イタリア料理ほんやく三昧: 10月 2011

2011年10月31日月曜日

トリュフの戦略

トリュフの話の続きです。


↓ピエモンテ州のトリュフ研究センターが作った渾身のPV。





最初に、雷が落ちて、そこにトリュフが出来た、という映像がありますが、これを解説するとこんな話になります。

この雷、ローマ神話の一番偉い神様で、雷神でもあるジョーヴェ(英語だとジュピター、ギリシャ神話でいうところのゼウス)が落としたもの。
そばにあったのは、神聖な木とされるオークの木。
雷が落ちた土の中から生まれたのが、最初のトリュフ、というのが有名な言い伝えです。

PVでは、雷の後、ドラマ仕立ての話が始まります。

語り手が子供の頃、9月末のある日、ランゲ地方のおじいさんの家に遊びに行きました。
夜中、おじいさんが犬を連れて森に出かけるのを見かけて、不思議に思った少年。
翌朝、父親に聞いてみると、夜の森なんて野生の動物がいて危険なんだから、子供は興味を持たなくていい、と怒られます。

でも、余計に好奇心が募った少年は、祖父がいない間に納屋に入って、あるものを見つけます。
なんだかきのこのようで、変な形で、強い香りがします。
これをポケットに忍ばせて、その晩、少年はおじいさんの後を追いました。
ところが足をすべらせて捻挫してしまい、暗い森の中で動けなくなってしまいます。
懐中電灯の電池も切れてしまいました。
そしてそのまま眠ってしまい・・・。

そして、予想通りの展開が。

結局、少年はトリュフに命を救われたと信じてイケメンに成長し、今ではピエモンテ州のトリュフ研究センターの仕事を立派にPRしているのでした。
めでたしめでたし。



この少年は、トリュフというか、トリュフ犬に命を救われたんですねえ。
トリュフの収穫には、訓練を受けたトリュフ犬が大活躍。
どんな犬種でもトリュフ犬になれますが、イタリア土着のラゴット・ロマニョーロという犬は、トリュフ犬として特に有名。


↓ラゴット・ロマニューロのトリュフ犬





イタリアでも、以前はトリュフを探すのに豚を使っていましたが、戦後、トリュフの需要が増えて訓練しやすい犬を使うようになり、トリュフ豚(?)は完全に姿を消しました。

豚の場合、メスの方が従順でオスに従うが性質があるので、トリュフ探しには向いているのだそうです。
ただし、半分野生の状態で放し飼いで育てた“森の豚”であることも条件。


そもそも、トリュフのあの香りは、トリュフが生き延びて種を増やしていくための生存戦略なんだとか。
外から見える他のきのこと違って、木の根に共生するトリュフは、土に埋もれて成育します。
土の下で育つトリュフは、何の必要があってあんなに強い香りを放つのでしょうか。
まるで、嗅覚の鋭い動物に、ここにいるから掘り出して!と教えているみたいではないですか。

そう、そうなんですよ。
あの匂いは、特定の動物にはとても美味しそうとか、とてもセクシーとか、そんな風に感じるように出来ている訳ですねえ。
その香りに誘われたキツネやアナグマやイノシシが、トリュフを掘り出す。
するとトリュフが地表に出て、胞子が空中に拡散する。
そして新しい木の根までたどり着き、そこで新たに共生を始める、という訳です。

考えてみれば、トリュフの香りに引き寄せられるのは、何も豚やキツネだけではないんですよねえ。
そう、人間だって、トリュフの戦略にまんまとのせられている口です。
何しろトリュフは、イタリアから地球の裏側の日本まで移動することに成功しているんですから。
トリュフに大金を払う人間は、むしろどんな動物よりもトリュフの戦略にはまった生き物に違いありません。

次は黒トリュフの話。



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関連誌;『V&S』2009年4月号
“タルトゥーフォ・ネーロ・プレジャート”の記事の解説は、「総合解説」'08&'09年4月号に載っています。

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2011年10月28日金曜日

トリュフ

今日はトリュフの話。
『V&S』の解説です。

秋が深まって、トリュフが恋しくなる人も出てくる季節ですねえ。

イタリアのトリュフと言えば、トリュフの王様、白トリュフ。


Alba white truffle
2010年12月のサンフランシスコの某店のセールでは、白トリュフは1オンス187ドル。
つまり1g6.6ドル!




