2016年2月29日月曜日

イースター料理


クレアパッソの「総合解説」では、前半はリチェッタ、後半は食材、グルメガイド、ワインなどの話題を取り上げています。

リチェッタには、4月号から“メニュー”という新ジャンルが登場しています。

これは、テーマに基づいて前菜からドルチェまで、コースで紹介する、というリチェッタです。
4月号のテーマは、「イースターのブランチ」と、「オルトレポーのパスクエッタ」。

4月というと、春=復活祭の季節ですからね。
ちなみに2016年の復活祭(パスクア)は3月27日(日)。
そしてパスクエッタは、翌日の3月28日(月)です。

復活祭は、イタリアではクリスマスに次ぐ大きな宗教行事ですが、宗教以外にも、厳しい冬が終わって春になる、新しい命の息吹に感謝する、というような意味合いも大いにあります。
それにしても、年を取るにつれて、春のありがたみがますます大きくなってきました。
今じゃ、春の訪れを祝うイタリア人の心境もよーくわかる年齢になりましたよ。

復活祭もクリスマスに負けないぐらい、特別な料理を食べる習慣があるイタリアですが、特にパスクアのプランゾは伝統的な料理を食べます。
子羊料理やドルチェのコロンバが有名。
そこで、そこまで大げさに宗教的な食事にはしたくないけど、世間一般的なイースターの名物料理は、一応押さえておきたい、という都会の現代子のために『ア・ターヴォラ』誌が提案したのが、ブランチというスタイルにしたモダンでカジュアルなイースターメニューです。

プーリアのシェフが提案する伝統的なパスクアのブランゾ。
 ↓



グリーンピース、リコッタ、卵、アーティチョーク、玉ねぎ、ペコリーノなど、復活を象徴する食材を使うのが伝統料理の特徴。
そのいいとこどりをしたのが、「総合解説」の“イースターのブランチ”のメニューです。
リグーリアのトルタ・パスクアリーナ、ウンブリアのトルタ・ディ・パスクア、シチリアのカッサータと、各地のイースターの名物料理も色々組み込んでいます。

トルタ・パスクアリーナ
 ↓



トルタ・ディ・パスクア
 ↓



トルタ・パスクアリーナは卵をかなり入れてますねー。
プレッシンスアというフレッシュチーズは、地元でないと手に入らないです。
でも大丈夫。
記事では、現代的な配合と材料のリチッタを紹介しています。


カッサータに関しては、地方料理のリチェッタとして別の記事を紹介していますが、その中に、シチリアのカッサータにまつわるこんな言い回しを紹介しています。

シチリアでは、
「パスクアの朝にカッサータを食べないくらいケチ」
というのだそうです。

カッサータ
 ↓
Cassata Siciliana


これはとてもモダンな感覚のカッサータですね。
“イースターのブランチ”の記事では、“春のカッサータ”という、オレンジがポイントのアレンジ版を紹介しています。



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“イースターのブランチ”と“オルトレポーのパスクエッタ”のリチェッタの日本語訳は、「総合解説」13/14年4月号に載っています。
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2016年2月25日木曜日

トマトのリコピン


今日はトマトの話。
元ネタは、『ヴィエ・デル・グスト』誌です。
トマトはイタリア料理を象徴する食材だけあって、「総合解説」でも、これまで何度も取り上げてきました。
新大陸からやってきて、19世紀後半にフランチェスコ・チリオによって最初のトマト缶が造られたのをきっかけに世界中に広まり、今やイタリア経済にとっても重要な産物となったトマト。
イタリアで最も消費量の多い野菜はトマトだそうです。
こんなトマト大国で、グルメ情報誌がグルメなイタリア人向けに書いたトマトの記事とは、どんな内容なのでしょう。


POMODORO


今回のトマトの記事のテーマは“リコピン”です。

トマトの栄養価を話題にするとき、日本でも、リコピンは避けて通れないですよね。
リコピン、どこがで聞いたことあるような~、程度でしたが、イタリア料理を作る人なら知っておいて損はないものだったのですね。

