イタリア料理ほんやく三昧: 3月 2010

2010年3月30日火曜日

シェフのリチェッタを読む、その3

イタリア語のリチェッタ中級編に挑戦。

中級編は、辞書にない単語をどう攻略するか、がポイント。

タオルミーナのラ・カピネーラのシェフのリチェッタ、というか料理名を訳してます(汗)。

その料理名はこちら。

Tartara di tonnina e gamberetto di nassa
  con corallo dello stesso e sale di Mothia


上段は
「マグロの赤身とガンベロ・ロッソのタルタル」
であることが判明。

では下段に取りかかりますか。

corallo dello stesso

これはちょっとやっかいですよー。

dello stessoは、辞書で調べれば、「それ自信の」、つまり「ガンベロ・ロッソの」ということが分かります。

問題はcorallo。

辞書には「サンゴ」と書いてあります。
でももちろん、「エビのサンゴ」なんてものはこの世に存在しません。

では一体何でしょうか。

まあ今回は、その答えは材料を見ればすぐに解るようになっています。
でも一応、coralloについてちょっと解説しておきます。


辞書で引いても解らない謎の単語、corallo。
じゃあ検索してみると・・・。
多分、「サンゴ」ばかりヒットするはず。
そこでもう少し手がかりを足して、gamberiなどの言葉も加えて検索してみます。
するとごくわずかですが、料理に関するサイトでこの言葉が使われていることが分かります。
corallo di granchio
coralli di capesante
など。


実は、coralloという言葉は、イタリア語のリチェッタには時々登場します。
主に、corallo di capesanteという時に使います。

試しに、coralli di capesanteで検索してみてください。
今度はたくさんヒットするはずです。

corallo di capesanteは、帆立貝のオレンジの部分、つまり卵巣のことです。
サンゴ色だからこう呼ばれるのでしょうか。

coralloとは、魚介の卵を指す言葉としてごくまれに使われます。
つまり、エビのcoralloは、エピの卵のこと。
ただ、生のエビの卵は青緑色で、全然サンゴ色じゃないですよね。
エビの卵を業界用語で表現した、というところでしょうか。
中級編のリチェッタは、業界用語もバンバン出てきます。


そして最後のsale di Mothia。
これは問題ないですよね。
モツィアの海塩のこと。

つまりこの料理名は
「マグロの赤身とガンベロ・ロッソのタルタル、エビの卵とモツィアの海塩風味」
という意味。


実は、このリチェッタの材料と作り方は、解説が必要なほど難しい部分はありません。
作り方を要約すると、マグロとエピを別々に包丁で刻んでオリーブオイルと挽いたモツィアの塩で調味し、セルクルを使って皿に2段になるように盛り付けます。
上にイクラをのせ、粗挽きこしょうをかけてと香草(ミント、赤バジリコ、花つきシブレット)で飾ります。
エビの卵はオリーブオイル少々を加えて乳化させ、タルタルの横に青い筋になるようにたらします。
仕上げに粉のスパイス(ナツメグ、カレー粉、ジンジャーパウダー、タラワクペッパー)で皿のリムを飾って出来上がり。





マグロの赤身の鮮やかな赤、エビの透き通った薄桜色、そしてエビの卵の幻想的なターコイズブルー。
さらに、エキゾチックなスパイスと自己主張する丸ごとのハーブの香り。

面白い構成ですねえ。

ピエトロ・ダゴスティーノシェフはこの他にも、シチリアの生魚料理のレパートリーをたくさん持っています。
当たり前ですが、醤油を使わない生魚の食べ方も、たくさんあるものですねえ。
店のhpはこちら



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関連誌;『クチーナ・エ・ヴィーニ』2008年5月号
ピエトロ・ダゴスティーノシェフのリチェッタは、「総合解説」'07&'08年5月号P.18に載っています。

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2010年3月26日金曜日

シェフのリチェッタを読む、その2

料理人のリチェッタを読む、その2です。

前回は、料理名を訳す、というか、料理名の中の一つの単語を訳すことに全て費やしてしまいました。
こんな風に、料理人のリチェッタを訳す作業は、辞書に載っていない単語との闘いがその大部分を占めます。

今回の料理名は、
Tartara di tonnina e gamberetto di nassa
  con corallo dello stesso e sale di Mothia


これはかなり簡単な方です。

先日訳したある料理名なぞは、
Passeggiata in Val di Noto
ですよ。

「ヴァル・ディ・ノートの散策」?

