イタリア料理ほんやく三昧: 1月 2010

2010年1月29日金曜日

リジ・エ・ビジ

今日はヴェネチア料理の話。
『ヴィエ・デル・グスト』の解説です。

ヴェネチアの名物プリーモ・ピアットと言えば、イカ墨のリゾット。
イカ墨の“スパゲッティ”ではなく、“リゾット”。
ヴェネチアならリゾットです。

中世、米はとても高価なものでした。
スパイスと一緒に香料商人が扱う品物で、粉にして薬として、あるいはスープにとろみをつけるなどのために使われていたそうです。
海洋共和国として貿易で富を築いたヴェネチアなら、得意分野の食材ですね。

16世紀になると、北イタリアに米の栽培が広まります。
北部は米、中部と南部はパスタ、というイタリアの構図の出来上がりです。
ヴェネチアにもヴェローナなどで作られた米が入るようになり、16世紀には米はヴェネチア料理の主役の食材になります。
ヴェネチアでプリーモ・ピアットと言えば、米かポレンタでした。



イカ墨のリゾットの他にも、地元以外でもよく知られているリゾットがあります。
リジ・エ・ビジです。
グリーンピースのリゾットですね。

この料理、グリーンピースご飯だと思ってしまうと、今ひとつレストランで注文する気にならないのですが、なんでもヴェネチアの市民的料理なんだそうですよ。
ヴェネチアの守護聖人サン・マルコの祝日(4月25日)には、街中でリジ・エ・ビジを食べるんだとか。
元々は、ヴェネチアの初物のグリーンピースをまず大公が味わって、それから下々が食べたようですね。
その日はみんなが食べるからヴェネチアのグリーンピースだけでは足りなくて、早生のグリーンピースができるリグーリアからわざわざ取り寄せて作ったのだそうです。



下の動画は2009年のサン・マルコの祝日のサン・マルコ広場。






ちなみにヴェネチアでは、同じ4月25日は「つぼみの日」でもあります。
男性が好きな女性にバラのつぼみを1輪贈るんだそうで。
イタリアン(キザ)な伝統だあ。



リジ・エ・ビジは、厳密に言うとリゾットとは違います。
伝統的なリチェッタでは、米は炒めません。
でも、これ以外にも様々なバリエーションがある料理です。


下の動画のリジ・エ・ビジは、ヴェローナ料理として紹介されています。
正確に言うなら、リジ・エ・ビジは“ヴェネト料理”ですね。





この動画のリジ・エ・ビジは、
まず生のグリーンピースをゆでて氷水に取ります。
そして皮をむき、皮とグリーンピース少々を撹拌してピューレにします。
リゾットに粒のグリーンピースとピューレを加えてマンテカーレ。
イタリアの米料理は水分の残し具合ととろみの強さによって様々なバリエーションがありますが、この動画の料理は一般的なリゾットの状態に仕上げていますね。
子羊肉がトッピングされて、見栄えもボリュームもレストランの一品。



『LA CUCINA VENEZIANA』(Marcello Brusegan著、Newton Compton出版)には、伝統的なリチェッタとシェフのリチェッタの2点が収録されています。
まずは伝統的なリチェッタをどうぞ。

リジ・エ・ビジ Risi e bisi(Riso con i piselli)

材料/6人分
 米(ヴィアローネ)・・400g
 グリーンピース・・1.2㎏
 パンチェッタ・・60g
 玉ねぎ・・1個
 プレッツェーモロのみじん切り・・大さじ2
 ブロード・ディ・カルネ・・1.5リットル
 おろしたチーズ・・大さじ4
 塩、こしょう

・グリーンピースをさやから出して洗い、パンチェッタ、玉ねぎ、プレッツェーモロのみじん切りと一緒にソッフリットにする。レードル2杯のブロードと塩を加えて弱火で煮る。
・これに残りのブロードをかけて沸騰させ、米を加えてかき混ぜながら煮る。
・火から下ろす少し前にチーズとこしょうを加える。数分休ませてからサービスする。

