですが、中には奥行きのある盛り付けをしている人もいます。
中でも、アレッサンドリアのドゥエ・ブオイのアンドレア・リバルドーネ・シェフの”スパゲット・ミラノ”の盛り付けはとても美しいです。
これはリゾット・ミラネーゼをスパゲッティにしてしまった活気的なパスタです。

超シンプルなソースのパスタほど、この盛り付けは生えますねー。

リバルドーネ・シェフのスパゲット・ミラノ。
ピンツァで盛り付けてますね。
 ↓



ピンツァを上に抜くか横に抜くかだけで、こんなにも違う姿になるんですね。


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“シックなスパゲッティ”のリチェッタの日本語訳は、「総合解説」2016年1月号に載っています。
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2018年5月23日水曜日

『アマトリチャーナ』

新着書籍のご案内です。
今日は『アマトリチャーナ』。


2年前、アマトリーチェに起きたことを覚えていますか?
いつかはアマトリーチェに行って本場のアマトリャーナを食べてみたいと思っていたのですが、たくさんの建物が崩壊した街の映像を見て、この夢も、もうかなうことはなくなったなあと思ったものでした。

あれから2年。
アマトリーチェはどうなっているのでしょうか。

地震から2年後のアマトリーチェの姿。
いまだに衝撃的。
 ↓


地震の4日前のアマトリーチェ。
 ↓


復興途中のアマトリーチェ。
 ↓


芸術や建築物だけでなく、アマトリーチェには貴重な食文化もありました。
国民的パスタソース、アマトリチャーナの産地には、イタリアが失いたくない食の伝統もあったのです。
アマトリーチェのグアンチャーレは食生活のベースになる食材で、復興のシンボルの1つ。
 ↓



震災を受けた町の復興には様々な方法があるでしょう。
一番周囲を動かすのは住民の情熱のような気がします。

『アマトリチャーナ』は、イタリアが世界に誇るパスタソースの産地のために、ALMAという国際イタリア料理学校が中心となってイタリア料理業界に呼び掛け、それに賛同したシェフたちが地元のシェフたちと一緒に作り上げた本です。
イタリア語と英語の完全2か国語表記で、世界中の人にアマトリチャーナを伝えて残したい、という情熱が伝わってきます。

ALMA
 ↓


本の中には、この料理はローマ料理ではなく、羊飼いの料理だと書かれています。
グアンチャーレ・アマトリチャーナの重要性など、
正直言ってこの本を読むまでまったく知りませんでした。

グアンチャーレ・アマトリチャーナ
 ↓


アマトリーチェが元気を取り戻したら、行ってみたいな、と思える場所です。

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2018年5月21日月曜日

アンナ・マッツェル シェフ

先月号の「総合解説」の記事ですが、シェフの記事で紹介したのは、アンナ・マッツェルさんでした。

アルト・アディジェで唯一の星つき女性シェフだそうです。



店はツム・レーヴェン。webページはこちら



店のある南チロル地方は、第一次大戦後、オーストリアからイタリアに割譲された地方。
イタリアとは思えないドイツ系イタリアの文化圏。



アンナはウィーンでマッサージ師になる勉強をしましたが、手打ちパスタを出すトラッリアをやりたいという昔からの夢を実現させた人。
夫の祖母が切り盛りしていた古い店を受け継いで、全部一人でやってきました。

店を始めて2年後には娘が生まれています。
その娘も、今はオーストリアのワインアカデミーに通ってソムリエを目指しながらホールを手伝っているそうです。

ミシュランで最初の星が付いた時、厨房はアンナ一人だったそうです。
その後4年間星をなくしますが、8年前に新しく星がつきました。
その当時のことを、情熱はあったけれど、経験が足りなかった、多分、最初の星は早すぎたんです。と謙虚に語っていますが、この間も勉強を続けて、ホテル学校に通い、有名シェフの元で短期間働き、たくさん読んでたくさん食べたそうです。

アンナが得意なのは内臓料理とドルチェ。
特にトリッパ、胸腺、腎臓についてはたっぷり学んだそうです。
今回紹介したリチェッタの中にはリードヴォーの前菜と腎臓の料理があります。




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“アンナ・マッツェル”のリチェッタの日本語訳は、「総合解説」2015年12月号に載っています。
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2018年5月18日金曜日