Oregon white truffle and black winter truffle
え!左の白トリュフが1オンス18.75ドルで、右の黒トリュフが1オンス100ドル?
黒トリュフの1/5の値段の白トリュフ?



白トリュフはイタリア産だけ、と思っていると、失敗します。
上の写真、よく見ると、白トリュフは“オレゴン・ホワイト・トリュフ”と書いてあります。

オレゴン・ホワイト・トリュフって何?

さらによーく見ると、オレゴン・ホワイト・トリュフの下には“TUBER GIBBOSUM”と書いてあります。
これは、このトリュフの学名。

イタリアの白トリュフ、つまりトリュフの王様と呼ばれているものの学名は、TUBER MAGNATUM。

つまり、白トリュフと呼んでいても、実際にはまったく違う品種のトリュフなんです。

オレゴン・ホワイト・トリュフはアメリカ産のトリュフ。
Tuber magnatumが見つかっているのは、今のところ、イタリアと、イタリアの東の地続きのイストリア半島(スロベニアとクロアチア)のみ。



トリュフは、ヨーロッパだけでも30種類以上あるのだそうです。
イタリアでよく知られているのは、ざっと10種類。
中には、外見だけでは見分けがつかないものもあります。

トリュフを買う時は、白トリュフ、黒トリュフ、ウインタートリュフ、サマートリュフなどの略称だけでなく、学名をチェックすることが必要です。


イタリアの主なトリュフ

白トリュフ

・Tartufo bianco pregiato(タルトゥーフォ・ビアンコ・プレジャート)/Tuber magnatum(写真

・Tartufo bianchetto o Marzolino(タルトゥーフォ・ビアンケット、またはマルツォリーノ)/Tuber borchii(写真

タルトゥーフォ・ビアンコ・プレジャートが、いわゆるトリュフの王様の白トリュフ。

ビアンケットは外見はビアンコ・プレジャートとよく似ています。
特に若いうちは色が白く、ビアンコ・プレジャートと間違えやすいそうです。
でも、香りが全然違います。
ビアンコ・プレジャートのシーズンは10月~12月で、ビアンケットは2月~4月。


黒トリュフ

・Tartufo nero pregiato(タルトゥーフォ・ネーロ・プレジャート)/Tuber melanosporum(写真

・Tartufo nero invernale(タルトゥーフォ・ネーロ・インヴェルナーレ)/Tuber brumale(写真

・Tartufo moscato(タルトゥーフォ・モスカート)/ Tuber brumale var. moschatum(写真

・Tartufo nero estivo, Scorzone(タルトゥーフォ・ネーロ・エスティーヴォ、またはスコルゾーネ)/Tuber aestivum(写真

・Tartufo nero liscio(タルトゥーフォ・ネーロ・リッショ)/Tuber macrosporum(写真

タルトゥーフォ・ネーロ・プレジャートは、フランスのペリゴール産が有名な最上質の黒トリュフ。
中の白い筋は、空気に触れると赤っぽく変色します。
シーズンは11月~3月。

タルトゥーフォ・ネーロ・インヴェルナーレは、いわゆるウインタートリュフの一種。
プレジャートと比べて中の白い筋がやや太く、まばら。
プレジャートと違って、筋の色は空気に触れても変わりません。
シーズンは1月~4月。

タルトゥーフォ・モスカートもウインタートリュフの一種で、麝香の香りが特徴。
シーズンは12月~3月。

タルトゥーフォ・ネーロ・エスティーヴォは、いわゆるサマートリュフ。
外が黒くて中がハシバミ色、そして夏に熟すのが特徴。
シーズンは6月~9月。

タルトゥーフォ・ネーロ・リッショは、いわゆるスムースブラックトリュフ。
他の黒トリュフと比べて皮がなめらかなのが特徴。
シーズンは7月~12月。


上の写真の黒トリュフは、ヨーロッパ産のTuber melanosporumと書いてあります。
つまり、タルトゥーフォ・ネーロ・プレジャートです。
それなのに、商品名はウインタートリュフ(ネーロ・インヴェルナーレ)。
いったいどっちなんでしょうねえ。