グリーンピースのさやをゆでて薄緑色のゆで汁を取り、これをブロード・ディ・カルネに加えると色のきれいなリジ・エ・ビジができる。



次はBistrot de Veniseのシェフ、アントニオ・ブーフィ氏のリチェッタ。
店のhpはこちら

リジ・コン・イ・ビジ Risi con i bisi
材料/6人分
 米(ヴィアローネ・ナーノ)・・6カップ
 グアンチャーレ・・100g
 生のグリーンピース・・500g
 白玉ねぎ・・1個
 バジリコ・数枚
 グリーンピースのさやを加えて取った野菜のブロード
 黒こしょう
 オリーブオイル
 フレッシュチーズ

・玉ねぎの薄切りとバジリコを油でじっくり炒め、グリーンピース300gを加える。ブロードで覆って煮てミキサーにかけ、塩味を調える。
・グアンチャーレを少量の油で炒め、米を加えて軽く炒める。ブロードをかけ、ブロードを足してかき混ぜながらリゾットの要領で煮る。最後はグリーンピースのピューレと残りのグリーンピースも加える。厳密にはリゾットではないので煮汁をやや多めに残して仕上げる。
・仕上げにたっぷりのこしょう、オイル、おろしたチーズでマンテカーレする。



こちらの動画では、Bistro de Veniseとアントニオシェフのリジ・エ・ビジが紹介されています。
29分と長いです。
リジ・エ・ビジを作るのは04:50~07:50。



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関連誌;『ヴィエ・デル・グスト』2008年4月号
“リジ・エ・ビジ”の記事の解説は「総合解説」'07&'08年4月号、P.31に載っています。

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2010年1月25日月曜日

モーディカのチョコレート、その3

モーディカのチョコレートには、様々なフレーバーがついています。
管理組合のサイトによると、元々はバニラ味とシナモン味だったそうです。
次に唐辛子味が加わり、さらにコーヒー、オレンジ、レモン、柑橘系ミックス、アニス、キャロブ(イナゴ豆)、ヘーゼルナッツ味などが作られるようになりました。
プレーンタイプも後からできたようです。


前回紹介しましたが、モーディカのチョコレートの代表的な造り手は、ボナイユート(店のhpはこちら)。
スローフード出版の本、『RICETTE DI OSTERIE E GENTI DI SICILIA』には、モーディカのチョコレートを使ったボナイユートのドルチェのリチェッタが2点紹介されています。
今回はそれをご紹介。


チョコレートのビアンコマンジャーレ Biancomangiare al cioccolato

材料/6人分
 マジパン・・200g
 砂糖・・100g
 小麦澱粉・・80g
 バニラかシナモン味のモーディカのチョコレート・・50g

・マジパンを水1リットルに溶かしてアーモンドミルクを作る。
・チョコレートを湯煎にかけて溶かす。
・アーモンドミルクに溶かしたチョコレートと砂糖を加え、小麦澱粉でとろみをつける。
・これを弱火にかけ、沸騰しだしてから5分煮る。
・型に入れて冷蔵庫で固める。

シチリアの伝統的なアーモンドのビアンコマンジャーレを、ボナイユートの経営者フランコ・ルータ氏がアレンジした一品。


ちなみに、シチリアの伝統的なピアンコマンジャーレは、砂糖と澱粉を加えた湯に、刻んだシチリア産アーモンドを浸し、それを絞りながら漉して取ったアーモンドミルクを固めたもの。
牛乳は入りません。


エムパナティッギア 'Mpanatigghia
材料/6~8人分
生地
 00番の小麦粉・・350g
 ラードかバター・・120g
 卵黄・・5個
 重曹
詰め物
 牛ロース・・500g
 砂糖・・1㎏
 ココアパウダー・・100g
 モーディカのチョコレート・・100g
 トーストして刻んだアーモンド・・600g
 全卵・・4個
 卵白・・3個
 蜂蜜・・大さじ1
 クローブ、シナモン 

・牛肉を細かく挽き、小鍋に入れて弱火にかける。
・挽肉の水気が飛んだら鍋から出し、刻んだアーモンド、チョコレート、スパイス、詰め物の他の材料を加えてこねる。さらに卵白を加えて混ぜ、冷蔵庫で1日休ませる。
・パスタ・フロッラ(タルト生地)を作る。小麦粉、ラード、卵黄をこねる。水と重曹を加えながらこねて適度な堅さにし、数時間休ませる。
・生地を伸ばし、長さ12㎝の楕円形か円形に抜く。その上に詰め物を絞り出し、半分に折って閉じる。
・生地に小さな切り込みを1本入れ、220度のオーブンで20分焼く。