まず何よりも、リコピンは、トマトの赤い色の元、カロテノイドのこと。
トマトの最大の魅力、赤い色を作る色素なんです。

さらに、トマトを煮たトマトソースには、生のトマトの5倍のリコピンが含まれています。
加熱することで細胞からリコピンが放出されて、消化吸収されやすくなるのです。
さらにさらに、リコピンは脂溶性なので、エキストラバージンオイルなど少量の脂肪分があれば、効果はさらに増します。

さすがはイタリア人。
だから、トマトソースを使ったパスタやピッツァは、美味しいだけでなく、ヘルシーな料理でもあるのだと、誇らしげにまとめています。

そこで問題になるのが、リコピンにはどんな効果があるのか、ということ。

リコピンの効能を説明する動画
 ↓



カンクロという言葉を何度も言ってましたね。
カンクロはイタリア語で癌のことです。

記事でも、リコピンの働きについての調査や研究はまだ未確定の仮説が多い、と前置きされていますが、かなり広まっているのが、抗酸化作用がある、という説。
細胞を掃除したり、ダメージを与える不安定な分子に効果がある、言い換えれば、腫瘍の肥大を抑制する効果がある、という説が、イタリアでも日本でも、かなり信じられているようです。

ちなみにこの記事を提供したのはウンベルト・ヴェロネージ財団。
2003年に設立された癌や心臓病の医師や研究者支援のための機関です。

リコピンはサプリメントから得られるものではなく、自然の食べ物からのみ得られるのだそうです。
生、パッサータ、濃縮などどんな形でも、含まれています。
特に日当たりのよい場所で栽培されて6月に収穫したトマト(イタリアの場合)には、リコピンが大量に含まれている、ということまで分かっているのですよ。

トマトを育てている人は、トマトを赤くすることに、十分価値を見出していると思いますが、真っ赤に熟したトマトの栄養価は、なかなか素晴らしいものだったのですねー。

この記事を訳して以来、トマトソースへのリスペクト度が大幅に上がりましたよー。

とにかく意外なことに、リコピンの効能は、まだ確定していないので、さらなる研究が待たれている状態なのですね。

今日はトマトソースたっぷり作りたい気分です。



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“トマト”の記事の日本語訳は、「総合解説」13/14年4月号に載っています。
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2016年2月22日月曜日

お勧め本2冊


今日は最近のお勧め本の話。

なんだか最近、畑を耕して野菜を育てながらシェフをやっている人の話をよく訳します。
日本でも、レンタルファームが大人気のようで、自分で育てた野菜で作る料理、いいですねえ。
憧れるなあ、なんて思っていたら、イタリア人も同じこと考えているようで、ミラノの18世紀の農場を再建したカッシーナ・クッカーニャの記事に、シェフの料理哲学を紹介するこんな文章がありました。
とても心に残る文章でした。

「かつては、パスタ、パン、ドルチェは家庭で作るものだった。
野菜、果物、小麦粉、オイルは有機栽培で作り、テーブルに上る料理は季節によって変わった。
加工食品は、地元の腕の良い職人がいる小さな工房で作られた最高のものを購入した」

ふう、素敵な生活ですねえ。
耕せる庭もない都会の片隅で、スーパーで出来合いの食品買って生活している身には、パスタやパンを粉まみれになって作ったり、土まみれになって畑を耕す姿は、憧れ以外のなにものでもありません。
いいなあ、畑レンタルしてズッキーニ育てたいなあ、なんて妄想を広げている身には、そういう生活を実現している人の料理は、興味津々です。

それに最近は、イタリアでもちょっと有名な店はどこもミシュランの星付きで、ゴージャスさや意外さを追求した、めんどくさい料理ばかり。
そんなリチェッタばかり訳していると、ぐったり疲れます。