上級編のリチェッタになると、辞書に載っている単語でも訳すのに苦労します。



さて、Tartara di tonnina...ですが、料理名の続きを訳していきます。
tonninaは「スマ」という魚の可能性もあるのですが、今回は「マグロの赤身」と解釈。
で、次はgamberetto di nassaです。

gamberetto di nassaは、直訳すれば「筌の小エビ」。
筌は魚を捕るかごのことです。
これで納得してもいいのですが、もう少し詳しく調べてみます。

一番手っ取り早いのは、gamberetto di nassaで検索する方法。
画像を検索すれば、gamberetto di nassaがどんなエピなのか、見ることもできます。
Google Italiaなどイタリアの検索エンジンで調べると、より詳しい情報が見つかります。

実際に検索して見ると・・・。

どうやらこのエビはスローフードのバックアップ食材に選ばれているようで、情報は比較的たくさんありますねえ。

地中海名物の赤いエビ、ガンベロ・ロッソの一種なんですね。
海底の暗い穴の中にいるために網で捕ることができず、かごを使うからこう呼ばれるんだとか。
とても甘く、新鮮なものを生で、レモン汁などを何もかけずに食べるのが一番美味しいんだそうです。

こんなエピ


これで納得してもいいのですが、食材の名前の場合はもう一歩踏み込んだ調査をします。

それは、日本名を調べる、という方法。

今は本当に便利な世の中で、gamberetto di nassaの日本名も、ちょっと検索すれば解ってしまうんです。
すごいですよ、まったく。

では、どうやって日本名を調べるのか、その方法を説明します。

まず、gamberetto di nassaの学名を調べます。

食材を解説するサイトには、その学名を載せているものが結構あるんです。

例えばこちら

Gamberetto di nassaの横に(Plesionika narval)とありますね。
これが学名です。

学名が分かったら、今度は学名で検索。
そうすればあっという間に日本名が判明します。

「オキノスジエビ」だそうです。


ああ、また一つの単語を調べるのに時間を食ってしまいました。
今日はここまでです。
続きは次回に~。



生のガンベロ・ロッソの前菜, photo by stefaniav



ガンベロ・ロッソのカヴァテッリ, photo by googlisti



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関連誌;『クチーナ・エ・ヴィーニ』2008年5月号
ピエトロ・ダゴスティーノシェフのリチェッタは、「総合解説」'07&'08年5月号P.18に載っています。

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2010年3月23日火曜日

シェフのリチェッタを読む、その1

今日は「イタリア語のリチェッタを読む、中級編」です。

今回は、プロのシェフのリチェッタとはどんなものなのか、解読してみましょうか。
でも中級編なので、比較的簡単なやつです。

料理は『クチーナ・エ・ヴィーニ』の記事から選びました。
タオルミーナのラ・カピネーラというレストランのオーナーシェフ、ピエトロ・ダコスティーノ氏のリチェッタです。

シェフはタオルミーナ出身で、世界各地で活躍した後、2003年に生まれ故郷に戻って店を出しました。
ミシュランでは1つ星です。
店のhpはこちら

シチリア産クロマグロを始めとする魚料理が得意。
シチリアの食材をふんだんに使ったアルタ・クチーナを作る人です。

ラ・カピネーラのPV






訳す料理は、こちら。

Tartara di tonnina e gamberetto di nassa
  con corallo dello stesso e sale di Mothia


プロの料理は、タイトルがやたら長いのがお約束。
これを訳すだけで一苦労です。

でも実は、イタリアの高級レストランのメニューにはこんな調子の料理名がずらっと並んでいる訳で、そもそもこれを訳せないと、何を注文すればいいのか分からない、という事態になってしまいます。

さーて、これはどんな料理?

ちょっとヒント。
材料が多少違いますが、同じシェフが作ったこの一品によく似ています。
 ↓
tartara di tonno e cernia

“Tartara”が分かれば、謎はかなり解けます。

tartaraは「タルタル」。

つまり、この料理は、tonninaとgamberetto di nassaのタルタルです。
そこにcorallo dello stessoとsale di Mothiaがのっている、という訳です。
多少はイメージできたでしょうか。


では、tonninaとは、何でしょう。

実はここからが、このリチェッタが中級編な所なんです。
tonninaとは何か。
この答えを探せるか探せないかが、全ての分かれ目!


