イタリア料理ほんやく三昧: 鶏肉のマレンゴ風

2010年7月26日月曜日

鶏肉のマレンゴ風

今日はナポレオンの話。
『ラ・クチーナ・イタリアーナ』の記事の解説です。

イタリア料理の世界でナポレオンと言えば、ポッロ・アッラ・マレンゴ Pollo alla Marengo、鶏肉のマレンゴ風

こんな料理


マレンゴの戦いでナポレオンが勝利した時に食べたと言われる料理ですね。

マレンゴとは、ピエモンテ州南部の、アレッサンドリアのすぐ隣にある町です。
1800年6月14日、ここでナポレオン率いるフランス軍とオーストリア軍が戦いました。

戦いは朝に始まり、劣勢だった戦況をひっくり返してナポレオン軍が勝利したのは夜。
ナポレオンの料理人でスイス人のデュナンDunandは、戦いに勝利したナポレオンのために料理を作ろうとしました。
ところが、戦いの混乱で軍の食糧が失われてしまったのです。
そこでデュナンは、地元の農家から食糧を調達して(アルトゥーシは「盗んだ」と書いています)料理を作りました。
それがこの鶏肉料理。
それ以来、鶏肉のマレンゴ風はナポレオンのお気に入りの料理となり、勝利の後にはよく食べていたのだそうです。



ダヴィド作『サン・ベルナール峠を超えるナポレオン』
Originally uploaded by dalbera


有名なこの肖像画は、マレンゴの戦いのひと月前に、3万の軍を率いてスイスとイタリアの国境を超えてイタリアに入るナポレオンの姿を描いたもの。
この時に大量のワイン、チーズ、肉などを徴用したそうですが、わずか1ヶ月後には失っていたんですねえ。



『ラ・クチーナ・イタリアーナ』のグルメ紀行で紹介しているエルバ島は、ナポレオンが追放された島として有名。
彼がエルバ島にやってきたのは1814年5月。
マレンゴの戦いから14年後のことでした。

エルバ島はシチリア、サルデーニャに次いでイタリアで3番目に大きな島で、トスカーナ州に属しています。

ナポレオンがエルバ島にいたのはわずか10ヶ月でしたが、この間彼は囚人として隔離されていたのではなく、領主として島を統治しました。
島民は賛美の歌で元皇帝を迎え、ナポレオンも島のインフラ整備に取り組んだそうです。


「10分、それがナポレオンが食事にかけた時間だ」

そう記事には書かれています。
決してグルメではなく、食べることに興味を抱かなかったナポレオン。
そんな彼が気に入ったマレンゴ風。
ナポレオンなりのげんかつぎだったのでしょうか。


鶏肉のマレンゴ風のリチェッタには様々なバージョンがあるようですが、ザリガニや目玉焼きは省略することが多いようです。
ザリガニと目玉焼きは見た目にインパクトがあるためにそちらに気を奪われがちですが、この料理はやはり鶏肉料理。
鶏が主役です。

1800年当時のマレンゴは、各国の軍隊に蹂躙されてひどい食糧難だったという記録が残っているそうです。
だから、ナポレオンの料理人が手に入れた食材も、決して贅沢なものではなかったはずです。
鶏肉のマレンゴ風も、余りにも質素な料理だったので、後にザリガニや目玉焼きが付け加えられた、とも言われています。
ゴージャス版のリチェッタは、エスコフィエのものが知られています。


アルトゥージもリチェッタを書いています。
それによると・・・

・若い鶏1羽は首と足を切り落として関節でぶつ切りにする。
・これをバター30gと油大さじ1で焼き、塩、こしょう、ナツメグで調味する。
・両側に焼き色が付いたら余分な油を取り除き、小麦粉大さじ1を散らして白ワイン100mlをかける。
・さらにブロードをかけ、蓋をして煮る。
・火から下ろす直前にプレッツェーモロのみじん切りを散らす。
・器に盛り付けたらレモン汁をかける。


アンナ・ゴゼッティ・デッラ・サルダの『ラ・クチーナ・レジョナーレ』では、
トマト、マッシュルーム、卵、ザリガニ、にんにく、バジリコ、食パンが加わります。

・若鶏1羽を均一に切り分けて小麦粉をまぶす。
・フライパンに油1カップ弱を熱し、鶏肉を固い部位(まずもも)から入れる。
・塩、こしょうをし、裏返しながら弱めの火で焼いていく。
・胸肉は焼き色が付いたら取り出し、残りはさらに火を通す。
・半分火が通ったら油の半量を別のフライパンに移し、トマト500g(皮をむいて刻む)、潰したにんにく2かけ、束ねたバジリコ、白ワイン1カップを加える。
・蓋をして15分煮たら胸肉を戻してスライスしたマッシュルームを加え、蓋をして10分煮る。
・白ワインに塩少々を加えて沸騰させ、ザリガニ4尾を入れて5分ゆでる。
・フライパンに取り出した油でパン4枚を揚げ、同じ油で卵4個も白身を黄身に寄せながら揚げる。
・鶏肉にレモン汁をかけてプレッツェーモロのみじん切りを散らし、混ぜて塩味を調える。
・鶏肉を皿の中央に盛り付けてマッシュルームを添え、全体に煮汁をかける。横にパンのクロストーニを置いて卵をのせ、ザリガニも添える。




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関連誌;『ラ・クチーナ・イタリアーナ』2007年7月号
「エルバ島」の解説は、総合解説'07&'08年7月号に載っています。

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2 件のコメント:

italiamama さんのコメント...

私もアルトゥージのレシピを参考にして「鶏のマレンゴ風」作ったことがあります。一昨年ピエモンテ州を車で走っていた時、マレンゴ村を通りました。何の変哲もない田舎でしたが、通り際に小さな案内板を発見。ここであの有名な戦いがあったのかと思いを馳せました。ナポレオンは流されたエルバ島でも、いろいろエピソードを残していて島民の間では英雄だったようでした。         イタリアママ

prezzemolo さんのコメント...

italiamamaさん
マレンゴ、何の変哲もない田舎でしたか。
まあそんなもんですよね。
でも、マレンゴもエルバ島も、歴史好きにはたまらない場所なんでしょうねえきっと。
マレンゴ風、アルトゥージのはかなりシンプルですね。
でも、ナポレオンが食べた料理には近いのかも。
そう思うと食べてみたいです。