そんな私のもっぱらの癒しの本となっているのが、先日紹介したジョルジューネシェフの『オルト・エ・クチーナ』です。

クレアパッソのホームページでも近々紹介する予定ですが、『野菜畑と料理』と題するこの本は、ミシュランとはまったく無縁そうな、泥臭い人気者のシェフが、野菜を耕して野草を摘み、家禽を育てる生活をしながら営む繁盛レストランの四季の料理本です。

野原に花が咲き乱れる春には、森を歩いてワイルドアスパラガスやイラクサ、チェリーを摘み、畑ではソラマメ、グリーンピース、新じゃがいも、エルベッテ、ビエトレ、いちごを収穫します。

そしてイラクサのマルタリアーティや、ソラマメとグアンチャーレのカプンティ、ビエトラのパルミジャーナ、セージのフリット、マスのカルトッチョ、チェリーとザクロのマチェドニアといった、見栄えはいまいちですが、森や畑の香りがしそうな料理の数々を作っているのです。

時には、ハーブを摘むのも面倒だと思うくらい気分が落ちていることもあります。
そんな時の癒しの本は、『マンマミーア』です。

この本は、ミシュランも高級食材も無縁の素朴な家庭料理の本なのに、美味しそうな料理の写真からは、家庭のぬくもりが伝わってきて、料理を作ろう、という気力が湧いてきます。
リチェッタは、私でも作れそうなくらい簡単そうです。
ブリーとポルチーニのクロストーネなど、都会のお母さんが考えそうな料理もあって、ハードルが低め。

取りあえずは、夏の収穫に向けてなすでも植えるか。
畑もないのに妄想は無限大です。


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“カッシーナ・クッカーニャのニコラ・カヴァッラーロシェフ”の記事は、「総合解説」13/14年5月号(次号)に載る予定です。

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2016年2月18日木曜日

ヴィッラ・マイエッラとペッペ・ズッロ

今日は今月の「総合解説」で紹介している2人のシェフについて。

まずは、アブルッッォのホテル・レストラン、ヴィッラ・マイエッラのペッピーノ・ティナーリシェフ。





ヴィッラ・マイエッラはシェフの両親が始めた店で、現在は妻や2人の息子たちも一緒に、3世代で働いています。
店のwebページはこちら


2代目のペッピーノさんはシニョーレ・デル・アニェッロと呼ばれる子羊肉の巨匠。
元々、子羊は地元の名物でしたが、塊肉のポルケッタかぶつ切りのフリカッセアぐらいしかバリエーションはありませんでした。
それを見直して、各部位ごとの特性を活かした料理を考え出したのが、彼の料理の特徴です。
例えば、すねはゼラチン質が多いのでグリルだと粘ついてしまうが、長時間の煮込みに適している。
首や骨は、ソースやフォンドに最適、内臓はパデッラータやスカロッパ。
といった具合で、子羊は豚肉と同じで捨てるところがない、と語っています。
「総合解説」に載せたリチェッタの中には、すね肉のサフラン煮やレバーのスカロッパなどがあります。
ちなみにレバーのスカロッパのソースは、首の小骨のブロードを煮詰めたものです。
肉のほうはキタッラのラグーに使っています。


もう一人は、プーリアのペッペ・ズッロシェフです。

プーリアを代表する有名シェフ。

店の名前は、リストランテ・ペッペ・ズッロ。




レストラン、農場、料理学校と多角的にビジネスを展開しています。

彼の料理は地元の食材にとことんこだわっているので、リチェッタを訳すのも大変です。
でも、どんな食材が使われているか知ったうえで、プーリアの彼の店で料理を食べると、感激もひとしおだと思います。

彼の料理には地産地消精神が溢れています。
料理のルーツはプーリアのダウニア地方。
 ↓



ダウニアはフォッジャを中心とする地方。
長靴形のイタリアの蹴爪にあたる部分です。
おいしい食材、その活かし方を知っている職人たち、
まさに地産地消の精神がDNAに刻まれている地方ですね。

