2010年2月27日土曜日

小麦の男

今日は、「歴史上最も多くの命を救った人」に影響を与えたイタリア人の話。
『ヴィエ・デル・グスト』の記事の解説です。

農業の分野で初めてノーベル平和賞を受賞したノーマン・ボーローグ博士。
彼の偉業は、小麦の新品種を開発したことがきっかけで達成されました。

小麦は人間が古くから栽培してきた作物。
そして世界で最も生産量の多い穀物なんだそうです。
だから、丈夫で収穫量の多い小麦を作り出せば、それが世界を食糧危機から救うことにつながる訳です。
今の日本では食糧危機と言う言葉はあまりピンときませんが、200年前のイギリスの経済学者が、そのうち世界の人口が食糧の供給量を上回るだろうと予想していたそうじゃないですか。
つまり、ボーローグ博士の小麦がなかったら、私たちみんな、飢えていたかもしれない。

実際、ボーローグ博士の作り出した小麦は、数億人の命を救ったと言われています。
確かに、歴史上で具体的にこんなに大勢の命を救った人は他にいません。

ボーローグ博士がこの研究に取り組んだのは1960年代のことでした。
実は、小麦の本格的な品種改良が成功したのはそれほど昔のことではないんです。
メンデルの遺伝の法則が知られるようになったのも、20世紀に入ってからのことですからね。


世界で初めて小麦の本格的な交配に成功したのは、イタリア人のナザレーノ・ストランペッリという人物でした。
20世紀初めのことです。

彼のことは、以前にこのブログで紹介したことがあります。
“セナトーレ・カッペッリ小麦”のパスタの話をした時でした。
こちら

イタリアのwikiによると、ナザレーノ・ストランペッリ氏は「20世紀前半のイタリアの農業学と遺伝学の分野で最も重要な研究者」。

彼が作り出したのは、重い小麦がたっぷり実る品種でした。
世界中の小麦のほとんどは、彼が作り出した小麦を改良したものなんだとか。
ただ、この小麦の弱点は、背が高いために雨風の影響を受けやすかったこと。
それを改良して背を低くしたのが、ノーマン・ボーローグ博士です。


小麦の交配に世界で初めて成功したことは、ノーベル賞にも値する快挙。
ところが、彼のことはイタリアでもあまり知られていません。
その理由が、『ヴィエ・デル・グスト』の記事で明かされています。
彼は、ムッソリーニの時代の人だったのですね。
時代が悪かった・・・。

収穫量の多い小麦の開発は国益につながります。
そこでムッソリーニは、ストランペッリ博士を政治的に利用しようと考え、上院議員の座を提供します。
けれど博士はそれを断りました。
表舞台に立つことを拒んだ彼は、イタリア各地の農村を回って農業改革のために生涯を捧げたのでした。

彼が作り出した20種類以上の小麦のうち、一番有名なのはセナトーレ・カッペッリ小麦。
ラティーニというパスタメーカーが、セナトーレ・カッペッリ小麦100%の高級パスタシリーズを販売しています。
ラティーニのセナトーレ・カッペッリのパスタシリーズはこちら



ストランペッリ博士の生涯は、過去に2回映画になっています。
2008年の作品、『L'Uomo del Grano(小麦の男)』のPV。







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関連誌;『ヴィエ・デル・グスト』2008年5月号
関連記事「マルケのパスタ」の日本語解説は、「総合解説」'07&'08年5月号、P.27に載っています。

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2010年2月24日水曜日

小麦とノーベル平和賞

今日はクレアパッソで先日配本した『ヴィエ・デル・グスト』の記事から。

昨年、オバマ大統領がノーベル平和賞を受賞した時は、なぜ?という声が少なからず上がりましたよね。
平和賞が与えられる基準はそれほど明確ではないようですが、とにかく、政治家だとか、慈善事業に身を捧げた人が選ばれる、というのが通説ではないでしょうか。
だから、『ヴィエ・デル・グスト』のパスタに関する記事の中で、ノーベル平和賞という言葉が出てきた時には驚きましたよー。
料理雑誌でノーベル賞の話題が出るのも珍しいですが、それが化学や生理学の分野ではなく、平和賞なんですから。