シチリアの月桂樹の祭り

総合解説」1月号の、今月の食材から。
ローリエの話です。



地中海が似合うハーブではありますが、この葉っぱの香りが、1月の地中海の典型的な香りだったとは知りませんでした。
まして、ローリエが主役の祭りがイタリアにあるというのも初耳です。
シチリアのメッシーナ県、トルトリーチのサン・セバスティアーノの祭り(1月20日)です。

サン・セバスティアーノはトルトリーチの守護聖人で、ペストの守護聖人としても知られ、数々の名画や名曲や三島由紀夫の小説のモチーフにもなっているとても有名な聖人。
彼は柱に縛られて矢で射られて迫害され、殉教したと伝えられています。
月桂樹は彼の象徴のような存在。
祭りの起源は1682年に起きた洪水だそうです。

祭りは2つに分かれています。
最初は祭り直前の日曜日、月桂樹の行進
 ↓


次は祭り当日
 ↓


白装束に裸足、女性は白いスカーフを頭にかぶって行進。
なんとも荘厳で美しい祭りですね。

おまけの動画
トスカーナ風のフレッシュのローリエのフリッタータ。
 ↓


ローリエのみじん切りを加えた薄焼きフリッタータにセージのフリットを添えた1品。
地中海のハーブの香りが満載。

シチリア風インヴォルティーニ
 ↓


パンのクラム、刻んだピスタチオとサラミ、おろしたチーズ(カチョヴァッロ)、オレンジとレモンの果汁というシチリアの名産品を混ぜて豚ロース肉で巻き、オーブンで焼くインヴォルティーニ。
ローリエは先端に1枚刺すだけだけど、かなり効果的。



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“今月の食材”の日本語訳は「総合解説」2016年1月号に載っています。
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2018年5月16日水曜日

新年の開運食材

総合解説」2016年1月号発売しました。

1月号は、当然ながら、新年の料理の話題が多いです。
毎年1月号には、年末年始に食べる縁起物の話題が登場するのですが、今年は“年越しのホームパーティーメニュー”という記事の中に、縁起物をどうやって食べるのか、そのサーブ方法が写真付きで語られていました。
年が変わる瞬間を祝うというのは、日本もイタリアも共通ですが、その瞬間を遠出して祝う人と、家庭で迎える人がいるというのも日本と一緒。
海辺や広場に繰り出すのも楽しそうですが、都会の住民は、家庭に友人を集めてちょとお洒落してパーティー、というのもありだそうで。
今回訳した記事は、ミラノの中心部の住民の新年の迎え方、というもの。
プチゴージャスで、ちょっとだけ伝統的、という、典型的な都会に暮らす現代のイタリア人の暮らしぶりを再現しています。
さて、新年の縁起ものですが、ぶどう、ざくろの粒、塩味のアーモンド、オリーブ、蜂蜜とローズマリーでカラメッラートしたくるみを、それぞれ小鉢に盛り付けてテーブルに並べておきます。
客はスプマンテがベースのカクテルを飲みながら、これらの縁起物を取り分けてつまむビュッフェスタイル。

『サーレ・エ・ペペ』誌には毎号イタリアの都会や田舎の暮らしが分かるような美しい写真がたくさん載っています。
雑誌の定期購読もお勧めです。

開運のザクロのカクテル
 ↓


イタリアの新年に欠かせない開運食材は、ざくろとレンズ豆。
ワインにざくろの粒を入れるだけでもOK。
 ↓


ぶどうは年が明けた夜中に12粒食べます。
1粒が1ヵ月分。
ドライいちじくと栗も縁起物。
さらにスパゲッティ、スプマンテに大ウナギも。
細長い麺は長寿を連想させるからだそうです。
年越しスパゲッティもありかも。

えーと、今は5月でしたっけ。
最近は、春だか夏だか分からない陽気で、
完璧に季節感を失っています(汗)。



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“年越しのホームパーティーメニュー”の記事とリチェッタの日本語訳は、「総合解説」2016年1月号に載っています。
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2018年5月14日月曜日

去勢鶏のボッリート

クリスマスの主役の鳥、七面鳥と鶏ですが、七面鳥は雌のほうが味がマイルドで柔らかいと言われています。
一方鶏は、雄を去勢しして、大きくて締まった肉にします。
なので、ボッリートのようなリチェッタが向いています。



元々は卵のために飼育されるようになった鶏ですが、
雄同士を一緒にするとケンカする、という訳で、去勢するようになりました。

鶏のボッリートはイタリアのクリスマス料理の定番。
ボッリートが名物の地方と言えば、ピエモンテですね。
去勢鶏(カッポーネ)の産地としても、ピエモンテは知られています。