“tonnina”は辞書で引くと、
「1.マグロの背肉の塩漬け、2.マグロの一種」
などと書いてあります。

確かに、マグロの塩漬けのことをトンニーナと呼びます。
これは、マグロを2週間ほど塩水につけてからさっと干したものです。

でも、「辞書にも書いてあるからマグロの塩漬けかなあ」、と思ってはダメなんです!
中級編のリチェッタで、辞書の通りということは滅多にない!
そもそも、2週間塩に漬けたマグロでタルタルは不自然だし。

さらに、後から出てきますが、リチェッタの材料を見ると、「tonnina freschissima(新鮮なトンニーナ)」となっています。
辞書に書いてあっても、塩漬けとは違うようですよ。

では、マグロの一種?
確かに、地方によってはEuthynnus alletteratusという学名の魚をトンニーナと呼ぶことがあります。
これは、日本名はスマというサバ科の魚です。
実はクレアパッソの「総合解説」では、トンニーナをこの魚と紹介してしまいました。
スマは味がカツオに似ていると言うので、タルタルにしてもおかしくないと思ってしまったんですねえ。
でも、詰めが甘かったです。
反省しています。
大変失礼いたしました。

スマでもなかったんです。

では一体何か。

ヒントは、ラ・カピネーラのhpで紹介されている雑誌の記事の中にありました。

「Rassegna stampa」の「Stampa 2008」の中に、「tartara di tunnina di Favignana」という言葉を発見!
このリチェッタのtonninaとは、正確には、「ファヴィニャーナのトゥンニーナ」でした。

そこで「ファヴィニャーナのトゥンニーナ」というキーワードで調べた結果、分かりました。

これ、クロマグロの赤身のことでした。

ふう~。
ここまで調べるのはかなり大変だったんですが、文字にするとあまりにあっけない・・・。
まあ、そんなもんです(涙)。


tonninaの正体が分かったところで、材料と作り方の原文はこちら。


Ingredienti per 4 persone

g 250 di tonnina freschissima
g 150 di gamberetti di nassa freschissimi
g 25 di uova di gamberetti
Olio extravergine di oliva biancolilla
Cristalli di sale di Mothia

Per la guarnizione
g 15 di uova di salmone
4 rametti di menta
4 foglie di basilico rosso
4 steli di erba cipollina fioriti
Pepe di mulinello
Spezie in polvere (noce moscata, curry, zenzero, pepe di Sarawak)

Pulire bene la tonnina e i gamberetti, batterli separatamente al coltello ottenendo una dadolata non troppo piccola.
Condire sempre separati, con un filo d'olio a crudo e pochissimo sale di Mothia macinato al mulinello.
Mettere al centro di ogni piatto un anello cilindrico, riempirlo con un poco di tartara di tonnina e sovrapporre i gamberetti ben pressati.
Sfilare l'anello e sopra appoggiare alcune uova di salmone.
Guarnire la tartara con una macinata di pepe e le erbette aromatiche.
Con un cucchiaio disporre di lato una lacrima di uova di gamberetti emulsionata con un filo d'olio e colorare il bordo dei piatti con le spezie in polvere.




次回はこのリチェッタを解読していきます。



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関連誌;『クチーナ・エ・ヴィーニ』2008年5月号
ピエトロ・ダゴスティーノシェフのリチェッタは、「総合解説」'07&'08年5月号P.18に載っています。
トンニーナは「マグロの赤身」と訂正させていただきます。大変申し訳ございません。

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2010年3月19日金曜日

イタリアのクロマグロ料理は・・・

ワシントン条約締結国会議のクロマグロの結果は意外でしたねえ。
多くの人が、地中海産クロマグロがなくなる日が来るかも、と心の準備をしていたはず。
今後状況がどう変わるか分かりませんが、とりあえず、このブログでもまだクロマグロの話題は紹介できそうです。