スペイン語の“empanada”(肉、チーズ、魚などの詰め物を生地で包んだパイ)が名前の語源。
“エンパナーダ”をシチリアなまりにして愛称風に語尾変化させると“エムパナティッギア”となる。
複数形は“エムパナティッギ'Mpanatigghi”。
モーディカの伝統的なドルチェ。




下の動画はボナイユートのエムパナティッギ作り。






なんでも、肉食を断つ四旬節の間にこっそり肉を食べることができるように、修道女たちが考え出した、という説もまことしやかに伝わっています。

モーディカに行ったらエムパナティッギオの味見もお忘れなく。



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2010年1月21日木曜日

モーディカのチョコレート、その2

モーディカは、シチリア南東部の“ヴァル・ディ・ノート”と呼ばれる地方にあります。
このヴァル・ディ・ノートは、シチリアに5つある世界遺産の1つです。
この地方の町々は、死者6万人以上という1693年の大地震の後、奇跡的なまでに見事に再興されたのだそうです。
後期バロック様式の美しい建築物や芸術が、この地方の特徴です。

そんなヴァル・ディ・ノートにあって、モーディカは、個性的なチョコレートの産地として知られています。
ただ、イタリアでも外国でも、このモーディカのチョコレート、実は知名度はそれほど高くないかも・・・。

その最大の理由は、おそらく生産量の少なさです。
2003年に管理組合ができましたが、所属するメーカーは約20軒。
1990年には、チョコレートを作っている店はわずか3軒だったそうです。

そしてもう一つの理由が、見た目の地味さ。
外見も味も、素朴で控えめ。
タオルミーナなどシチリア東部の観光地では大々的に売っていますが、インパクトは中程度。
でも、一度食べれば、人によっては大好きになるかも。



モーディカのチョコレート
photo by Monica Arellano-Ongpin



普通チョコレートは、カカオ豆からカカオバターを抽出したカカオマスに、砂糖やカカオバターを加えて作ります。
モーディカのチョコレートは、カカオバターを抽出しないカカオマスから作り、カカオマスにはカカオバターは加えません。

また、普通のチョコレートは約80度に熱してカカオバターを溶かしますが、モーディカのチョコレートは、砂糖を加える時もその他の作業も、すべて45度以下で行います。
そのため、砂糖の結晶は最後まで溶けずに残ります。
これが、モーディカのチョコレートのじゃりじゃりした独特な舌触りの理由です。
さらに、カカオの香りのエッセンスも飛ばずに残ります。


この製法は、スペインによってアメリカ大陸が発見された当時の、アステカの家庭で行われていたのと同じものなのだそうです。
当時、モーディカはスペインが支配していました。
また、今でこそモーディカはラグーザ県の一部ですが、13世紀から19世紀までは、独立した行政区の中心地でした。
独自の文化が形成される下地があったのですね。

モーディカにアステカ人の製法のチョコレートを広めたのは、1880年創業のボナイユートという店です。
ボナイユートは、元々スペインのバレンシア出身の一族で、トリノやスイスの流派のチョコレートではなく、アステカからスペイン経由で伝わった製法を選んだのでした。
1990年、モーディカでチョコレートを作っていたのはたった3軒。
ボナイユートと、その弟子たちの店でした。


下は、モーディカのチョコレートの製造過程の動画。
面白いエピソードが1つ。
第二次大戦が終わると、イタリアにもアメリカ兵はチョコレートを持ってやってきました。
「ギブ・ミー・チョコレート」ですよ。
ところがモーディカでは、兵隊が子供にチョコレートをあげようとすると、「持ってるもーん」とばかりにモーディカのチョコレートを見せびらかす、という仕打ち・・・。