カッポーネの産地として有名なのはクーネオ県のモロッツォ。



ボッリートに欠かせない付け合わせは、モスタルダ。
香味野菜と一緒にゆでたカッポーネに付け合わせを添えるだけでOK。
総合解説」の去勢鶏のボッリートでは、ボッリートに野生りんごのマントヴァ風モスタルダとラディッキオ・トレヴィジャーノ(タルディーヴォ)を付け合わせにしています。

マントヴァ風りんごのモスタルダ。
 ↓


下の動画はヴェネトの去勢鶏。



ラディッキオ・トレヴィジャーナはヴェネトの名物野菜なので、ヴェネトのクリスマス料理には欠かせないようですね。

カッポーネのゆで汁はトルテッリーニ・イン・ブロードに。




ブルーノ・バルビエーリシェフはかなりテレビ向き。
トルテッリーニ・イン・ブロードのブロードは、もちろん去勢鶏のブロード。

最後はモロッツォの去勢鶏と栗のロースト
 ↓



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“七面鳥と去勢鶏”のリチェッタの日本語訳は「総合解説」2015年12月号に載っています。
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2018年5月11日金曜日

フランス王の披露宴の七面鳥

発売中の「総合解説」2015年12月号で、訳していて一番記憶に残った話は・・・。

フランス王シャルル9世の結婚披露宴のメイン料理は七面鳥で、王は一番美味しいと言われている部位を食べたと語り継がれている、

というもの。
さーて、当時のフランスの宮廷では、どこの部位が一番美味しいと言われていたのでしょうか。

その前に、シャルル9世って誰?
この人、メディチ家からフランス王家に嫁いだカテリーナ・デ・メディチの息子です。

カテリーナはイタリアの宮廷の食文化をフランスに伝えた人、とイタリアでは信じられていますが、フランスでは、カトリックとプロテスタントの対立の黒幕とも考えられています。

イタリア目線のカテリーナ・デ・メディチ像。
カテリーナ・デ・メディチとフランス料理
 ↓


カテリーナがフランスに嫁がなかったら、今のフランス料理はなかった、というのがほとんどのイタリア人が信じている説。
でも実際には、あまり根拠はないみたい。
私たちが知る歴史の話はだいたいこのあたりまでの話。

カテリーナはフランス王妃となってカトリーヌ・ド・メディシスとなりました。
彼女は王の死後、幼い長男の執政としてフランスの国政を担うことになります。
ところが当時、カトリックとプロテスタントの対立がフランスでも勃発して、カトリーヌはカトリックの黒幕的存在になります。

アレクサンドル・デュマの小説のヒロインで、イザベル・アジャーニ主演で映画化もされた『王妃マルゴー』は、カトリーヌの娘の話。
聖バルテルミーの虐殺と呼ばれるカトリックがプロテスタントを大量虐殺した事件。
カトリーヌはその黒幕とも言われています。

『王妃マルゴー』の一場面。
カテリーナ・デ・メディチもちらっと登場。
女優さん、イメージぴったり。
 ↓


カテリーナ・デ・メディチのドラマもありましたー。
でも、冷血女と呼んでます。
歴史は生き残った者が書き残すのよ。
すごい悪女設定。
 ↓


で、七面鳥ですよ。
さーて、どの部位が一番美味しいのでしょうか。
答えは「総合解説」をご覧ください。
ちなみに、「総合解説」に載せた七面鳥のリチェッタは、七面鳥のローストのパネットーネ詰め。
クリスマスにぴったりの1品です。


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“七面鳥と去勢鶏”の記事の日本語訳は「総合解説」2015年12月号に載っています。
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2018年5月7日月曜日

マカロニのティンバッロ

ティンバッロの話は度々取り上げてきましたが、いつもシチリアの“山猫のティンバッロ”のことでした。
今日は、ナポリのクリスマス料理としてのティンバッロの話です。
総合解説」2015年12月号から。

『サーレ・エ・ペペ』の短い記事でしたが、ナポリのパスタの歴史がさらっと語られていました。
面白かったのは、ナポリのパスタの硬さについて。
かなり昔からナポリのパスタは硬かったのですね。
でも、記事を読む限り、ナポリの庶民のパスタはゆで時間が短くてとても硬く、金持ちや貴族のパスタは長時間ゆでたとても柔らかいものだったそうで、パスタの硬さにまで貧乏人と金持ちの暮らしの差が出ていたのかと思うと、ちょっと気がめいります。