TVのニュースで、「この店はクロマグロを使っていません」という表示を出しているフランスの寿司店を紹介していました。
「クロマグロを使っていないからこの店を選んだ」という客もいました。
高級ホテルのRelais et Chateauxグループでは、世界中の同グループのホテルで、大西洋と地中海産のクロマグロは使わないと発表しています。
ヨーロッパでは、
「クロマグロはこの20年で80%減った。今の調子で漁を続ければすぐに絶滅する。絶滅の危機から救うには禁漁にするべき」
という考えが急速に広まったようですね。
今後、ヨーロッパでクロマグロがどういう扱いを受けるのか、気になるところです。


イタリアでは、ドーハの会議の結果を、「寿司と刺身のファンが安堵のため息をつくことだろう」と伝えたりしています。

今回の問題では、イタリアはいち早くクロマグロ漁禁止支持を表明しました。
でも、イタリアにはクロマグロ漁で生活している人たちがいて、彼らは禁漁に強く反対していました。

イタリアはクロマグロの消費国でもあります。
これまで、料理雑誌にクロマグロ料理が載るのはごく普通のこと。
特に、南イタリアの魚料理が自慢の高級レストランでは、わざわざメニューに「トンノ・ロッソ」と書いて、クロマグロであることをアピールしていました。
それがここにきて急速に、クロマグロは食べるべきではない、という風潮が強くなってきているようです。
朝の情報番組で、「マグロ料理はこんな魚で代用できる」という番組が放送されたりしています。

ただ、天然資源保護を優先させるのか、伝統の食文化を守るのか、イタリア人のクロマグロに対するコンセンサスはまだ一つに固まっていないようで、矛盾と混乱もあるようです。

一番悩んでいるのが、料理人ではないでしょうか。
イタリアにはマグロ料理の本を出している料理人もいますし、カルロフォルテやファヴィニャーナのようにマグロが目当てで観光客がやって来る島もあります。
それがここ数カ月で突然、今後クロマグロ料理を出すかどうか、決断を迫られるまでになってしまったのですから。
「クロマグロは出さない」と決めた店も少なくないようです。

まだ今後の動向がどう変わるか簡単に判断はできませんが、イタリアのクロマグロ料理は、禁漁が否決されたとは言っても、かなり厳しい時代を迎えそうです。


ドーハの結果を伝えるイタリアのニュース



下の動画はマグロをタラで代用しよう、という番組。
「レストランの中にはクロマグロをメニューから消したところもある」
「地中海のクロマグロは違法な畜養で育てられて日本に輸出されている」、という話もしています。







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2010年3月16日火曜日

イタリアのナンバー1ブリオッシュ

今日はブリオッシュの話。

『ガンベロ・ロッソ』の解説です。

『ガンベロ・ロッソ』では毎月、「○○○ベスト10」というのを発表しています。
このブログでもこれまでに、ローマのカルボナーラベスト10やマグロのオイル漬けベスト10などを紹介してきました。
今回はブリオッシュです。


日本でブリオッシュと言えばこんな形が一般的。


photo by roboppy


でもなぜかイタリアでは、これもブリオッシュと呼びますよね。


photo by Ondablv


この長方形に近いずん胴なクロワッサン、バールで“ブリオッシュ”と注文すると出てきますねえ。


イタリアでも特に北部では、クロワッサンのことをブリオッシュと呼びます。
同じものが南部ではコルネットと呼ばれたりもします。
形は違いますが、ヴェネツィアーナというドルチェもブリオッシュの一種です。
つまり、発酵させたブリオッシュ生地を使ったドルチェは、みんなブリオッシュ。

『ガンベロ・ロッソ』によると、イタリア人の80%は朝食にブリオッシュを食べるのだそうです。

ブリオッシュはパンではなくドルチェに分類されます。

マリー・アントワネットの、「パンがなけばお菓子を食べればいいのに」という有名な言葉、本当は「パンがなければブリオッシュを食べればいいのに」と言ったそうですね。

パンとお菓子の中間のようなブリオッシュ。
英語では、マリー・アントワネットの言葉は「ケーキ」と訳されています。
「ブリオッシュを食べればいいのに」だったら、マリー・アントワネットの世間知らずぶりも、少しは緩和されて感じられるような・・・。