モーディカのチョコレートの話、次回に続きます。



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2010年1月18日月曜日

モーディカのチョコレート、その1

今回はモーディカ(モディカ)のチョコレートの話。

クレアパッソで現在配本中の『ラ・クチーナ・イタリアーナ』で、シチリアを代表する有名シェフの一人、カルメーロ・キアラモンテ氏の料理が紹介されています。
彼は、カターニアの4つ星ホテル、カターネ・パレス・ホテルのレストラン、イル・クチニエーレのシェフ。
レストランのhpはこちら


下の動画は、ラグーザの古いドルチェ、“クトゥミエイ”の作り方を説明するシェフ。



乾いた羊のリコッタ100g、小麦粉40g、砂糖20g、卵白大さじ1(リコッタの状態を見て加える)を混ぜ、冷蔵庫で30分休ませてから揚げる。
皿に盛りつけたら温めた蜂蜜とヴィーノ・コットをたらして熱いうちにサービス。
外はカリッとして中はソフトなドルチェ。



彼は、シチリアのモーディカの出身。
シチリアの泥臭い伝統料理を骨太にアレンジした料理を作る人です。

『ラ・クチーナ・イタリアーナ』でリチェッタを披露している料理は、
「アーティチョークとブロッコリーのカポナータ、酔っ払い卵とモーディカのチョコレート添え」




カポナータは、千切りにして炒めたアーティチョーク、小角切りにして揚げたブロッコリー、にんじん、じゃがいも、刻んだオリーブ、ケッパーを、カラメッラーレした砂糖、ミント、赤ワインビネガー、塩でさっと炒めてから6時間なじませたもの。

酔っ払い卵はゆで卵の殻を部分的にむき、強い赤ワインに36時間漬けます。

そして仕上げに皿に散らすのが、モーディカのチョコレート。


今回取り上げるのは、このモーディカのチョコレートです。

カポナータに添えてもおかしくないチョコレート・・・。
いったいどんなチョコレートなのでしょうか。


モーディカのチョコレートは、普通のチョコレートとはかなり違います。

まず、外見はこんな感じ

色はチョコレート色ですが、中は細かい穴がたくさんあいています。
まるで軽石のようです。

口に含むと、そこそこ甘いけれど、ジャリジャリとした舌触り。
普通のチョコレートのような濃厚さはありません。
だから、なんとなくヘルシー。


モーディカのチョコレートの特徴は、
「低温製法」です。
「夏でも溶けない」というのがセールスポイントの1つ。

スペインがアステカ文明と出会ってヨーロッパに伝えたチョコレート。
モーディカのチョコレートは、その当時のままの製法で作られているのだそうです。
世界中でこの製法が今も残っているのは、ここだけなんだとか。


モーディカのチョコレートの話、次回に続きます。


町自体が古代の劇場のような形のモーディカ。
バロックの町です。







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2010年1月15日金曜日

ロマネスコのリチェッタ、その2

ブロッコロ・ロマネスコのリチェッタ、その2です。


丸ごと1個だと強烈なインパクトのあるロマネスコ。



ロマネスコ, photo by drhenkenstein


調理した途端に、とことん影か薄くなる・・・。

付け合わせ
エビ入りサラダ
カラメリゼ
グラタン
パスタ
スープ
お弁当


ロマネスコの形が珍しいのは最初のうちだけ。
どんなに奇抜なものでも、毎日見ていればどうということなくなってしまいます。
ローマのレストランで、セルフサービスの前菜のロマネスコを物珍しげに取るのは観光客。
ジモティー(死語?)は、刻んで火を通して元の形が影も形もなくなったロマネスコ料理を注文する、という訳ですねー。
ローマではロマネスコのことをブロッコロと呼ぶことが多いので、ブロッコリー料理だと思ってロマネスコを食べている観光客もたくさんいるはず。


では、『La cucina romana e del Lazio』から、ロマネスコを使った伝統的なローマ料理をいくつかどうぞ。


ロマネスコのズッパ Zuppa di broccoli
・ロマネスコ1~2個を小房に分ける。
・田舎パンをスライスしてトーストし、にんにくをこすりつけてスープ皿に入れる。
・たっぷりの熱湯にロマネスコを入れ、蓋をせずに崩さないようにゆでる。
・パンにゆで汁少々をかけ、ゆでたロマネスコを加える。塩、こしょう少々で調味し、オリーブオイルをたっぷりかける。仕上げにレモン汁をかける。