パスタに多少なりとも関係があって、ノーベル平和賞を受賞した人物。
世の中にはそういう人がいるんですねえ。

その人は、アメリカの農業学者、ノーマン・ボーローグ博士(1914-2009)。
1970年にノーベル平和賞を受賞しています。

アナン元国連事務総長、ネルソン・マンデラ南アフリカ大統領、ダライ・ラマ14世、マザー・テレサなど、そうそうたる受賞者の中にあって、このノーマン・ボーローグ氏は、いったい何をした人なのでしょうか。

なんと、小麦の品種改良です。
品種改良でノーベル平和賞?
意外ですねえ。


彼は、丈夫で収穫量が多い小麦を開発して、小麦の大幅な増産を可能にしました。
そしてこれを元に新しい農業技術を開発し、国際的な穀物の大幅増産を達成したのです。
ロックフェラー財団が資金を提供した「緑の革命」と呼ばれる事業の成果でした。

こうまとめると、それほど大層なことではないようにも見えます。
ところが実は、これによって食糧危機に瀕した数億の人が救われたのだそうです。
そのことが「歴史上の誰よりも多くの命を救った」として、ノーベル平和賞が与えられたのでした。


いやー、素晴らしいですねえ。
文句なしに平和賞納得です。
農業を勉強している人を見る目が大幅に変わりましたよ。
誰よりも多くの命を救える可能性がある学問だったとは、農業学は!
世界のために、これからもがんばってくださいよー!


ノーマン・ボーローグ博士(英語です)






そしてこのボーローグ博士が小麦の品種改良に取り組むきっかけになったのが、イタリアのある農業学者。
次回はこの人の話です。



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関連誌;『ヴィエ・デル・グスト』2008年5月号
関連記事「マルケのパスタ」の日本語解説は、「総合解説」'07&'08年5月号、P.27に載っています。

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2010年2月18日木曜日

リチェッタを読む、入門編。その4

イタリア語のリチェッタ解読、今日は仕上げです。

前回は、詰め物を作ってズッキーニに詰める所まででした。
では最後の文章です。

Passatele in forno solo per scaldarle (non devono gratinare), poi accomodatele nel piatto e sevitele.


なんだかleがやたらとありますねー。
1つずつ見ていきましょうか。


■Passatele

passate+leです。

passateの原形はpassare。
「通す」という意味。

leは女性形・複数の目的格の代名詞で、「それらを」という意味。
それらとは、前の文章に出てくる女性形・複数のある名詞を指しています。

前の文章は、
Raccogliete il composto in una tasca da pasticciere con bocchetta liscia e riempite le zucchine.

この中に、女性形・複数の名詞は1つしかないですね。
le zucchineです。

ということは、passateleは「ズッキーニを通す」ですね。


ズッキーニを何に通すかというと、

■in forno

inは英語と同じ、「中に」。

fornoは基本の単語の1つ。
「オーブン」。

つまり「オーブンに」通すんですね。


■solo per scaldarle

soloは「ただ・・・だけ」。

perは「ために」。

scaldarleはscaldare+le。
「温める」+「それを」。

直訳は、「それをただ温めるためだけに」


■non devono gratinare

nonは「ではない」。

devonoはdovereの三人称・複数形。
「しなければならない」。

gratinareも基本の単語の1つ。
「焼き色をつける」。

直訳は「焼き色をつけてはならない」。


■poi

もうお馴染み、「それから、次に」。


■accomodatele

accomodate+le。

accomodateの原形はaccomodare。
「整える、くつろぐ」。

よく「どうぞお楽に」という意味でaccomodateviと言います。
でも、料理用語の場合は「盛り付ける、置く」という意味。

leはle zucchine。


■nel piatto

nelはin+il。
nel piattoは分解するとin il piatto。

直訳すると「皿の中に」。


■e sevitele

eは「そして」。

selviteleはselvite+le。

selviteの原形はselvire。
直訳は「食事を出す、給仕する」。

leはle zucchine。

直訳は「そしてそれを出す」


■最後の文を最初から全部通して訳すと、
「(詰め物をした)ズッキーニをオーブンに通して温め(焼き色はつけない)、皿に盛り付けてサービスする」



という訳で、一番最初から、全文通して訳してみます。
ズッキーニは端を切り落としてアルデンテにゆで、3つに切って中身をくりぬく。
玉ねぎのみじん切りをバターでソッフリットにし(しんなり炒める)、ズッキーニのくりぬいた部分を入れて炒める。
これをグラナ・パダーノ大さじ1、刻んだ皮むきピスタチオ大さじ1、塩、こしょう、粉にしたアマレッティと混ぜる。
混ぜた材料を丸口金をつけた絞り袋に入れ、ズッキーニに詰める。
オーブンで焼き色がつかない程度に温めて皿に盛り付け、サービスする。



お疲れ様でした~!