これはおそらく、ネーロ・プレジャートをサマートリュフと区別するために、大雑把にウインタートリュフと呼んでいたことから生まれた混乱と思われます。
ネーロ・プレジャートとネーロ・インヴェルナーレが違う種類である以上、ウインタートリュフと表示する時は、Tuber melanosporumかTuber brumaleか、はっきりさせる必要がありますよね。


栽培できない白と違って、栽培ができる黒は値段も比較的手ごろ。
ただし、栽培と言っても椎茸のように原木に菌を植えて育てる訳ではありません。
むしろ、トリュフが育つ木を育てるのがトリュフの栽培方法です。
だから、トリュフ畑は林のような姿をしています。


↓トリュフ畑




この畑の木は、苗をトリュフ菌を混ぜた土に植えて育てたものです。
土はあらかじめ殺菌してあって、余分な菌を取り除いてあります。
こうすると、根にトリュフ菌が寄生した木が育ち、数年後にはトリュフができます。
その後、毎年トリュフができるようになります。



↓トリュフ栽培用の苗





イタリアでは、天然もののトリュフが減る一方で、トリュフの栽培は年々盛んになっています。
栽培されている品種は、ネーロ・プレジャートが約60%で、続いてサマートリュフが約26%。


トリュフの話、次回に続きます。


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関連誌;『V&S』2009年4月号
“タルトゥーフォ・ネーロ・プレジャート”の記事の解説は、「総合解説」'08&'09年4月号に載っています。

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2011年10月25日火曜日

アッチューゲ・リピエーネ

今日は生のアンチョビのリチェッタです。


Bruschetta di Monterosso
これは前回紹介したモンテロッソの塩漬けアンチョビのブルスケッタ


アンチョビ(カタクチイワシ)料理が店のメニューにあって、しかも人気料理、という店は、いかにも地元人御用達のディープな地元料理の店、というイメージ。

Acciughe = Anchovies
メニューの一番上がアンチョビ!


↓看板料理の一つがアンチョビのフリットというジェノヴァの人気トラットリーア、ウーゴUgo。






生のアンチョビの代表的な料理は、マリネ、フリット、グラティナート、スカペーチェ、リピエーネなど。
どれも余りにシンプルすぎて、敢えて紹介するまでもないのですが、今回は少しは手の込んでいそうなものを選んでみました。
上の動画でもお客さんたちが盛んに美味しいと言っていた“アッチューゲ・リピエーネ”です。
リグーリアの名物料理でもあります。

基本は、開いたアンチョビ2枚で具をはさんで揚げる、という料理ですが、地方や店によって詰め物が少し違います。


まずはリグーリアのアッチューゲ・リピエーネ。

“リチェッテ・ディ・オステリーエ・ディ・イタリア”シリーズの『ペッシェ』から、ラ・スペツィアのオステリーア・ヴィーコロ・インテルノOsteria Vicolo Inthernoのリチェッタです。

アッチューゲ・リピエーネ Acciughe ripiene
材料:4人分
 生のカタクチイワシ・・40尾
 モルタデッラ・・150g
 フレッシュのタイム・・1枝
 卵・・1個
 パン・・150g
 パルミジャーノ・・60g
 牛乳・・1カップ
 オリーブオイル

・カタクチイワシは開いて骨を取る。
・パンは牛乳に浸してから細かく崩す。モルタデッラは細かい小角切りにする。
・パン、モルタデッラ、おろしたパルミジャーノ、タイムのみじん切りを混ぜ、溶いた卵を加えてつなぐ。
・魚の半量に詰め物をのせ、残りをかぶせてサンドする。
・油を塗ったオーブン皿に並べ、オーブンで30分焼く。
※ジェノヴァのアッチューゲ・リピエーネの詰め物は、パン、卵、パルミジャーノ、オレガノ、油でソッフリットにして骨を取ってすり潰したカタクチイワシかゆでたビエトラ(ふだん草)。
※オーブン焼きでなくフリットにする時は溶き卵とパン粉をつけて油で揚げる。