都会のイタリア料理と田舎のイタリア料理は、根本的に別のものだなあ。


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“ペッピーノ・ティナーリの子羊料理”と“ペッペ・ズッロの地産地消”のリチェッタの日本語訳は「総合解説」13/14年4月号に載っています。

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2016年2月15日月曜日

硬質小麦粉のパスタ

今日は今月の「総合解説」から、“セモリナ粉と水の手打ちパスタ”の話。

パスタは、乾麺と生麺に分類できますよね。
この2種類は、誕生した理由からして大きく違う歴史を歩んできました。
さらに、生麺には軟質小麦粉のパスタと硬質小麦粉のパスタがあります。
この両者も性質がかなり違うパスタです。

セナトーレ・カッペッリ小麦の時にも話しましたが、このイタリアの小麦が80%の硬質小麦のルーツ、というだけあって、イタリアは硬質小麦粉の食文化が確立しています。

硬質小麦と軟質小麦の違いの一つがグルテンの含有量。
含有量が多い硬質小麦粉は、水を加えると様々な形に成形しやすくなります。
複雑な形の造形も可能なので、硬質小麦粉のパスタが主流の南イタリアでは、3Dの立体的な造形のパスタがたくさん考え出されました。

その一方で、弾力の強さゆえに苦手なのが、薄く伸ばす、ということです。
薄く伸ばすのが得意なのが、軟質小麦粉のパスタです。
軟質小麦粉に卵を加えれば、薄くても煮崩れしない麺になります。
南イタリアに北イタリアのようなタリアテッレが生まれなかった理由は、このあたりにあります。

日本の場合も、うどんやラーメンは、細長い麺として様々なバリエーションが生まれましたが、立体的な造形の麺は、生まれませんでした。
小麦のグルテン含有量が、北イタリアの麺と同じだったという訳ですね。

という訳で、3Dな麺という南イタリア独特の硬質小麦粉のパスタは、日本人のDNAにはあまり馴染みがなく、その割には、手先の器用さが要求される、という、日本人の職人魂を刺激する魅力的な要素も含みます。

硬質小麦粉からは美味しいパンもたくさん生まれました。
ちなみに、硬質小麦粉のパスタとパンの本場として知られるのはプーリアとサルデーニャですが、サルデーニャのパンについては来月号の「総合解説」に面白い記事がありますので、お楽しみに。

バリエーション豊かな形成作業が楽しい硬質小麦粉のパスタ。
 ↓



硬質小麦粉の麺は琥珀色を帯びていますが、着色する時はサフランを加えて鮮やかな黄色にするのが一般的。
この他の硬質小麦粉の麺の特徴は、ゆでても腰が残り、小麦の香りが強く、表面がざらざらしていてソースが絡みやすい、など。

これらの点を頭に入れて、「総合解説」のリチェッタを見てみると、平らに伸ばして切るだけ、または型で抜くだけ、という、南イタリアのパスタにしては比較的簡単な成型方法のリチェッタを選んでいるのが分かります。

南イタリアの卵が入らないタリアテッレ、ラーガネの定番のソースはチェーチのソースだそうですが、ナポリ料理を元にしたカラブリア版のリチェッタの動画があったのでどうぞ。
 ↓



唐辛子が合いそうですねー。


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“セモリナ粉と水の手打ちパスタ”の記事とリチェッタの日本語訳は、「総合解説」13/14年4月号に載っています。
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2016年2月10日水曜日

イタリアの有名チョコメーカー

時節柄、チョコレートが食べたくなる今日この頃ですが、4月号の『サーレ・エ・ペペ』の記事で、解説に載せられなかったチョコレートの記事があったので、訳してみます。

「チョコレートはイタリアが誇る美食文化の一つで、作り手も、たくさんいる。
バーチ・ペルジーナのような有名メーカー、ヌテッラやミラノのメーカー、ザイーニのチェリー入りのボエーリのような大ヒット製品もある。