おまけの動画。
ズッキーニのリピエーネ各種。


■さやいんげん、スカモルツァ、ハム、グラナ・パダーノ、卵、パン粉の詰め物





■トマト、フォンティーナ、パルミジャーノ、ウインナー、卵の詰め物





どちらも半分に切ってから中身をくりぬくタイプですね。
今回訳したリチェッタは“トロンケット”(丸太型)に切って中身をくりぬく方法ですが、この動画のように半分に切って中身をくりぬく形は“バルケッタbarchetta”(船型)と呼びます。




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2010年2月15日月曜日

リチェッタを読む、入門編。その3

イタリア語のリチェッタ攻略、今日はズッキーニの詰め物の後半部分から。


まずは全文。
Insaporite la polpa ricavata con un soffritto di burro e cipolla tritata, poi amalgamatela con un cucchiaio di grana, uno di pistacchi pelati e tritati, un pizzico di sale, pepe e gli amaretti sbriciolati.


前半は、
「玉ねぎのみじん切りをバターでソッフリットにし、ズッキーニのくりぬいた部分を入れて炒める。」
でした。

それでは後半です。

poi amalgamatela con un cucchiaio di grana, uno di pistacchi pelati e tritati, un pizzico di sale, pepe e gli amaretti sbriciolati.


一言ずつ見ていきます。

■poi

初回に出てきましたね。
「それから、次に」という意味。


■amalgamatela

分解すると、amalgamate+la。
原形はamalgamare+la。

動詞の後にくっついているlaやlo、li、leは代名詞。
前に出てきた名詞の代理の言葉です。
訳は、「laをamalgamareする」となります。

laは何形ですか?
女性・単数ですね。
ということは、前回訳した前半部分に出てきた女性・単数形の名詞の代理をしている訳です。

前半にある女性・単数形の名詞は・・・。
la polpaですね。
la cipollaも女性・単数ですが、これはun soffrittoの中身の一部で、文脈上もはやun soffrittoに吸収されていて、単独の形は残っていませんよね。

だから、amalgamatelaは、
「la polpaをamalgamareする」となります。

la polpaはズッキーニのくりぬいた部分でしたね。
「ズッキーニのくりぬいた部分をamalgamareする」
ですが、正確にはこのズッキーニは生のズッキーニではなく、ソッフリットに入れて炒めたズッキーニのこと。

amalgamareは「混ぜる」。
つまり、
「ソッフリットに入れて炒めたズッキーニを・・・と混ぜる」という意味。

「・・・」の部分は文章の残り全部です。
つまり、
炒めたズッキーニと
con un cucchiaio di grana, uno di pistacchi pelati e tritati, un pizzico di sale, pepe e gli amaretti sbriciolati.
を混ぜる、となります。


■con
「と一緒に」


■un cucchiaio di grana
「グラナ・パダーノ大さじ1」


■uno di pistacchi pelati e tritati
「皮をむいて刻んだピスタチオ大さじ1」

uno di pistacchiは、ピスタチオ1粒ではないですよ。
unoは前に出てきたある言葉の代名詞です。
イタリア語は同じ言葉を繰り返して使うのを嫌います。
だから、2回目以降に使う時はこうやって別の言葉に置き換えてしまうんですねー。

では、置き換えられた元の言葉は何でしょう。
「un cucchiaio di grana」の中にあります。

unoは男性・単数。
だから元の言葉も、男性・単数の名詞。
さらに、uno diとなっているので、元の言葉にも必ず後ろにdiが付いています。
男性・単数でdiがついている言葉・・・。

そうです、un cucchiaioですね。


■un pizzico di sale
「塩少々」


■pepe
「こしょう」


■e gli amaretti sbriciolati
「そして粉にしたアマレッティ」


これらをつなげると、後半部分の訳は

「次にソッフリットに入れて炒めたズッキーニ、グラナ・パダーノ大さじ1、皮をむいて刻んだピスタチオ大さじ1、塩少々、こしょう、粉にしたアマレッティを混ぜる」
となります。

前半部分から通して訳すと、

「玉ねぎのみじん切りをバターでソッフリットにし、そこにズッキーニのくりぬいた部分を入れて炒める。
これをグラナ・パダーノ大さじ1、皮をむいて刻んだピスタチオ大さじ1、塩少々、こしょう、粉にしたアマレッティと混ぜる」

これで詰め物の出来上がりです。



次の文章は
Raccogliete il composto in una tasca da pasticciere con bocchetta liscia e riempite le zucchine.