ゆで汁の量は、スープと呼べるほど多くはなく、湿らす程度と言うには多い量です。
今ではあまり見かけなくなった伝統料理。


パスタ・エ・ブロッコリ Pasta e broccoli
6人分
 パスタ・・300g
 ゆでた豚皮・・少々
 生ハム(脂身も)・・50g
 ロマネスコ・・1個
 オリーブオイル、ラード
 にんにく・・1片
 トマトソース・・20g

・生ハムとにんにくを細かく刻んでラード(今はオリーブオイルが主流)でソッフリットにする。
・小さく切ったロマネスコを加えてなじませ、トマトソースか裏漉しトマト、塩、こしょう、豚皮とそのゆで汁を加える。
・ゆっくりゆで、ロマネスコが柔らかくなったら折ったスパゲッティとカンノリッキタイプのショートパスタを加える。
・パスタがアルデンテになったら火から下ろす。
・食べるときにおろしたペコリーノをたっぷり散らすのがローマ風。


ローマでは「パスタ・エ・チェーチ」が有名ですが、この「パスタ・エ・ブロッコリ」も美味しいらしいですよ。


サルシッチャとロマネスコのアーリオ・オーリオ・ペペロンチーノ Salsicce e broccoli all'aglio, olio e peperoncino
・ロマネスコを小房に分け、オリーブオイル、にんにく、唐辛子で5分炒める。
・フォークで穴をあけたサルシッチャを加え、白ワイン少々をかけながら10分焼く。
・さらに10分煮る。

現代版
・フライパンにラード大さじ2かオリーブオイルを熱し、穴をあけたサルシッチャ1㎏と水少々を入れて弱火で焼く。サルシッチャを取り出して保温する。
・同じフライパンにオリーブオイルとにんにくを入れて熱し、にんにくに色がついたら小房に分けたロマネスコを加える。水少々、塩、こしょうを加え、時々水を足しながら煮る。最後にワインを加える。
・サルシッチャを加えてしばらくなじませる。


現代版のリチェッタには唐辛子が入っていないですね。


ロマネスコのフリット Broccoli fritti con la pastella
・ロマネスコ(またはカリフラワー)1個を塩少々を加えた湯でアルデンテにゆでる。
・衣を作る;振るった小麦粉200g、全卵1個、卵黄1個を混ぜ、オリーブオイル大さじ2、塩、ワインで溶いた生イースト少々、水、白ワインを加えて2時間発酵させる。
・ロマネスコに衣をつけて油で揚げる。




こちらはもっと現代的なビール入り衣のフリット。








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2010年1月12日火曜日

ロマネスコのリチェッタ、その1

ブロッコロ・ロマネスコの話、その2です。
今日は料理の話。



アメリカの市場に並んだ(手前から)カリフラワー、ロマネスコ、ブロッコリー
フルサイズ
photo by beautifulcataya



ブロッコロ・ロマネスコはローマの名物野菜。
ロマネスコを使った伝統料理には、どんなものがありましたっけ。

・・・・・。

うーん。
意外と思い浮かばないものですねえ。
形のインパクトが強すぎるのか・・・。

では、ローマ料理の本にはどんなロマネスコ料理が載っているのでしょうか。
リヴィオ・ジャンナットーニの『La cucina romana e del Lazio』から、ブロッコロ・ロマネスコに関する部分をちょっとご紹介。


ブロッコリー、カリフラワー、キャベツ、ブロッコレッティはローマではお馴染みの野菜だが、混同されがちな野菜でもある。
ブロッコリーはミネストラ、キャベツはズッパなどに入れたりもするが、その本領が発揮されるのは、何と言ってもコントルノ(付け合わせ)だ。
キャベツや縮緬キャベツの大きな美しい葉。
カリフラワーやブロッコリーの見事にこんもりとした花序。
花序の先端が一つずつピラミッド型をしたブロッコロ・ロマネスコは、まるで巨大な自然の宝石のように見える。