次はプーリア。
Giovanna Quaranta著、『La cucina pugliese』から。

アリーチ・リピエーネ Alici ripiene
材料:4人分
 生のカタクチイワシ・・800g
 おろしたペコリーノ・・150g
 卵・・2個
 レモン・・1個
 イタリアンパセリ
 小麦粉
 EVオリーブオイル
 塩

・カタクチイワシは開いて骨を取る。
・卵、ペコリーノ、イタリアンパセリのみじん切り少々、塩を混ぜる。
・魚2枚で詰め物をはさんで軽く押し固め、小麦粉をつける
・たっぷりの油で揚げ、皿に盛り付けてレモン汁をかける。



次はカラブリア。
Alba Allotta著、『La cucina calabrese di mare』から。

アリーチ・ファルチーテ Alici farcite
材料:4人分
 生のカタクチイワシ・・1kg
 硬くなったパンのクラム(白い部分)・・250g
 イタリアンパセリ・・1枝
 卵・・1個
 小麦粉
 EVオリーブオイル
 塩、チリペッパー

・カタクチイワシは開いて骨を取る。洗って水気をふき取り、塩をする。
・パンを水に浸して絞り、崩す。
・パン、イタリアンパセリのみじん切り、溶いた卵、塩、チリペッパー少々を混ぜる。
・魚の半量の身の側に詰め物をのせ、残りの半量をかぶせて軽く押し固める。
・小麦粉をつけてたっぷりの油で揚げる。



最後はサルデーニャ。
Laura Rangoni著、『La cucina sarda di mare』から。

アッチューゲ・リピエーネ・フリッテ Acciughe ripiene fritte
材料:4人分
 生のカタクチイワシ・・800g
 卵・・2個
 イタリアンパセリ・・1枝
 にんにく・・2かけ
 小麦粉・・100g
 レモン・・1個
 塩漬けアンチョビ・・8~10尾
 パン粉・・たっぷり一握り
 EVオリーブオイル・・大さじ4
 揚げ油
 塩、こしょう

・カタクチイワシは開いて骨を取る。塩漬けアンチョビは塩を洗い落として骨を取り、4枚の切り身にする。
・カタクチイワシに塩漬けアンチョビを1枚ずつのせて閉じる。
・卵、塩、こしょうを混ぜる。
・魚に小麦粉、溶き卵、パン粉の順でつけてたっぷりの油で揚げる。
・皿に盛り付け、プレッツェーモロとにんにくのみじん切りを散らしてレモン汁をかける。



なんと、生のアンチョビに塩漬けアンチョビを詰めるという、かなり奇想天外な一品。



acciughe impanate ripiene
動画で紹介されていたジェノヴァのウーゴのアッチューゲ・リピエーネ。



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関連誌;『ラ・クチーナ・イタリアーナ』2008年4月号
カタクチイワシを含む“青魚”の記事の解説は、「総合解説」08&09年4月号に載っています。

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2011年10月20日木曜日

塩漬けアンチョビ

カタクチイワシ(アッチューゲ/アリーチ)の話の続きです。

カタクチイワシ(アンチョビ)は、大量に獲れるので値段が安く、しかも塩漬けにすれば長期間保存できるので、イタリア中に広まりました。
ピエモンテのような海のない北の地方でも、バーニャ・カウダのように、アンチョビの塩漬けを使う伝統料理があったりします。
イタリアでこれほど広まった魚は、他にはタラ(バッカラ)ぐらいです。

という訳で、イタリアのアンチョビの基本は、塩漬けです。
オイル漬けもありますが、伝統料理に使うのは塩漬けです。
塩漬けアンチョビは、オリーブ、ケッパーと共に、イタリア料理、特に地中海のイタリア料理の基本の食材でもありますよね。

タラは北ヨーロッパの冷たい風で干してからイタリアまで運ばれてきますが、アンチョビはイタリア沿岸で獲れて、獲ったらすぐに塩漬けにします。

家庭で塩漬けにする時は、ガラスか、釉薬で覆われている陶器の筒型の容器を用意します。
塩は海塩の粗塩。
アンチョビは頭と内臓を取ります。
40~50日程度漬けると食べられるようになります。


↓アンチョビの塩漬けの動画を2つどうぞ。











アンチョビは獲ったらすぐに産地で塩漬けにするので、いわゆるご当地の味になります。
いくつか有名な産地がありますが、最近はチンクエ・テッレ(リグーリア)のモンテロッソのアンチョビが有名。