■Raccogliete
原形はraccogliere。
「集める」


■il composto
「混ぜたもの」
つまり詰め物のこと。


■in una tasca da pasticciere
「絞り袋の中に」

tascaは「袋」。
daは「~のための、~用の」
pasticciereは「菓子屋、菓子職人」。
直訳すれば「菓子職人用の袋」ですが、お菓子以外に使ってもla tasca da pasticciereと言います。


■con bocchetta liscia
「丸口金のついた」

bocchettaは「口金」。
liscia(男性形はliscio)は「なめらかな」。
なめらかな口金、つまり丸口金のことです。
星口金はbocchetta a stellaやbocchetta dentellata。


■e riempite le zucchine.
「そしてズッキーニに詰める」

riempiteの原形はriempire。


この文章を通して訳すと
「詰め物を丸口金を付けた絞り袋に入れてズッキーニに詰める」


さあ、だいぶ出来上がってきました。
次回で完成です。



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2010年2月12日金曜日

リチェッタを読む、入門編。その2

イタリア語のリチェッタ読破、前回はズッキーニの下ごしらえまででした。

le zucchineをspuntareしてal denteにlessareし、ognunaを3つのtronchettiにtagliareする。

特に難しくはないですよね。


そして今日訳すのは、ズッキーニに詰める詰め物を作る部分です。


Insaporite la polpa ricavata con un soffritto di burro e cipolla tritata, poi amalgamatela con un cucchiaio di grana, uno di pistacchi pelati e tritati, un pizzico di sale, pepe e gli amaretti sbriciolati.



ちょっと長いので2つに分けてみます。
まずは前半。

Insaporite la polpa ricavata con un soffritto di burro e cipolla tritata,



■この文章は、3つに分けて考えることができれば、もう簡単。
どう分けるかというと、
1. Insaporite
2. la polpa ricavata
3. con un soffritto di burro e cipolla tritata

この文章は、
「2」を「3」で「1」する。
と訳せばいいわけです。

■ここで押さえておきたいのは、語尾を見る習慣。

「2」の最後に、「ricavata」という言葉がありますね。

この言葉の語尾を見てください。
「-vata」
です。
これは、形容詞の性質を持つ過去分詞の女性形・単数です。
簡単に言えば、形容詞の女性形・単数です。
つまり、単数の女性名詞を形容している言葉ですね。
この文章の場合の単数の女性名詞は「la polpa」です。

では次に、「3」の最後の言葉、「tritata」。
これも形容詞の性質を持つ過去分詞で、女性形・単数。

 質問;この言葉は何を形容しているのでしょうか?
 答え;cipolla

「3」にはsoffrittoとburroという名詞も出てきますが、これらは男性形。
tritataはこれらの名詞とは何の関係もない、ということが分かります。

今回の文章はシンプルなので、語尾を意識しなくても何の問題もありませんが、もっと複雑な文になると、語尾を見ないと訳せません。
普段から語尾をチェックする習慣をつけておくのがお勧めです。

たとえば、

Spuntate le cipolle solo per togliere il ciuffo di base poi, con la buccia, infornatele.


という文章。
最後の「infornatele」は、「それをオーブンで焼く」という意味ですが、「それ」とはどれでしょう。
語尾を見ると、「-le」。
つまり女性形・複数。
この文章で女性形・複数の名詞は「le cipolle」だけ。
だから、il ciuffoでもla bucciaでもなく、le cipolleをオーブンで焼く、となります。
もし「infornatelo」だったら焼くのはil ciuffo、「infornatela」だったらla bucciaです。
イタリア語ってファジーな日本語と違って、はっきり白黒つける言葉ですよね。

ちなみにこの文章は、
「玉ねぎは根の部分を切り取り、皮つきのままオーブンで焼く。」
です。


■さて、それでは単語の意味を見ていきましょう。

あーいきなり「insaporite」ですねー。

この単語は、リチェッタには頻繁に登場します。
ところがその割には、ぴったり当てはまる日本語がない!
ちょっとやっかいな単語です。
辞書を引くと、
「味を付ける、風味を添える、味を良くする」
と書いてありますが、そう訳すと少しニュアンスが違ってしまいます。