イタリアのブロッコリーやブロッコレッティについては、前回簡単に紹介した通りです。
ブロッコレッティはこんな野菜

ジャンナットーニは、「あのアルトゥージもブロッコロ・ロマネスコに魅了された」と言って、そのリチェッタを紹介しています。
アルトゥージのリチェッタは・・・

ブロッコリ・ロマーニ Broccoli romani
(ロマネスコの)葉の硬い部分を取り除いてゆで、冷水に取る。
水気をよく切って粗く刻み、ラードを熱したフライパンに入れて塩、こしょうをする。
油がなじんだら甘口白ワインをかけ、水気がなくなるまでしんなり炒めて出来上がり。
これがおいしい


アルトゥージは、さらにこうも書いています。

このブロッコリーは、ゆでない“ア・クルードa crudo”が一番おいしい


普通、“ア・クルード”と言えば「生で」という意味です。
でも、「ロマネスコを生で食べるのか・・・」と早合点してはいけません。
このア・クルードは、「下ゆでしないで調理する」という意味なんですねー。
なんとも紛らわしいことに。

ジャンナットーニは、アーダ・ボーニの“ア・クルード”のリチェッタを紹介しています。

ブロッコリ・ア・クルード Broccoli a crudo
ローマの典型的なブロッコリー料理は、生ハムやソーセージと一緒に炒めたものではない。
“ア・クルード”だ。
とてもおいしい一品だが、誰にでも向くという訳ではない。
作り方は、
ブロッコリーを掃除し、柔らかい葉を数枚取っておく。
ブロッコリーの花序部分を小さめに切る。
茎は縦に十文字に切る。
葉と花序を水にさらしておく。
フライパンにラード少々を入れてにんにく2片のみじん切りを加え、色がつかないようにソッフリットにする。
ここにブロッコリーの葉を入れて塩、こしょうをし、しんなりしたらブロッコリーの残りの部分(水気をしっかり切る)を加える。
さっとなじませ、辛口ワイン1~2カップをかけて蓋をする。
時々崩さないようにかき混ぜながら弱火で煮る。
野菜料理として食べてもよいし、肉のボッリートやローストの付け合わせにしてもよい。


ジャンナットーニは、「この料理、確か昔は“アッフォガート”と呼ばれていたと思う。
赤ワインで煮ることもあった」
と書いています。


イタリアの人はブロッコリーをぐちゅぐちゅにゆでるのが好きですよねぇ。
この2つのロマネスコ料理も、あの特徴的な角がはっきりと残らないので、最終的にはロマネスコなんだかカリフラワーなんだか、よく分からない料理に仕上がるはずです。


下の動画はロマネスコを使ったスパゲッティなのですが、出来上がりだけ見ると、「どこがロマネスコ?」な一品です。
アサリとロマネスコのクリームのスパゲッティをどうぞ。






アサリをオリーブオイル、唐辛子、にんにく、プレッツェーモロの茎で熱し、開いたらすぐに取り出します。
ロマネスコは小さく切ってパスタの湯でゆで、取り出します。
次に湯にアサリの殻を入れてゆで、殻を取り出したらパスタを入れてゆでます。
ロマネスコはオリーブオイル、アンチョビー、にんにくのソッフリットに入れて炒め、オリーブオイルを加えながらハンディーミキサーでクリーム状に撹拌します。
アサリの汁にパスタとアサリを入れてなじませ、プレッツェーモロを散らします。
皿にロマネスコのクリームを敷き、その上にパスタを盛り付けて出来上がり。


ロマネスコの話、次回に続きます。



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2010年1月8日金曜日

ブロッコロ・ロマネスコ

年末に、近所のスーパーで、なんとローマ生まれの野菜を売っているのを見つけました。
しかも山積みで。

その野菜は、イタリア語では、broccolo romanesco。
ブロッコロ・ロマネスコ
「ローマのブロッコリー」という意味です。

日本ではロマネスコという名前で流通しているようですね。
店では、「“ロマネスク”、ブロッコリーとカリフラワーをかけ合わせた野菜」と書いて売っていました。
1個255円でした。



ロマネスコ, photo by xrrr


ローマのトラットリーアで初めてロマネスコを見た時は、その形が珍しくて、写真を撮ったっけ。
その時は、後に日本のスーパーに山積みされる日が来ようとは、想像もしませんでしたよー。
同じローマ生まれのプンタレッレより先にメジャーになっていたんですねえ。