↓アッチューゲ・ディ・モンテロッソ



食べる時は、洗って余分な塩を落とし、開いて骨を取って水気をふき取ります。
調味は、オリーブオイル、にんにく、オレガノが最適、と言っています。


では、“リチェッテ・ディ・オステリーエ・ディ・イタリア”シリーズの『ペッシェ』から、モンテロッソの塩漬けアンチョビの作り方をどうぞ。

アッチューゲ・ディ・モンテロッソ・イン・サラモイア Acciughe di Monterosso in salamoia
材料:
 新鮮なカタクチイワシ・・1kg
 塩
 サラモイア(塩水の漬け汁)用塩・・水1リットルにつき300g
調味用
 にんにく・・1かけ
 オレガノ・・少々
 EVオリーブオイル

・カタクチイワシは氷に触れないようにする(氷は血を固めるので、後で臭うようになる)。
・頭と内臓を取って手早く洗い、水気をよく切る。
・ガラスの容器に塩を1cm程度敷き、その上に魚を間を開けずに1段並べる。
・1段ごとに押しながら塩と魚を交互に重ねていき、容器一杯に詰める。最後は塩で終わる。
・天然スレートの板で栓をし、その上に重石をのせる。
・漬けてから数日間は魚から茶色い汁が出てくるので時々取り除く。
・汁が出なくなったらサラモイアを作る。水と塩を20分沸騰させて完全に冷ます。
・サラモイアで容器を満たす。残ったサラモイアは瓶に入れて保存し、減ったら足す。
・60~90日後に食べられるようになる。
・洗って開きながら骨を取り、水気をふき取る。
・EVオリーブオイルをかけてにんにくのみじん切りとオレガノを散らし、30分マリネしてからサーブする。
※モンテロッソでは、にんにくは加えずに調味したものをバターを塗ったパンにのせて食べる。




リチェッタで紹介しているマリネ以外にも、塩漬けアンチョビはさまざまな料理で使いますが、塩漬けアンチョビが主役という料理は滅多にないので、リチェッタを紹介しにくい、ということに今、気が付きました。


とりあえず、塩漬けアンチョビのソース、アッチュガータのリチェッタをどうぞ。

同じく“リチェッテ・ディ・オステリーエ・ディ・イタリア”シリーズの『ペッシェ』からです。

アッチュガータ Acciugata
材料:4人分
 塩漬けアンチョビ・・4尾
 にんにく・・1かけ
 イタリアンパセリ・・1本
 EVオリーブオイル・・1/2カップ
 塩、こしょう

・アンチョビは洗って骨を摂り、水気をふき取る。
・陶器の鍋にオイルとにんにくを入れて炒める。
・にんにくに色がついたら取り除き、アンチョビを入れて木べらかき混ぜながら溶かす。
・イタリアンパセリのみじん切り、塩少々、こしょうを加えてクリーム状に煮詰める。
※ゆで肉やパスタのソースに。仕上げにケッパーのみじん切りや、トマトのパッサータ大さじ2~3を加えてもよい。




次回は生のアンチョビのリチェッタです。


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関連誌;『ラ・クチーナ・イタリアーナ』2008年4月号
カタクチイワシを含む“青魚”の記事の解説は、「総合解説」08&09年4月号に載っています。

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2011年10月17日月曜日

カタクチイワシ

今日はカタクチイワシの話。
『ラ・クチーナ・イタリアーナ』の解説です。

カタクチイワシの英名はアンチョビー。
イタリア語では様々な名前で呼ばれますが、代表的なのは、“アッチューガacciuga”(複数形はアッチューゲacciughe)、または“アリーチェalice”(複数形はアリーチalici)。

イタリア人でも魚に詳しくない人は、アッチューゲとアリーチは同じもの、ということを知らなかったりします。

マイワシは、イタリア語では“サルダsarda”(複数形はサルデsarde)、またはサルディーナsardina(複数形はサルディーネsardine)ですが、サルデとアッチューゲの違い、つまりマイワシとカタクチイワシの違いを知らない人は、日本人にだっていますよね。