ちなみにイタリアでは、マリー・アントワネットの言葉は「ドルチェ」や「トルタ」ではなく、「ブリオッシュを食べればいいのに」と訳されています。


さてそれでは、『ガンベロ・ロッソ』が選んだイタリアのブリオッシュベスト10(2008年)、いきなり第1位の発表です。

1位は、パドヴァのパスティッチェリーア・ビアゼット。

ルイジ・ビアゼットという、イタリアを代表するパスティッチェーレの店。
以前にもこのブログで紹介したことがあります(こちら)。

hpはこちら

そしてこちらがビアゼットのブリオッシュ。

超美味しそうですねえ!
天然酵母の発酵生地に、手作りジャムやクリームを詰めたブリオッシュが、25種類以上あるんだそうですよ。
一流パスティッチェリーアで美味しいのはケーキだけじゃないんですねえ。


2位以下は次の通り。

2.Busnelli/Arluno(MI)
3.Canterino/Biella
4.pasticceria Cappello/Palermo
5.Salvatore De Riso/Minori(SA)
6.Gino Fabbri/Bologna
7.Nuovo Mondo/Prato
8.Giovanni Pina/Trescore Balneario(BG)
9.Pasticceria Veneto/Bresci
10.Zilioli/Brescia

イタリアを代表する有名パスティッチェリーアが並んでいますねえ。


アマルフィ海岸のパスティッチェリーア、サルヴァトーレ・デ・リーゾ(5位)






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関連誌;『ガンベロ・ロッソ』2008年5月号

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2010年3月11日木曜日

クイリナーレ

今日はイタリアの大統領官邸の話。
『ラ・クチーナ・イタリアーナ』の解説です。

今回の『ラ・クチーナ・イタリアーナ』の記事、「大統領の晩餐会」は、かなり貴重な内容ですよ。
イタリアの大統領官邸での国賓を招いた晩餐会の裏舞台を、詳細にレポートしています。
滅多に聞けない話です。

現在のイタリアの大統領は、ジョルジョ・ナポリターノ。
冗談みたいですけど、やっぱりナポリ出身。

こんな方


大統領官邸はローマのクイリナーレの丘にあって、クイリナーレ宮殿と呼ばれています。
芸術品に囲まれた美術館のような建物です。

クリイナーレ宮殿


美しくてゴージャスな官邸ですねえ。
建物もいいんですが、最後に登場する騎馬隊、超カッコイイですねえ。
騎馬隊フェチにはたまりませんですなあ。
あの人たちはカラビニエーリ(軍警察)の一部隊で、大統領付きの騎馬憲兵、コラツィエーリです。


激しく横道にそれますが、ここでおまけの動画。
カラビニエーリのエリート、コラツィエーリの仕事っぷりなぞをどうぞ。






いやあ、皆さんプライドを持って仕事に臨んでいますねえ。
大統領付きの仕事と言うのは、それだけ誇りを感じられるものなんですね。

コラツィエーリだけでなく、カメリエーレもクオーコも、クイリナーレ宮ではみんなプライドを持って仕事をしています。

公式晩餐会では、テーブルに並べるセンタープレートの間隔が68.5㎝と決められているそうです。
クイリナーレ宮のカメリエーレは、白い手袋をした手にメジャーを持って、きっちり68.5㎝かどうか1つずつ計ります。
背筋の伸びたその姿は、昨今の日本の執事ブームなんか鼻で笑いたくなるようなプロフェッショナルぶり。

仕事の前に給仕長がスタッフにかける言葉もまたカッコイイ!

「(給仕は)素早く、ただしゆっくりした印象を与えるように。
口は開かない。
話をしないで理解し、かつ理解してもらうのが皆さんの仕事です!」


見せ場がたくさんあるカメリエーレさんと比べて、コックさんたちはちょっと地味な仕事をしなくてはなりません。
なにしろ、公式晩餐会の時間は40分で、料理はたった3品。
しかも、余計な演出は一切なしの、シンプルな料理であることが絶対条件。

確かに、記事で紹介されている料理は、どれもとてもベーシックなもの。

1993年にクイリナーレ宮を訪れた日本の天皇のための晩餐会では、デザートにラズベリーのヴァシュランが出されました。
このヴァシュラン、一目見てすぐに思いましたよー。
日の丸をイメージしてる!