ティンバッロと言えばシチリアの貴族のティンバッロを連想していましたが、ナポリの庶民のティンバッロはタルト生地で包まないで、パン粉で覆います。
そしてクリスマスなどのご馳走のティンバッロはタルト生地で包んでいました。

シチリアの山猫のティンバッロ
 ↓



タルト生地で包まないティンバッロの動画を探したのですが、見つかりません。
ひょっとして、今どきは見た目がゴージャスなフランス貴族風のティンバッロでないと視聴回数が増えないとか、あるかなあ。
とにかく、タルトで覆わないティンバッロは貴重なようです。

「総合解説」で、ティンバッロを出す店(要予約)として紹介されている店はこちら。

via Santa LUcia 56のダ・エットーレ
 ↓


コルニチョーネの作り方。

2軒目はリストランテ・ヴェリタス。
 ↓







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“マカロニのティンバッロ”の記事の日本語訳は「総合解説」2015年12月号に載っています。
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2018年5月4日金曜日

パスタ・リピエーナ

今日はアニョロッティの話。
ピエモンテの人にとってはクリスマスや重要な席には欠かすことの出来ない料理。
でも、思い入れの全くないよそ者は、アニョロッティ・デル・プリンのことをぼんやりと思い浮かべる程度。
多分、プリンという響きが何やら可愛い、という理由で。

アニョロッティはラビオリのこと。
だからラビオリ・デル・プリンと言う人もいます。
『サーレ・エ・ペペ』誌によると、ピエモンテでラビオリのことをアニョロッティと呼び始めたのは紀元1000年頃。
現在は、アペニン山脈の麓ではラビオリ、モンフェッリーナの丘ではアニョロッティと、地区によって呼び方も変わります。
地区ごとに、詰め物やソースも微妙に違います。
今月の「総合解説」では、アレッサンドリア風やカザーレ風のアニョロッティのリチェッタを紹介しています。


確かに、詰め物は地区によって違います。
カルロ・カンビの『ミリオーリ・リチェッテ・デッラ・クチーナ・レジョナーレ・イタリアーナ(伊・英版)

によると、伝統的なアニョロッティは3種類の肉の詰め物で作る家庭料理のご馳走だが、肉の詰め物のパスタの一般的な呼び方、“トルテッリ”とは別の物、とのことです。
ラビオリ、アニョロッティ、トルテッリと、すでに似たようなパスタが3種類登場しました。
詰め物入りパスタは、パスタの大量生産化に伴って種類が増えたパスタです。
スローフードのスクオラ・ディ・クチーナ”シリーズ
パスタ・フレスケ・エ・ニョッキ

によると、詰め物入りパスタは、詰め物のタイプによって大きく2つに分けることができます。
肉(ロースト、煮込み、ボッリート、1種類、数種類、内臓入り、サルシッチャ入り、サルーミ入り)と、ディ・マーグロ(フレッシュチーズ、じゃがいも、野草、葉野菜)の2種類です。

さらに、形でも分けることができます。
正方形、長方形、三角形、円形、半円形のラビオリ、トルテッリ。
カッペッレッティ、カッペッラッチ、アニョロッティ、トルテッリーニ、トルテッローニの帽子型。
そしてカッターなどで特殊な形に切り分けるカルツォンチーノ、ファゴット、クレスタ・ア・ガッロ、カラメッラ、コーダ、コルドンチーノ、スピゲッタ、トレッチャ、ピッツィコット。

以上は伝統的なパスタに限った話です。
形や詰め物が作る人の感性次第で自由自在のパスタなだけに、現在は数多くのシェフが独自の詰め物入りパスタを創り出しています。
魚の詰め物はその代表例。

詰め物入りパスタの生地は、軟質小麦粉と卵の薄くて丈夫な生地が基本。
セモリナ粉は滅多に使わないので主に北イタリアに広まりました。
詰め物を閉じ込めやすいように、タリアテッレやタリオリーニより柔らかくて薄い生地です。