ボエーリ
 ↓


1911年発売のクレミーノ・フィアットが有名な、イタリアで一番古いメーカー、ボローニャのマイヤーニは、1796年創業。
 ↓


トリノは歴史的に最も重要なチョコレートの街だ。
トリノの象徴、モーレ・アントネッリアーナができる(1899年)前からカカオは飲み物として広まっていた。
バヴァレイザと言う名のコーヒーとチョコレートがベースの飲み物で、後にビチェリンと呼ばれるようになった。
19世紀になるとトリノでカカオマスを精錬して砂糖とバニラを加える機械が発明され、チョコレートの大量生産への第一歩が踏み出された。

ミケーレ・プロシェは、カカオに地元のもっと経済的な材料、ヘーゼルナッツを加えてジャンドゥイヤ・ペーストを作り出した。
そしてポール・カファレルと一緒にジャンドゥオッティの生産を始める。
その会社がバラッティ・エ・ミラノだ。
 ↓
Italian_chocolate

トリノのジャンドゥィオッティは、グイド・ゴビーノのミニ・ジャンドゥィオッティやドモーリなどの新しいメーカー、グイド・カスターニャなどの職人へと受け継がれていく。

チョコレートにドライフルーツを加えて成功したのが、1922年創業のバーチ・ペルジーナだ。
崩れたヘーゼルナッツを有効利用した製品、カッゾットがヒットした。

シチリアには、アルティジャナーレのチョコレートの伝統を受け継いだモディカのチョコレートがある。
 ↓
Cioccolato di Modica, Sicilia / Pure Dark Chocolate

16世紀にスペイン人がもたらした最初のカカオの種と一緒に伝わった、アステカの古い製法を守ったチョコレート。
シチリアで一番古いチョコレートメーカー、ボナイウート(1880年創業)もモディカにある。

Baci Chocolates

バーチは手作りする人も多いようで、記事にはリチェッタも載っていました。

それによると、

・ジャンドゥィアチョコレート240gと生クリーム70mlを溶かし、炒った刻みヘーゼルナッツ30gを加えます。
・これを冷蔵庫で冷やしたら太い丸口金をつけた絞り袋に入れ、クルミ大に搾りだして冷蔵庫で1時間冷やし固めます。
・丸ごとのヘーゼルナッツの粒を1粒ずつてっぺんにのせて再び冷やします。
・ビターチョコレート300gを溶かし、バーチを1個こずつ浸して全体にコーティングします。
紙トレーにのせて完全に固めます。

キスって名前のチョコなんて、バレンタインデーの贈り物にぴったりだなー。
一生懸命作る可愛い女子がいても不思議じゃない。

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2016年2月8日月曜日

カンノーリ

今日から「総合解説」13/14年4月号の話です。

最初のお題はカンノーリ。

Ole's amazing cannoli



シチリア生まれでイタリアのドルチェのシンボル的な存在ですが、2千年以上の歴史があったのですねー。
ということは、アラブ人がやってくるより前からあったわけです。
古代ローマの政治家キケロが食べて、美味しかったと言ったことが、21世紀まで伝わっています。

ドラマ『ローマ』のキケロが登場するシーン。




冒頭のシーンの元絵はこれ
すごい再現度。

キケロは、政治上の問題でローマを追われて逃亡した先のシチリアで、カンノーリを食べて美味しいと言った、というか、正確にはカンノーリがどんな食べ物か説明しただけだったようですが、話がどんどん大きくなって、都市伝説が遠く日本の地まで伝わってきたんですねー。

でも、キケロが食べたカンノーリには、後にアラブ人が伝えることになるさとうきび糖も、カンディートもリキュールもチョコレートも入っていませんでした。

アラブ人がやって来た後のカンノーリの主役は、カルタニッセッタの町です。

Caltanissetta, atardeciendo.