こういう時は、とりあえず飛ばして、次を見ることに・・・。


次の言葉は、

la polpa ricavata



la polpaは「果肉、実」という意味です。

ricavataは「ricavareした」、つまり「抽出した、取り出した」という意味。
直訳すると、「取り出した果肉」。
この場合は「ズッキーニのくりぬいた部分」のことです。


3つ目の文は、

con un soffritto di burro e cipolla tritata



直訳は、「burroとcipolla tritataのsoffrittoを使って」。

ソッフリットsoffrittoは、イタリア料理の基本中の基本ですよね。
多分、このブログを読んでいるみなさんには、burroとcipolla tritataのsoffrittoは、「バターと玉ねぎのみじん切りのソッフリット」で通じますよね。
一応訳せば、「玉ねぎのみじん切りをバターでしんなり炒めたもの」。


香味野菜のソッフリット





■という訳で、この文章は
2.「ズッキーニのくりぬいた部分を」
3.「バターと玉ねぎのみじん切りのソッフリットで」
1.「味付けする」
となります。

やっぱり1の「味付けする」が変ですよね。
そりゃ確かに、ズッキーニはそれだけでは味がついていないから、味を付ける作業をしようとしていることは分かります。
でも、日本語では「ソッフリットで味を付ける」とは言わないですよねえ。
しょうがないのでここは、「ソッフリットにズッキーニを入れて炒める」とでもしましょうか。

最終的には、
「玉ねぎのみじん切りをバターでソッフリットにし、ズッキーニのくりぬいた部分を入れて炒める。」
という意味ですね。


ふう、長くなりました。
続きは次回に。



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2010年2月8日月曜日

リチェッタを読む、入門編。その1

今日は「イタリア語のリチェッタを読む、入門編」です。

今回は、『ラ・クチーナ・イタリアーナ』2007年2月号から、ズッキーニの詰め物料理を選びました。

原文
ZUCCHINE RIPIENE AI PISTACCHI

Ingredienti: per 4
Tempo: circa 30'

・4 zucchine
・4 amaretti secchi
・una cipolla
・pistacchi
・grana grattugiato
・burro
・sale ・pepe

■Spuntate, lessate le zucchine al dente, poi tagliate ognuna in 3 tronchetti e svuotateli.
■Insaporite la polpa ricavata con un soffritto di burro e cipolla tritata, poi amalgamatela con un cucchiaio di grana, uno di pistacchi pelati e tritati, un pizzico di sale, pepe e gli amaretti sbriciolati.
■Raccogliete il composto in una tasca da pasticciere con bocchetta liscia e riempite le zucchine.
■Passatele in forno solo per scaldarle (non devono gratinare), poi accomodatele nel piatto e sevitele.



料理のイタリア語は、分からない単語を辞書で調べればそれなりに読めます。
最初は面倒でも、同じ単語が何度も出てくるので、慣れれば慣れるほど、辞書を引かずに読めるようになります。
最近は単語を翻訳してくれるサイトもあって、すごく便利ですよね。

まず最初に、
イタリア語の名詞には、男性形と女性形がある
単数と複数では語尾が変わる
ということを頭に入れておきましょう。

さらに、
それに伴う周囲の言葉、つまり形容詞や冠詞、動詞の現在分詞や過去分詞も同様に変化する
ということも覚えておきましょう。

では、まずは料理名。

ZUCCHINE
RIPIENE
AI
PISTACCHI


■zucchineはすぐに分かりますよね。
ズッキーニです。

質問:zucchineの単数形は?
答え(反転):zucchina

■zucchineが女性名詞の複数形なので、次のripieneも、女性形複数に変化しています。

質問:ripieneの元の形(男性形、単数)は?
答え:ripieno

原形が分かったら、その言葉の意味を調べればいいわけです。
質問:で、意味は?
答え:詰め物をした

■aiはa+i。
aは様々な意味がありますが、この場合は「・・・風味」という意味。
iは男性名詞の複数形につく冠詞ですね。

■pistacchiは簡単。
ピスタチオ。

そして料理名は、
「詰め物入りズッキーニ、ピスタチオ風味」

辞書で調べる必要があるのはripieneぐらいですね。
ripienoは頻繁に出てくる言葉です。


次の
Ingredienti: per 4
Tempo: circa 30'