アニョロッティは詰め物入りパスタの中でもシンプルな長方形をした基本のパスタです。
トリノの四角い詰め物入りパスタはアスティ県のモンフェッラートから伝わり、そのルーツは同じ形のパスタがあるリグーリアとの境の山間部と考えられています。
1720年にサルデーニャがサルデーニャ王国となってトリノのサヴォイア家の支配下に入ると、サルデーニャの“クルルジョネス”という詰め物パスタが“アンジョロットゥス”と呼ばれてピエモンテにも広まったそうです。



半月型は、正しいかどうかは別としておおむねイスラムの影響というのが一般的な意見です。
ヨーロッパは度々オスマン帝国と戦いますが、その度に、オスマン帝国の旗に描かれた三日月がヨーロッパに広まったようです。

1453年、東ローマ帝国の首都で現在のイスタンブールの前身、コンスタンティノープル陥落。



1683年の第2次ウイーン包囲は、オスマン軍にウイーンが包囲されると言う歴史的な戦い。



この包囲戦、結局はヨーロッパが勝ったのですが、この時のオスマン帝国の旗、三日月がよほど衝撃的だったらしく、この時生まれたのがクロワッサンだと言い伝えられています。

詰め物パスタには、ドッピア・キウズーラと呼ばれるものもあります。
長方形や三角形に閉じた後に、角を合わせて再び閉じるものです。
ゆでている間に開かないように念には念を入れた閉じ方ですが、これがヴィーナスのおへそと呼ばれるほど美しかったのでした。
カッペッレッティやトルテッリーニなどがあります。
トルテッリーニ
 ↓


カラメッレ
 ↓


トンルテッリ・コン・ラ・コーダ
 ↓





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“アニョロッティ”の記事の日本語訳は「総合解説」2015年12月号に載っています。
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2018年5月2日水曜日

『カルニ・ロッセ』

新入荷の本、『カルニ・ロッセ』の紹介です。



カルニ・ロッセ、赤肉は、牛肉の代名詞。
正確に言えば、赤い色の肉全般のことで、羊肉や馬肉もこの分類に入ります。
でも、羊肉を指す時に、わざわざ赤肉とはあまり言いません。
やはり、牛肉です。

でも、イタリアンの牛肉料理は、ちょっとマイナー。
そもそも、古代ローマ文明では、肉と言えば、野生の動物を狩りで仕留めた狩猟肉のこと。
イタリアで牛肉が狩猟肉にとってかわったのは、ゲルマン民族の大移動以降の話です。
中世になっても、領主など権力者は牛肉を食べることができましたが、農民にとってはお祝いの日など特別な機会に食べる特別な料理。農民が牛肉を食べるようになったのは、なんと第2次大戦後のことです。
さらに、戦後の好景気の時代を経て、庶民の食事にも牛肉が広まっていきます。

牛肉と言えばステーキですが、イタリア語でステーキはbistecca/ビステッカ。
語源は英語のbeef steak。
ビステッカという言葉が広まったのは、一説によると19世紀。
トスカーナに移り住んだイギリス人がロース肉をスライスした切り身を地元の肉屋に注文する時にその切り身をこう呼んだのが広まったのだそうです。
別の説によると、16世紀のメディチ家の時代のフィレンツェでは、サン・ロレンツォの日の夜に広場で子牛肉のローストを焼いて食べる習慣があり、この祭りに参加したイギリス人の騎士が、フィレンツェの肉屋にビーフ・ステーキの肉のカットの仕方や名前を教えたのだそうです。
いずれにせよ、イタリアで牛は主に労働用で、フィオレンティーナは牛肉が主役の珍しい地方料理と言うことができます。

でも、面白いことに『カルニ・ロッセ』にはビステッカのリチェッタが15点も紹介されています。

“ビステッカ・アッラ・アッラビアータ”や、“ビステッカ・アッラ・ピッツァイオーラ”など、ありそうで初めて聞くようなステーキもあります。

アメリカでは、ステーキとイタリアンが出会って、ステーキとパスタの店が誕生しました。
 ↓


特大のステーキとパスタやピッツァの組み合わせが、アメリカで人気にならないわけがない。


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マリア・ルイジアの小さな街、パルマのバターとグラナの娘、アノリーニ。本物は牛と去勢鶏のブロードでゆでます。

昨日の最後にサラっと登場したアノリーニですが、このパスタ、(CIR12月号P.5)にもリチェッタが載っていました。クルルジョネスの次の料理です。花の形の可愛い詰め物入りパスタ、なんていうのがこのパスタの印象ですが、イタリア人は、こんな風に思ってるんですね。 「マリア・ルイジアの小...