でも、山積みの割には、今ひとつ売れていなかったような・・・。

多分、そのスーパーのたいていの客にとって、ロマネスコは初めて見る野菜だったはず。
こんなご時世じゃ、味も食べ方も分からないものを、簡単な説明だけではなかなか買ってもらえないだろうなあ。


この野菜、イタリア語では「ブロッコロ・ロマネスコ」ですが、「カーヴォルフィオーレ・ロマネスコ」という名前でも流通しています。
英語では「ローマン・カリフラワー」とも言います。

いったい全体、ブロッコリーの一種なんでしょうか?
それてもカリフラワー?

ゆでたものを目隠しして食べると、カリフラワーに近いですかね。

イタリアの料理辞典『GRANDE ENCICLOPEDIA ILLUSTRATA DELLA GASTRONOMIA』を見ると、ブロッコロ・ロマネスコはブロッコリーの欄に載っています。
正確には、「ブロッコロ」の欄と言うべきでしょうか。
つまり、日本でイメージするブロッコリーと、イタリアのブロッコリーとは、少々違うんですねー。


ブロッコリーは地中海原産と言われている野菜。
イタリアにはブロッコリーが何種類かありますが、大きく2つに分かれます。
一つは、“カーヴォロ・ブロッコロ・ラモーゾ”と呼ばれるタイプで、日本の一般的なブロッコリーによく似ています。

 カーヴォロ・ブロッコロ・ラモーゾ・カラブレーゼ


もう一つは、ラモーゾがつかないで、単に“カーヴォロ・ブロッコロ”と呼ばれるタイプ。
これがカリフラワーにそっくりで紛らわしいことこの上ないんです。

 カリフラワーにそっくりな白いカーヴォロ・ブロッコロ・ディ・ヴェローナ

 紫色のカーヴォロ・ブロッコロ・ヴィオレット・シチリアーノ

 そして緑色のカーヴォロ・ブロッコロ・ロマネスコ


下の動画に出てくる野菜は、ブロッコリーと呼んでいますが、カリフラワーにそっくり。
ということは、カーヴォロ・ブロコッロ・ディ・ヴェローナですね。






このように、素人目にはカリフラワーにしか見えないカーヴォロ・ブロッコロ。
では、カリフラワーとどこが違うかと言うと、ブロッコロは「芽が発達している」、「開花が複数回」という点だそうで。
そもそも、ブロッコリーの語源はラテン語で「芽」という意味の“broccus”。
カリフラワーのように見えて、実は微妙に違う野菜、なんですねえ。


そして、カーヴォロ・ブロッコロでも、ラモーゾとそうじゃないのはどこが違うかと言えば、ラモーゾは脇芽が次々に出る。
この脇芽は「ブロッコレッティ」と言って、茎ブロッコリーに少し似ています。
このタイプは、柔らかい部分なら茎も葉も全部食べることができます。

そうじゃないタイプは、カリフラワーと同じでこんもりとした花序の部分を食べます。



さて、ブロッコロ・ロマネスコですが、このブロッコロは、ローマ地方で昔から栽培されていた野菜です。
「1834年に書かれたソネットにブロッコロ・ロマネスコの名前が出てくる」というエピソードが知られています。
ローマでは、ブロッコリーと言えばこのロマネスコのことだったので、昔はただ「ブロッコロ」と呼ばれていました。
だから、ローマの古い料理書に出てくるブロッコリー料理は、このロマネスコの料理と考えるのが無難です。



次回はブロッコロ・ロマネスコの料理についてです。



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2010年1月4日月曜日

ハインツ・ベックのイベリコ豚料理

新年、明けましておめでとうございます。
今年もイタリアの料理関連の情報をバンバン日本語に翻訳してお届けしますよ~。

今年の最初の話は去年の続き(汗)。
『クチーナ・エ・ヴィーニ』の記事の解説です。

2010年版ミシュラン・イタリアの三つ星店は6軒。
その中の1つ、「ラ・ペルゴラ」は、ローマの5つ星ホテル、ローマ・カヴァリエーリの中にあるレストラン。
1994年から総料理長を務めているのは、ハインツ・ベック氏です。
1963年生まれの46歳。
ドイツ人です。