も、基本中の基本。

Ingredienti: per 6
「材料:6人分」
Tempo: circa 30'
「時間:約30分」

材料が6皿分とか6個分、という場合は、6の後にporzioniやpezziなどの言葉がつきます。
何もなければ、たいてい「・人分」という意味です。

30'は30分、30"だったら30秒。


材料も難しい単語はないですよね。
強いてあげるなら、
■amaretti secchi
でしょうか。
イタリアでは、amarettiと言えば、たいていはビスコッティのこと。
amaretti secchiも、辛口のアマレットリキュールという意味ではありません。
まあ、4 amaretti と書いてある時点で分かりますよね。

アマレッティは、アーモンドの粉、杏仁の粉、砂糖、卵白がベースのビスコッティ。
硬い“セッコ”と柔らかい“モルビド”、そしてパールシュガーを散らしたタイプの3種類があります。

アマレッティ・セッキ

その他の、
■una cipolla(玉ねぎ1個)
■grana grattugiato(おろしたグラナ・パダーノ)
■burro(バター)
■sale、pepe(塩、こしょう)
は基本中の基本。


次は調理方法です。
Spuntate, lessate le zucchine al dente, poi tagliate ognuna in 3 tronchetti e svuotateli.


質問:上の文章に出てくる動詞はどれですか?
答え:Spuntate、lessate、tagliate、svuotate

これらは全部2人称複数形ですね。
「みなさん・・・をしてください」という訳です。
本によっては、原形でspuntare, lessare, tagliare・・・としているものもあります。
こちらは「・・・をします」で、少し硬い文語表現的ですね。
どちらも、意味は同じです。
「・・・をしてください」と訳すのは不自然なので、ここでは「・・・する」としましょうか。

■spuntate(spuntare)は「端を切り落とす」という意味。
ズッキーニの調理の場合には必ずと言ってよいほど登場する単語です。

■lessate(lessare)は「ゆでる」。

■tagliate(tagliare)は「切る」。

■svuotate(svuotare)は「くりぬく、中身を空ける」。

つまり、「端を切り落とし、ゆでて、切って、くりぬく」です。


質問:何を切ってゆでてくりぬくんですか?
答え:le zucchine

そもそも、これを間違えると料理が成り立ちませんねー。

spuntateの後にle zucchineがあれば分かりやすいのですが、省略されています。

lessateの後にはle zucchineがありますね。
■その後のal denteは説明要らないですね。
パスタだけでなく、野菜にもアルデンテという言葉は使います。

■poiは「次に、それから」。
つまり「ゆでた後に切る」ということですね。
短い単語でも、意外と重要。

■ognuna(ognuno)は「それぞれ」。
■tagliate in 3は「3つに切る」。
■tronchetti(tronchetto)は、troncoに「小さな」という意味のettoがついた言葉。
troncoは「幹、丸太、切り株」。
直訳すれば、「ズッキーニを3つの小さな幹状に切る」。
つまり「ズッキーニを3つに切る」ということですね。
細長いものをぶつ切りにする時、「トロンケッティに切る」という表現をします。

質問:結局ズッキーニは全部で何個?
答え:12個

おまけ
丸太切り競争(taglio tronchetto)


これでズッキーニの下ごしらえができました。
続きは次回に。



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関連誌;『ラ・クチーナ・イタリアーナ』2007年2月号
“ZUCCHINE RIPIENE AI PISTACCHI”はp.62に載っています。

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2010年2月5日金曜日

クロマグロの行方

今日はマグロの話。

もうすぐ配本の『ガンベロ・ロッソ』の記事、“マグロのオイル漬けベスト10”を訳していたら、マグロに関するニュースが入ってきました。

「フランスが、大西洋と地中海で捕獲されるクロマグロの国際取引禁止を支持する方針を発表」

ことの発端は、モナコが、クロマグロは絶滅の恐れがある、としてワシントン条約の対象とするように決議案を提出したこと。
禁漁にするかどうかは、3月のワシントン条約締結国会議で、投票によって決まります。
しかし、実際にマグロ漁を行っているフランスのこの決定は、影響力が大きそうですね。