シチリアの島のほぼ中央にあるこの町は、アラビア語では“Kal El Nissa女性の城“という意味で、サラセン人の太守たちのハーレムがたくさんあったそうです。
侍女から愛妾まで多くの女性が、太守の寵愛を得ようとカンノーリを作っていたそうですよ。
ハーレムという時点でかなり盛られていそうですが、

元々はカルタニッセッタの修道女がカーニバルのために作った神聖なお菓子だったのですが、アラブの支配が終わった時に、悔い改めた女性が修道院に逃げ込んで、サルタンの秘密のリチェッタは生き延びたのだそうです。
落ちまで完璧に出来上がったこの話が、カルタニッセッタの人が固く信じるカンノーリの歴史。
 


元祖はどこであれ、今やシチリア中で愛されるお菓子になったカンノーリ。

『サーレ・エ・ペペ』の中に、こんな一文が。

「シチリアでは、夕食に招かれた時の手土産で一番喜ばれるのがカンノーリだ。
ただし、数は最低でも12個用意するのがマナーだ」
とのこと。

わざわざ書くということは、イタリア人でもシチリア人でなければ、12個も持っていこうとは思わないってことですねー。

カンノーリとドーナッツは限りなく近い存在。
コンビニで売る日がこないかなあ。

ミニカンノーリと。
 ↓
mini cannolis


カンノーリの写真を見過ぎて、カンノーリがたまらなく食べたくなりました。

毎日好きなだけ食べられるシチリア滞在中の皆さま、うらやますい。

Colazione sicula




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“カンノーリ”の記事は、「総合解説」13/14年4月号に載っています。
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2016年2月4日木曜日

セナトーレ・カッペッリ

さて、昨日(2月3日)、「総合解説」4月号が無事に発売になりましたが、今日は3月号の話題を。

“セナトーレ・カッペッリ”の話は、このブログでも度々取り上げてきました。
最高の硬質小麦と高く評価されている小麦で、現在ある大部分の硬質小麦のルーツとなったイタリア生まれの小麦です。

小麦のPV
 ↓



カッペッリ上院議員に捧げられたので、カッペッリという名前がつきましたが、作り出したのは、小麦の男と呼ばれてイタリア人から尊敬されているナザレノ・ストランペッリという人物。
伝記映画もできました。




小麦の品種改良の功績でノーベル平和賞を受賞した人もいるくらいで、収穫量の多い小麦を生み出すなど、小麦の品種改良は、人類にとって多大な貢献をすることにつながるんですね。

『クチーナ・イタリアーナ』にもこの小麦を取り上げた記事があったので、訳して「総合解説」に載せました。


記事によると、100年前の1915年にストランペッリ氏が世に出したこの小麦を、プーリアとバジリカータで有機栽培し、それをプーリアで石臼で粉にして、ナポリの製麺所でブロンズのダイスを通して成形し、長時間かけて乾燥させて作ったパスタがあったのですが(一番上の動画のパスタ)、適正な価格で販売できずに売れ行きが伸び悩んでいました。
このパスタに注目して、生産者グループと一緒に、開発、販売に取り組み、レストランでこの小麦のパスタを常時使うようにしたシェフがいました。

その名は、ピエトロ・パリージ。
キャッチフレーズはシェフ・コンタディーノ。
農民シェフ。

彼はホテル学校卒業後、アラン・デュカスやマルケージを初めとしてイタリア、フランス、スイス、ドバイなどで修業し、2005年に地元のカンバーニアに戻ってEra Oraというレストランを開業。
彼と店のwebページはこちら

地元がカンバーニアの豊かな食文化の真っ只中だったのですね。
 ↓



ちなみに、硬質小麦は軟質小麦よりグルテンの含有量が多く、色々な形に成形しやすく、煮崩れしにくい、という特徴があります。
「総合解説」4月号には、セモリナ粉と水のパスタのリチェッタも載せています。
南イタリアでは主流のセモリナ粉と水のパスタですが、成形しやすい、ということは、オリジナルのパスタも作りやすい、ということですよね。
ちょっとの工夫で南イタリア風パスタができてしまうのが面白い。
さらに、3月号の「総合解説」では、色が白い軟質小麦粉ならではの、美しい3色パスタのリチェッタも紹介しています(日曜日のメニュー)。
セナトーレ・カッペッリの小麦粉は、パスタだけでなく、パンやピッツァにも使われています。