白い焼きメレンゲのベースに、白いバニラのジェラートとピンクのラズベリーのジェラートを重ねて、表面に白いホイップクリームを房状に絞り出し、その上に赤いラズベーを1粒ずつのせたもの。
赤と白の2色が印象的です。

この他、フランスのシラク前大統領にはラム酒のシロップをかけたババ(やっぱりラム酒は欠かせないんですね)、イギリスのエリザベス女王には子牛の骨付きロースト(お年の割には頑丈な胃袋)など、軽く突っ込みたくなるメニューも。

大統領官邸の料理は、シンプルなだけに王道のテクニックが求められる料理ばかりでした。



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関連誌;『ラ・クチーナ・イタリアーナ』2007年5月号
「大統領の晩餐会」の日本語解説と「天皇のためのラズベリーのヴァシュラン」のリチェッタは、「総合解説」'07&'08年5月号に載っています。

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2010年3月9日火曜日

アントニオ・アルジョラス

今日はワインの話。

『V&S』の解説です。

ワインの話というか、正確には人の話。

トゥッリーガで知られるサルデーニャのワインメーカー、アルジョラス(イタリア語の発音だとアルジョーラス、英語なまりに発音するとアルジオラス)。
hpはこちら
『V&S』の記事は、その創設者のアントニオ・アルジョラス氏の歩んだ人生を紹介しています。

記事が書かれたのは2008年。
この時彼は、なんと101歳でした!

1906年12月26日生まれ。
イタリアワイン界の長老中の長老ですよ。
その1年前の100歳の時には自伝を出版しています。
当時はまだまだ元気で、その姿を写した写真は度々メディアに登場していました。

そのアントニオさんが、昨年の6月に亡くなりました。
102歳でした。

記事は生前に書かれていますが、亡くなった後に読むと、トゥッリーガの王様と呼ばれた人物の一生は、やはりありきたりではない、壮絶なものだったのだと感じます。


下の動画はアルジョラスのPV。
0:43に登場するのがアントニオさん。






アントニオの母親は、彼が6歳の時に亡くなりました。
そしてその1年後、わずか7歳で彼は働き始めます。
その後の95年間、ずっと働き通しました。

「これまでの人生、いつも働いていた」
晩年の彼の言葉です。
イタリア人は働かないという固定概念は、彼には全く当てはまらなかったようです。


父親は商売を始めては失敗の繰り返しで、結局、父親の借金は全てアントニオが背負ったそうです。
働いて稼いだ金が、父親の借金の返済で消えていく日々・・・。
少しでも時間が空けば、郵便配達のアルバイトをする猛烈ぶり。
それでも、「父親のおかげで自分は飢えることがなかったから、今は父を許している」とアントニオは言っています。

彼はとにかく働くことが好きでした。
アルジョラス創設後も滅多に家にはいなかったようで、奥様のボナルダさんはそのことをいつも嘆いていました。

そして彼のモットーは、「常に買え。決して売るな!」

1970年代、サルデーニャのぶどう畑が外部の資本に次々に買い取られていった時、彼はこのモットーを守り通します。
外部資本のカンティーナが畑のぶどうをインターナショナルな品種に切り替えても、アルジョラスはサルデーニャの品種にこだわりました。

その後はジャコモ・タキス氏との出会いなどを経て、アルジョラスはサルデーニャを代表するワイナリーへと成長していく訳です。

後継者にも恵まれました。
双子でも性格は全く違う息子たち、フランコとジュゼッペ、そして5人の孫たち。

孫娘のヴァレンティーナから見ると、おじいちゃんは健康志向が強くて節度があり、美味しい地元料理に目がない双子の息子たちとは正反対。

働き続けた102年でアントニオ・アルジョラス氏が残したものは、素晴らしいワインとカンティーナ、家族たち、世界中からの賞賛、そしてワインに関わる多くの人たちの尊敬の念。


アルジョラスには、「アントニオ・アルジョラス」という赤ワインもあります。
カンノナウに少量のマルヴァジーア・ネラを加えたワインです。
きっとこのワインを飲む人はみんな、ご長寿だったアルジョラスの創業者のことを思い浮かべるんだろうなあ。



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関連誌:『V&S』2008年5月号
「アントニオ・アルジョラス」の日本語解説は、「総合解説」'07&'08年5月号、P.38に載っています。

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2010年3月5日金曜日

パスタ・マンチーニ

マルケのパスタメーカーの話、その2。
『ヴィエ・デル・グスト』の記事、「マルケのパスタ」の解説です。

前回のパスタ・ディ・アルドは、生地をカットするタイプの、卵入り乾麺のメーカーでした。
今回は、生地をブロンズのダイス(型)を通して押し出すタイプの造り手をご紹介。