Swimming in Alici (Anchovies)
ヴェネチアのリアルトの魚市場のアリーチ(カタクチイワシ)


Sarde
パレルモの市場のサルデ(マイワシ)


カタクチイワシとマイワシの見分け方は、イタリアでも、下あごが短いのがカタクチイワシ、というのが一般的。

カタクチイワシは、イタリアを囲む地中海全域で獲れます。



↓カラプリアのターラント湾(イオニア海)の人力のカタクチイワシ漁。





↓こちらも同じくイオニア海、シチリアのカターニア湾。
船と網を使うメナイデmenaideと呼ばれる伝統的なカタクチイワシ漁の一部。





↓現代的なカタクチイワシ漁。
場所は不明。






カタクチイワシは、イタリアでは「漁師のパン」とも呼ばれます。
網にかかった魚の中で一番価値が低く、毎日テーブルに上るパンのような存在、という訳。


San Sosti (CS), 1975, mercato in località Madonna del Pettoruto.
1975年のカラプリアの市場の風景。
樽や陶器のかめに入っているのは、自家製の塩漬けアンチョビ。


Anchovies from Sicily packed in salt
こちらは現代のフィレンツェ。
サン・ロレンツォ市場のシチリア産塩漬けアンチョビ。


大衆魚の中の大衆魚。
アッチューゲ、またはアリーチの話、次回に続きます。


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関連誌;『ラ・クチーナ・イタリアーナ』2008年4月号
カタクチイワシを含む“青魚”の記事の解説は、「総合解説」08&09年4月号に載っています。

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2011年10月13日木曜日

コルク栓ができるまで

コルクの話の続きです。

今日は「コルク栓ができるまで」。

コルクはコルクガシの皮から作ります。
コルクガシは、樹齢20~25年たって、幹の円周が30~40cm以上になって初めて皮を“収穫”することができます。
一度収穫すると、再び30~40cm以上になるまで約10年間をあけます。

若いコルクガシから初めて収穫したコルクは肌理が粗いので、砕いてプレス加工用などにします。
コルク栓には、2回目以降の収穫のコルクが用いられます。

コルクは、木からはいだらまず乾燥・熟成させます。
その期間は6ヶ月から2年。

次に、100度よりやや高めの湯で1時間煮沸して、寄生虫、水溶性の物質、タンニンなどを取り除きます。

これを乾かして平らにしたら、今度は硬くするためにもう一度煮沸。

そして成形、洗浄。

スパークリングワイン用には、上部はプレス加工したもの、ワインに接する一番下の面は高い気圧に耐えられるようにプレスしていないコルクと、種類の違うコルクを使います。

最後に厳しい品質チェックをして出荷。


↓コルク栓ができるまで





コルクの最大の敵は、カビ臭を発生させる2,4,6-トリクロロアニソールという揮発性物質。
イタリア最大のコルクの産地サルデーニャでは、これを取り除くための研究も進んでいます。



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関連誌;『ガンベロ・ロッソ』2009年4月号
“サルデーニャのコルク”の記事の解説は、「総合解説」'08&'09年4月号に載っています。

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2011年10月11日火曜日

コルク

今日はコルクの話。
『ガンベロ・ロッソ』の解説です。

このブログを見ている人は、おそらく、毎月かなりの数のワインの栓を抜いているはず。
コルク栓の数も、相当なものになるんでしょうねえ。

A box of corks


さてこのコルク、いったい何からできているのでしょう。

そう、木の樹皮ですよね。

その名もコルクガシという木の、皮を厚くはいだものが原料です。

コルクガシが生えているのは、ヨーロッパ南西部とアフリカ北西部、つまり地中海の西側一体(地図)。
この地域には、大昔からコルクガシが自生していました。

コルク生産の中心はポルトガルで、コルクの約半分がポルトガルで作られています。
この他に、スペイン、イタリア、フランス、モロッコ、アルジェリア、チュニジアなどが主な生産国。

