2010年3月11日木曜日

クイリナーレ

今日はイタリアの大統領官邸の話。
『ラ・クチーナ・イタリアーナ』の解説です。

今回の『ラ・クチーナ・イタリアーナ』の記事、「大統領の晩餐会」は、かなり貴重な内容ですよ。
イタリアの大統領官邸での国賓を招いた晩餐会の裏舞台を、詳細にレポートしています。
滅多に聞けない話です。

現在のイタリアの大統領は、ジョルジョ・ナポリターノ。
冗談みたいですけど、やっぱりナポリ出身。

こんな方


大統領官邸はローマのクイリナーレの丘にあって、クイリナーレ宮殿と呼ばれています。
芸術品に囲まれた美術館のような建物です。

クリイナーレ宮殿


美しくてゴージャスな官邸ですねえ。
建物もいいんですが、最後に登場する騎馬隊、超カッコイイですねえ。
騎馬隊フェチにはたまりませんですなあ。
あの人たちはカラビニエーリ(軍警察)の一部隊で、大統領付きの騎馬憲兵、コラツィエーリです。


激しく横道にそれますが、ここでおまけの動画。
カラビニエーリのエリート、コラツィエーリの仕事っぷりなぞをどうぞ。






いやあ、皆さんプライドを持って仕事に臨んでいますねえ。
大統領付きの仕事と言うのは、それだけ誇りを感じられるものなんですね。

コラツィエーリだけでなく、カメリエーレもクオーコも、クイリナーレ宮ではみんなプライドを持って仕事をしています。

公式晩餐会では、テーブルに並べるセンタープレートの間隔が68.5㎝と決められているそうです。
クイリナーレ宮のカメリエーレは、白い手袋をした手にメジャーを持って、きっちり68.5㎝かどうか1つずつ計ります。
背筋の伸びたその姿は、昨今の日本の執事ブームなんか鼻で笑いたくなるようなプロフェッショナルぶり。

仕事の前に給仕長がスタッフにかける言葉もまたカッコイイ!

「(給仕は)素早く、ただしゆっくりした印象を与えるように。
口は開かない。
話をしないで理解し、かつ理解してもらうのが皆さんの仕事です!」


見せ場がたくさんあるカメリエーレさんと比べて、コックさんたちはちょっと地味な仕事をしなくてはなりません。
なにしろ、公式晩餐会の時間は40分で、料理はたった3品。
しかも、余計な演出は一切なしの、シンプルな料理であることが絶対条件。

確かに、記事で紹介されている料理は、どれもとてもベーシックなもの。

1993年にクイリナーレ宮を訪れた日本の天皇のための晩餐会では、デザートにラズベリーのヴァシュランが出されました。
このヴァシュラン、一目見てすぐに思いましたよー。
日の丸をイメージしてる!

白い焼きメレンゲのベースに、白いバニラのジェラートとピンクのラズベリーのジェラートを重ねて、表面に白いホイップクリームを房状に絞り出し、その上に赤いラズベーを1粒ずつのせたもの。
赤と白の2色が印象的です。

この他、フランスのシラク前大統領にはラム酒のシロップをかけたババ(やっぱりラム酒は欠かせないんですね)、イギリスのエリザベス女王には子牛の骨付きロースト(お年の割には頑丈な胃袋)など、軽く突っ込みたくなるメニューも。

大統領官邸の料理は、シンプルなだけに王道のテクニックが求められる料理ばかりでした。



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関連誌;『ラ・クチーナ・イタリアーナ』2007年5月号
「大統領の晩餐会」の日本語解説と「天皇のためのラズベリーのヴァシュラン」のリチェッタは、「総合解説」'07&'08年5月号に載っています。

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5 件のコメント:

くるり さんのコメント...

給仕長のことば、すごい染み渡りますね−。でも0.5って、整数にしてちょ、といいたい(笑)。

そういえば前に、『エリゼ宮の食卓』という本を読みましたが、フランスの食を外交の舞台にしてしまう根性と深慮遠謀に驚きました。もちろん書き手の力もあるでしょうが、げにおそろしやフランスの外交力と思い、ひるがえって、自国の文化をそこまで利用する力がわが国にあるのだろうかと考えさせられてしまいましたよ。

P.S.そいうえばアルジョラスは白も好きなんですがなかなか手に入らないですよね。

prezzemolo さんのコメント...

くるりさん
そうなんです。
68.5㎝なんです。
それを背をかがめもせずに計るんですよ。
クールです(笑)。
『エリゼ宮の食卓』は未読なんですが、イタリアでも、フランスほどじゃないにしてもメニューやワインの選択はすごく気を使ってるみたいです。
シラクさんには泡のないビールを用意したんだとか。

アルジョラス、こういう記事を訳すと、無性に飲みたくなります。
最近お目にかかってませんが・・・。

vittorio さんのコメント...

私の大好物な話です。以前、主催のジスカールデスタン大統領を記念したドルチェ、大統領のケーキ(ガトー・モンモラシー)というドルチェを出していました。

お客様からご要望が多かったのですが、二度を同じ物は作らないとかカッコつけていましたが、本当は出来ないんです(笑)、

オリジナルのリチェッタ間違って捨ててしまいました、よくできたリチェッタだったんですが、

未だに大統領のケーキと上海蟹のリゾットは言われます、上海蟹は生きたままの中国からの輸入が禁止になってしまいました、

今度はヴァシュランですね、そういえば巨匠のパーティーの時も一番人気だったんです、飲んだあとの、カリカリスッパ冷たい、のはこたえられないのでしょう。

イタリアで一回でだけお偉いさんパティーの裏方を経験しました、楕円の銀のプタッターにテリーヌを盛るだけで一直線にタコ糸をはりそれにそって盛り込むように支持されました。

vittorio さんのコメント...

私の大好物な話です。以前、主催のジスカールデスタン大統領を記念したドルチェ、大統領のケーキ(ガトー・モンモラシー)というドルチェを出していました。

お客様からご要望が多かったのですが、二度を同じ物は作らないとかカッコつけていましたが、本当は出来ないんです(笑)、

オリジナルのリチェッタ間違って捨ててしまいました、よくできたリチェッタだったんですが、

未だに大統領のケーキと上海蟹のリゾットは言われます、上海蟹は生きたままの中国からの輸入が禁止になってしまいました、

今度はヴァシュランですね、そういえば巨匠のパーティーの時も一番人気だったんです、飲んだあとの、カリカリスッパ冷たい、のはこたえられないのでしょう。

イタリアで一回でだけお偉いさんパティーの裏方を経験しました、楕円の銀のプタッターにテリーヌを盛るだけで一直線にタコ糸をはりそれにそって盛り込むように支持されました。

prezzemolo さんのコメント...

Vittorioさん
大統領のケーキも上海蟹のリゾットも幻になっちゃいましたか。
そうなると余計に食べてみたくなる!

クイリナーレ宮の料理は、質実剛健で超地味です。
でも、きっとミスは許されないんでしょうね。
厨房は広くてなかなか仕事しやすそうでした。

なるほど、お偉いさんのパーティー料理に求められているのは、タコ糸にそって盛り付けるような完璧さなんですねえ。

マリア・ルイジアの小さな街、パルマのバターとグラナの娘、アノリーニ。本物は牛と去勢鶏のブロードでゆでます。

昨日の最後にサラっと登場したアノリーニですが、このパスタ、(CIR12月号P.5)にもリチェッタが載っていました。クルルジョネスの次の料理です。花の形の可愛い詰め物入りパスタ、なんていうのがこのパスタの印象ですが、イタリア人は、こんな風に思ってるんですね。 「マリア・ルイジアの小...