記事ではいくつかのメーカーを取り上げていますが、中でも個性的なのが、アスコリ・ピチェーノのマンチーニ。
hpはこちら

経営者のマッシンモ・マンチーニ氏は、小麦農家の3代目。
大学で農業科学を学び、小麦の品種改良と栽培技術の改革に取り組む学者肌の実践派です。

彼は、2001年に自らが改良した硬質小麦でパスタを作り始めました。
小麦は全て自社で栽培していて、主に3種類をブレンドしています。
生地をブロンズのダイスに通したら、40度で45~60時間かけて乾燥。

小麦を品種改良から手掛けているだけあって、小麦の香りが感じられる麺にこだわっています。



 ↑
これがマンチーニのスパゲッティ。
小麦畑の中にあると、麦の穂だかスパゲッティだか分からない、という演出ですねー。
小麦へのこだわり、アピールしてます。
このスパゲッティを食べると、小麦の風味とマルケの田園の香りが感じられるそうですよー。


マンチーニのパスタはこちら

通販のようです。



麦の穂が波のように揺れる小麦畑が印象的な映画と言えば、『グラディエーター』。
おまけの動画。
グラディエーターのエンディング曲
『龍馬伝』のオープニングを歌っているリサ・ジェラルドが作曲と歌を担当しています。




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関連誌;『ヴィエ・デル・グスト』2008年5月号
関連記事「マルケのパスタ」の日本語解説は、「総合解説」'07&'08年5月号、P.27に載っています。

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2010年3月1日月曜日

パスタ・ディ・アルド

今日も『ヴィエ・デル・グスト』のパスタの記事から。
今回はパスタメーカーの話です。

取り上げている『ヴィエ・デル・グスト』の記事は、「マルケのパスタ」というテーマ。
上質パスタの産地として知られるマルケの中でも、職人が作る小規模の“アルティジャナーレ”の乾燥パスタメーカーを紹介しています。
どれもイタリアで最高のパスタメーカーとして知られている作り手たちですよ~。

まずはパスタ・ディ・アルド。
hpはこちら

パスタ・ディ・アルドは、妻のマリアがパスタを作って、夫で会計士のルイジが経営などパスタ作り以外を担当するパスタメーカー。
アルドという名前は二人の名字を組み合わせたものなんだそうです。

パスタの種類はタリアテッレ、キタッリーネなどのロングパスタが全部で8種類。
ブロンズのダイスを通すのではなく、人の手でカットするタイプのパスタです。
製造量は1日にわずか80㎏。
世界中から注文が来て、滅多に手に入らない超レアなパスタ。
製造所があるマチェラータ近郊のモンテ・サン・ジュストという町は、靴作りで有名な所なのですが、靴ではなくわざわざパスタを買うためにやって来る人も少なくないとか。

パスタ・ディ・アルドのブランドのマークは、卵と麦の穂がデザインされたもの。
卵と小麦だけがこのパスタの材料です。
水は一滴も加えません。
この2つの素材に全てをかけています、という現れですねー。
卵の量は30%。
卵100gにつき卵黄は25g。
セモリナ粉のブレンドはパスタの形によって変えています。
例えば、ゆで時間の長い幅広麺のパッパルデッレにはイタリア産硬質小麦粉を80%使用し、残り20%はグルテンの多い外国産を使って腰を出します。
麺の乾燥は30度以下で。
出来上がった麺の水分は12.5%。

パスタ・ディ・アルドの麺は、黄金色で多孔質。
表面がざらざらしている様子は見ただけですぐに解ります。
チーズと一緒に置いておくと、チーズの匂いを吸ってしまうほど。
ゆでても崩れず、ソースがしっかり絡み、さらに、小麦の風味もあり、腰があるのに軽いのが特徴。



パスタ・ディ・アルドの製麺の様子。
麺を伸ばしているのがマリアさん。






製品を説明するルイジさん。






これだけ手間をかけて作っているアルドのパスタは、ただオリーブオイルをかけただけでも美味しいんだそうです。

マルケのパスタメーカーの話、次回に続きます。



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関連誌;『ヴィエ・デル・グスト』2008年5月号
関連記事「マルケのパスタ」の日本語解説は、「総合解説」'07&'08年5月号、P.27に載っています。

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