イタリアもマグロ漁をしている国ですが、フランスより前に支持を発表しています。






このブログでも、イタリアのマグロの話をするたびに、水揚げされるマグロの大部分は日本に行く、という話をしてきました。
最近のクロマグロの激減は、日本人がマグロを捕り過ぎるせいだ、という声も相変わらずよく聞きます。
地中海や大西洋産のクロマグロは姿を消す、という覚悟がそろそろ必要なようですね。


普段はそれほど食べたいと思わないものでも、消えてしまうかもしれないとなると、最後に一口食べてその味を記憶しておきたい、などと思うもの。
イタリアには、クロマグロをオイル漬けにした缶詰やびん詰があります。
これなら、生のクロマグロが姿を消した後もしばらくは出回っているかも・・・と一瞬思ったのですが、よく考えてみれば、すでにオイル漬けも、生産量がごくわずかな貴重品でした!



イタリアのクロマグロのオイル漬けは、いわゆるツナ缶とは違うものです。
下の動画は、サルデーニャのカルロフォルテの伝統的なクロマグロのオイル漬け作り。
蒸したマグロを缶に詰めてオリーブオイルで覆い、塩を加えて密閉します。
これを殺菌後、3ヶ月寝かせます。






うーん、あまり美味しそうに見えないのですが、味はどうなんでしょうねえ。

『ガンベロ・ロッソ』の“マグロのオイル漬けベスト10”で1位に選ばれたのは、シチリアのアンティカ・トンナーラ・ディ・ファヴィニャーナというメーカー。
マッタンツァで有名なマグロ漁の島、ファヴィニャーナにあります。
hpはこちら

地中海産クロマグロのオイル漬けは、450gで14.50ユーロ(約2,000円)。

以前はマッタンツァのクロマグロという製品もあったのですが、今は無いようです。

イタリア語でクロマグロは“トンノ・ロッソ”。
クロマグロ製品を買う時は、Tonno rosso、または学名のThunnus thynnusという表示を要確認。
または、英語でクロマグロという意味のBluefinという表示のものもあります。

こちらのおバカなCMは、サルダネッリというカラプリアのメーカー。
このメーカーもクロマグロのオイル漬けを作っていて、ガンベロ・ロッソのランキングでは8位。
クロマグロがなくなるかもという危機感、まったくなしですねー。



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関連誌;『ガンベロ・ロッソ』2008年5月号

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2010年2月1日月曜日

イタリアンな広告

今日はイタリアの広告の話。

久々に見つけましたよー。
奥様向け、フェロモン広告!

イタリアの料理雑誌は、日本のものと比べてかなりお堅い内容です。
でも時々、料理の写真の間にドキッとするようなセクシー系広告が混ざっているんですねー。
しかも、女性をターゲットにしているせいか、無駄なまでの超イケメンが、お色気(?)ムンムンで迫ってくるんです。
さすがは美しいもの大好きなラテン系民族!


今回見つけた(釣られた?)のは、これ!





これ、まずイケメンに目が行きますよね。
うっとりと目を閉じるいい男を鑑賞した後で、さて、これは何の宣伝?
そして右のほうに目をやると・・・。
チーズ・・・。
いい男とチーズの関係がイマイチ分からなくて、もう一度イケメンを見る・・・。
ここでイケメンが、肩の上にまな板をのせるという不自然な格好をしていることにはっと気づく。
あれっ、ひょっとしてバイオリンを弾いてる?
いや違う。
肩の上でチーズを切ってる・・・。

って、これ、笑うとこだったの?
なんでチーズを売るのに、この設定?


イケメンがコメディアンに見えてきたところで、一番上の影が薄い宣伝文句を読んでみると・・・

「モンタジオチーズとマニアーゴの高級ナイフ」
「完璧な協調」


・・・・・。

なんと、チーズとナイフのコラボ広告!
いやー一本取られました。
この強引な設定に、そんな意味があったなんて。

写真の下にあった細かい文句を読んでみると、伝統と芸術の文字が・・・。
大真面目だったんですね。


こちらがモンタジオとマニアーゴのナイフのセット。

よーく見ると、パッケージにこの写真が
イタリアの奥様たちは、これを持って歩いても恥ずかしくないのか!


ご参考までに、こちらはモンタジオ管理組合のhp。
そしてこちらはマニアーゴナイフ製造業組合のhp。

どちらもフリウリにあります。
マニアーゴは刃物産業の町。



おまけ。
前のブログで紹介した初代フォロモン広告。
ツナの広告なんですよ、これが。






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