地中海沿岸では、年間約30万トンのコルクが生産されています。
イタリア産は約15,000トン。
そのうち12,000トンがサルデーニャ産。


Alberi imbottigliati
サルデーニャのコルクガシ。
下の赤茶色い部分が皮をはいだ跡。



はいだ跡のアップ
なんとなくコルクの面影が・・・。


Sughero
はいだ樹皮、つまりコルク。
これを加工してコルク栓にします。



コルクの約70%はコルク栓になります。
その数、年間約150億個。

ところが最近は、合成コルクやスクリューキャップがすごい勢いで天然コルクに取って代わっています。
このまま行けば、天然コルクの販売数は激減しかねません。

コルクは木を伐採して作るから環境破壊につながる、というイメージがあるかもしれません。
ところが実際には、木を伐採して作るのではないし、逆に天然のコルクを使わないことによる環境破壊の方が心配されているんですねえ。

冷静に考えてみれば、確かにコルクは、木を切り倒して作る訳ではありません。
使うのは皮だけですから。
だから、地中海西部の沿岸部には、昔からコルクガシの豊かな林がありました。

コルクガシにはドングリがなります。
ドングリは、野生動物の貴重な食糧。
スペインのイベリコ豚も、コルクガシのドングリを食べているのだとか。
さらに、コルクガシの枝には鳥が巣を作ります。
コルクガシの林は、貴重な生態系の一部なのです。
これがなくなれば、環境に大きなダメージを与える可能性があります。

ても、今後、合成コルクやスクリューキャップの勢いが減るとは思えません。
代替品が増えれば、天然のコルク栓の売り上げが減る。
 ↓
すると、コルクガシの利用価値が下がる。
 ↓
コルクガシの林がなくなる。
という訳です。

WWFは、今後10年で地中海西部のコルクガシの75%が失われる、と予想しています。
WWFの数字がどれだけ信用できるものかは別にしても、少なくともサルデーニャのコルクガシの林は姿を消しつつあるそうです。

コルクガシをもっと有効に使う方法を考えないと、コルクガシの林は地中海から消えてしまう運命に・・・。
そうなったら、天然のコルク栓は貴重品になってしまうのかもしれませんねえ。


↓ポルトガルのコルクの収穫(英語)





コルクの生産が主要産業になっている地方もあるポルトガルにとっては、コルク栓の売上減少は死活問題。

↓天然コルク栓を支持します、というアメリカのワインメーカーたち(英語)





↓もっと過激に天然コルク栓をアピール。
合成品は環境を破壊する、とラップで訴えてます。






ところで、コルクをどうやってコルク栓にするか、知っていますか?
次はその話。


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関連誌;『ガンベロ・ロッソ』2009年4月号
“サルデーニャのコルク”の記事の解説は、「総合解説」'08&'09年4月号に載っています。

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2011年10月7日金曜日

イタリアのランチボックス、スキッシェッタ

今日はお弁当の話。
『ラ・クチーナ・イタリアーナ』の解説です。

“ベントー”がニューヨークあたりで人気、という話は、聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
弁当箱を売っている日系の店もあったりして、かなり本格的なお弁当を作るニューヨーカーもいるようですね。

でも、これはあくまでもインターナショナルな大都会、ニョュ―ヨークの話。
食に関しては保守的で、昼食に長い時間をかけるイタリアで、お弁当はどう受け止められているのでしょうか。

『ラ・クチーナ・イタリアーナ』によると、お弁当はイタリアでも静かに広まりつつあるようです。
ただし、中に詰めるのはご飯ではなく、フリッタータや生ハムなどイタリア式。

ランチにお弁当を食べると言う習慣が広まってきた背景には、都会では昼食の時間が短かったり、不景気で節約志向、というだけでなく、最近のバールやレストランの並のランチには満足できない、というグルメな理由もあるようです。

ただ、イタリアの最近流行りのお弁当は、日本のものとはかなりイメージが違います。
弁当箱が飯盒(はんごう)なんです!
しかも、ロンドン、パリ経由でミラノに入ってきたトレンドだとかで、なかなかお洒落な飯盒なんです。


アンティークの飯盒



どうも日本人としては、飯盒はご飯を炊くためのもののような気がしてしまいますが、そもそも飯盒は、ヨーロッパで生まれたものなんだそうです。
それなら、ヨーロッパの人が飯盒にランチを詰めたところで、なんの不思議もありません。
元々ヨーロッパでは、飯盒は兵隊や肉体労働者の食事を詰めたり作ったりする容器として使われていました。
彼らが飯盒の蓋を閉める時、食べ物をぎゅうぎゅう押し込んだところから、ミラノでは飯盒のことを“スキッシェッタ schiscetta”(標準語ではスキアッチャータ schiacciata)と呼んでいました。
それが最近のお洒落なトレンドによって復活し、ミラノ以外でもお弁当のことをスキッシェッタと呼ぶようになりました。