子供の頃は芸術に興味があったという彼ですが、兄の影響で料理人の道を志し、17歳でドイツのホテル学校に入ります。
そして20歳で調理人となりました。
23歳でホテルの一つ星レストランのシェフとなり、26歳で三つ星レストランに入ってすぐにスーシェフとなります。
28歳でドイツの有名シェフ、ハインツ・ウインクラーのスーシェフとなったことを契機に、自らのスタイルを確立。

ローマのラ・ペルゴラにやって来たのは31歳の時。
それ以前の彼はフランスの影響を強く受けた料理を作っていましたが、イタリアで地中海の味と出会ってからは、もっとモダンで軽い料理を作るようになります。
33歳でイタリアのソムリエスクールに通いだし、35歳でヨーロッパのプロのソムリエの資格を取得。
38歳でイタリア人女性と結婚。
そして現在までに、ミシュランの星や様々な賞を山のように受賞しています。

とにかくまぶしいほどに輝かしい経歴の持ち主です。
15年のイタリア滞在で、外国人でありながら今やイタリアを代表するシェフの1人となってしまいました。

ハインツ・ベックシェフのhp


ラ・ペルゴラとシェフ






ローマで、ドイツ人が、世界各国の人を相手に、インターナショナル料理ではなくイタリア料理を作って、それがイタリアの最高峰と認められるとは、まったくすごいことですねえ。

彼の料理はとても知的で、ローマの伝統と新しさを程よくミックスしています。
食通向きの高度な技を駆使しながらも、なおかつ、誰にでも分かるような単純明快さも持っています。
定番を理解したうえで洗練されたアレンジをするとこうなる、というお手本のような料理です。


『クチーナ・エ・ヴィーニ』の記事、「三つ星の料理」の中でも、彼の料理は光っています。
特に美味しそうなのが、イタリア料理のエキスパートで、豚肉料理の国民的DNAを持つドイツ人が子豚料理を作るとこうなる!という1品。

イベリコ子豚の“セクレト”のコンフィ、じゃがいもの香草入りピューレとオリーブのソース添え

イベリコ子豚のセクレトとは、霜降り肉のこと。
こんな肉

こちらのサイトによると、頬の部分と腕の付け根から脇腹にかけての部分のようですね。

この霜降り肉を、リコリスパウダー、フェンネルシード、塩、こしょうで調味して、溶かしたグースファットと一緒に真空パック。
そして60度のコンベクションオーブンで24時間加熱します。
袋から出したらグリルパンで焼き、スライスして盛り付け。

グースファットで24時間コンフィにしたイベリコの霜降り肉って、いったいどんな味なんでしょうねえ。
グースファットは付け合わせのじゃがいもに使うのかと思ったら、豚肉に使うなんて、さすがにタダものじゃないですね、このドイツ人。

ソースは、フォン・ド・ヴォーに刻んだタッジャスカオリーブを入れて10分煮て、これをシノワで漉して、有塩バターを加えてホイップします。

付け合わせのじゃがいものピューレはオリーブオイル、エストラゴン、セルフィーユ入り。


もう1品、
帆立貝のカルパッチョ、黒トウモロコシのブロードで煮たアマランサス添え

この料理の注目ポイントは、アマランサス。
一見、海苔のように見える黒いものと、帆立貝の上に散らされている薄茶色の粒状のもの。
これ、両方ともアマランサスです。

これが元のアマランサス。

それを黒トウモロコシのゆで汁で煮ると、黒アマランサスになる!
オリーブオイルで揚げると“アマランサスのポップコーン”になる!

どんな味なんでしょうねえ。
さらに、こんなアマランサスと一緒に食べる帆立貝のカルパッチョって、どんな味なんでしょう。
帆立貝は、しょうが汁、ライム、オリーブオイル、塩をホイップしたソースで軽くマリネしてあります。


イタリアの三つ星、いかがなもんでしょうか。



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関連誌;『クチーナ・エ・ヴィーニ』2008年4月号
「三つ星の料理」のリチェッタは、「総合解説」'07&'08年4月号に載っています。

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