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“ナーセナトーレ・カッペッリ”、“日曜日のメニュー”の日本語訳は「総合解説」13/14年3月号、“セモリナ粉と水の手打ちパスタ”は13/14年4月号に載っています。
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2016年2月1日月曜日

ネロ・ディ・トロイア

今月の「総合解説」のグルメガイドは、プーリアを、ネロ・ディ・トロイアをテーマに巡る旅。

ネロ・ディ・トロイア、別名ウーヴァ・ディ・トロイア。
なんでも、プーリアの上質な赤ワインになる代表的な土着品種の一つだそうです。

何年か前までは、プーリアの赤といえば、ネグロアマーロとプリミティーヴォあたりだったような気がしますが、いつの間にかネロ・ディ・トロイアも世間に知れ渡っていました。

ネロ・ディ・トロイア。
『ラ・クチーナ・イタリアーナ』誌によると、プーリア北部で栽培されているこのぶどうは、歩留まりの良い丈夫な品種ですが、タンニンが強いため、数年の熟成は必須で、使いこなすのが難しいと考えられていました。
色が濃いのも特徴でした。
ネロという名前もその名残です。
伝統的にはモンテプルチャーノとブレンドして弱めて使うぶどうでした。
プーリアの多くのdocgワインにも使われています。

それが最近は、カンティーナの研究が進んで、ネロ・ディ・トロイア100%のぶどうも作られるようになったそうです。
2011年に決まった2つの新しいカステル・デル・モンテdocg、
カステル・デル・モンテ・ロッソ・リゼルヴァと
カステル・デル・モンテ・ネロ・ディ・トロイア・リゼルヴァのベースの品種でもあります。

自然と美味しいものに恵まれた、カステル・デル・モンテの地方の隠し玉ワインだったのですね。

ネロ・ディ・トロイアのPV。
このワインは地元の食文化とセットで体験すると、素晴らしが増します。
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偶然ですが、PVに登場しているピエトロ・ジートシェフは、記事の中でも紹介しています。
料理より畑に興味があると言い切る、個性的な人。
もう一人登場して郷土愛を熱く語るペッペ・ズッロシェフのリチェタは、来月の「総合解説」に登場します。

さらに、PVで強調していたのがフェデリコ2世。
世界的には神聖ローマ皇帝のフリードリヒ2世としてのほうが知られています。

世界遺産のカステル・デル・モンテを初めとして、ネロ・ディ・トロイアの産地には、この偉人の遺跡があちこちに残っています。
ネロ・ディ・トロイアはフリードリヒ2世にも愛されたワインでした。

さらにこの地方は、イタリアの穀倉地帯と呼ばれる小麦の産地で、美味しいパンとオリーブオイルがあり、冷蔵庫に入れてはいけないチーズ、ブッラータの産地でもあります。
記事には、お勧めのブッラータやパンの店の情報も、レストランやワインバーの情報もあるし、もちろんネロ・ディ・トロイアのワインを作っているカンティーナの情報もあります。
各カンティーナにどんな名物ワインがあるかまで載ってますよ。
まさに至れり尽くせり。

次のプーリア旅行の資料に、ぜひどうぞ。


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“プーリア”の記事の日本語訳は、「総合解説」13/14年3月号に載っています。
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マリア・ルイジアの小さな街、パルマのバターとグラナの娘、アノリーニ。本物は牛と去勢鶏のブロードでゆでます。

昨日の最後にサラっと登場したアノリーニですが、このパスタ、(CIR12月号P.5)にもリチェッタが載っていました。クルルジョネスの次の料理です。花の形の可愛い詰め物入りパスタ、なんていうのがこのパスタの印象ですが、イタリア人は、こんな風に思ってるんですね。 「マリア・ルイジアの小...