イタリアの“飯盒”はこんなイメージ


ちなみに、ミラノでは最近の学校給食の質の低下がひどく、保護者による“スキッシェッタ・デイ”という抗議活動が行われました。
学校へは食べ物の持ち込みが禁止されているのですが、給食があまりにまずいので、家からお弁当を持っていかなくてはならないほどなんだそうです。


↓スキッシェッタ用のインサラータ・ディ・リーゾ。
最初に、「ミラノでは“スキッシェッタ”、オリエントでは“ベントー・ボックス”と呼びます」と言っていますね。





材料は、ゆでた黒米とインディカ米、トマト、アスパラガス、フェタ、ペスト・ジェノヴェーゼ、マグロの小角切り。




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関連誌;『ラ・クチーナ・イタリアーナ』2008年4月号
“ランチボックス”の記事の解説は、「総合解説」'08&'09年4月号に載っています。

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2011年10月3日月曜日

イタリアのアルタ・クチーナの現状

今日はミシュランの話。
『ラ・クチーナ・イタリアーナ』の解説です。

2011年版のミシュランの3つ星店、日本は東京と大阪合わせて26軒でした。
この数はご本家のフランスと同じ。
すごいですねえ。
というか、ミシュランの販売戦略が露骨に出た結果なんでしょうか。


Michelin Guide party
↑サンフランシスコ版の3つ星は2軒。
アメリカはこの他に、ニューヨーク、シカゴを合わせても9軒。


さて、それではイタリアは何軒でしょう。

答えは・・・6軒です。

毎年、ミシュランが発売になるたびに、イタリアのマスコミからは不満の声が噴出します。
しかも、ドイツがイタリアより多い9軒、という事実が、イタリア人のプライドをますます傷つけています。
イタリアとフランスはやっぱり天敵同士なんだ、というけんか腰の意見は、当分消えそうもありません。
さらに、3つ星店のメンツが毎年ほとんど変わらないということも、業界の停滞ぶりを象徴しています。

『ラ・クチーナ・イタリアーナ』誌では、この数字を冷静に分析しています。

「勢いを失っているのはイタリア料理ではない。
むしろイタリア料理は、ヘルシーな料理として世界中に認められている。
勢いを失っているのはレストラン業界なのだ」

「イメージとは逆に、フランス人はイタリア料理の神髄、つまり、家庭やトラットリーアのイタリア料理をとても高く評価している」

「外国でこんなに愛されている私たちの料理を、今のイタリアの高級レストランで見つけることができるだろうか」

「現代イタリア料理は、フランスやスペインで生まれたトレンドの後を追うだけになっている。
ルーツである地方料理を切り捨てて、しっかりした土台のない道を歩んでいるのだ」

「豊かな地方料理こそがイタリアの切り札だ。
グアルティエーロ・マルケージは、常にパダーナ地方の料理に忠実だった。
金箔のリゾット、ラヴィオリ・アペルト、コトレッタ・ミラネーゼのパズルといった彼の料理は革新的だが、ベースはこれ以上ないほどイタリア的だ」

「このまま行くとアルタ・クチーナは、美食家のためのものではなく、好奇心と流行を追う人のためのものになってしまうだろう。
この傾向は逆に、ドイツなど突出した美食文化のない国には追い風だ」


すべてがごもっとも。
冷静で鋭い分析。
言われてみれば日本の外食産業も、特に西洋料理やエスニック料理は、流行、話題、珍しさを追う人のためにある店がかなり多いのでは。


おまけの動画。
↓ヨーロッパでもっとも若い33歳の3つ星シェフ、アンドレアス・カミナーダ氏。
ドイツのレストラン。







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関連誌;『ラ・クチーナ・イタリアーナ』2008年3月号
“ミシュランとイタリア料理”の記事は、「総合解説」'08&'09年3月号に載っています。

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