2010年3月23日火曜日

シェフのリチェッタを読む、その1

今日は「イタリア語のリチェッタを読む、中級編」です。

今回は、プロのシェフのリチェッタとはどんなものなのか、解読してみましょうか。
でも中級編なので、比較的簡単なやつです。

料理は『クチーナ・エ・ヴィーニ』の記事から選びました。
タオルミーナのラ・カピネーラというレストランのオーナーシェフ、ピエトロ・ダコスティーノ氏のリチェッタです。

シェフはタオルミーナ出身で、世界各地で活躍した後、2003年に生まれ故郷に戻って店を出しました。
ミシュランでは1つ星です。
店のhpはこちら

シチリア産クロマグロを始めとする魚料理が得意。
シチリアの食材をふんだんに使ったアルタ・クチーナを作る人です。

ラ・カピネーラのPV






訳す料理は、こちら。

Tartara di tonnina e gamberetto di nassa
  con corallo dello stesso e sale di Mothia


プロの料理は、タイトルがやたら長いのがお約束。
これを訳すだけで一苦労です。

でも実は、イタリアの高級レストランのメニューにはこんな調子の料理名がずらっと並んでいる訳で、そもそもこれを訳せないと、何を注文すればいいのか分からない、という事態になってしまいます。

さーて、これはどんな料理?

ちょっとヒント。
材料が多少違いますが、同じシェフが作ったこの一品によく似ています。
 ↓
tartara di tonno e cernia

“Tartara”が分かれば、謎はかなり解けます。

tartaraは「タルタル」。

つまり、この料理は、tonninaとgamberetto di nassaのタルタルです。
そこにcorallo dello stessoとsale di Mothiaがのっている、という訳です。
多少はイメージできたでしょうか。


では、tonninaとは、何でしょう。

実はここからが、このリチェッタが中級編な所なんです。
tonninaとは何か。
この答えを探せるか探せないかが、全ての分かれ目!


“tonnina”は辞書で引くと、
「1.マグロの背肉の塩漬け、2.マグロの一種」
などと書いてあります。

確かに、マグロの塩漬けのことをトンニーナと呼びます。
これは、マグロを2週間ほど塩水につけてからさっと干したものです。

でも、「辞書にも書いてあるからマグロの塩漬けかなあ」、と思ってはダメなんです!
中級編のリチェッタで、辞書の通りということは滅多にない!
そもそも、2週間塩に漬けたマグロでタルタルは不自然だし。

さらに、後から出てきますが、リチェッタの材料を見ると、「tonnina freschissima(新鮮なトンニーナ)」となっています。
辞書に書いてあっても、塩漬けとは違うようですよ。

では、マグロの一種?
確かに、地方によってはEuthynnus alletteratusという学名の魚をトンニーナと呼ぶことがあります。
これは、日本名はスマというサバ科の魚です。
実はクレアパッソの「総合解説」では、トンニーナをこの魚と紹介してしまいました。
スマは味がカツオに似ていると言うので、タルタルにしてもおかしくないと思ってしまったんですねえ。
でも、詰めが甘かったです。
反省しています。
大変失礼いたしました。

スマでもなかったんです。

では一体何か。

ヒントは、ラ・カピネーラのhpで紹介されている雑誌の記事の中にありました。

「Rassegna stampa」の「Stampa 2008」の中に、「tartara di tunnina di Favignana」という言葉を発見!
このリチェッタのtonninaとは、正確には、「ファヴィニャーナのトゥンニーナ」でした。

そこで「ファヴィニャーナのトゥンニーナ」というキーワードで調べた結果、分かりました。

これ、クロマグロの赤身のことでした。

ふう~。
ここまで調べるのはかなり大変だったんですが、文字にするとあまりにあっけない・・・。
まあ、そんなもんです(涙)。


tonninaの正体が分かったところで、材料と作り方の原文はこちら。


Ingredienti per 4 persone

g 250 di tonnina freschissima
g 150 di gamberetti di nassa freschissimi
g 25 di uova di gamberetti
Olio extravergine di oliva biancolilla
Cristalli di sale di Mothia

Per la guarnizione
g 15 di uova di salmone
4 rametti di menta
4 foglie di basilico rosso
4 steli di erba cipollina fioriti
Pepe di mulinello
Spezie in polvere (noce moscata, curry, zenzero, pepe di Sarawak)

Pulire bene la tonnina e i gamberetti, batterli separatamente al coltello ottenendo una dadolata non troppo piccola.
Condire sempre separati, con un filo d'olio a crudo e pochissimo sale di Mothia macinato al mulinello.
Mettere al centro di ogni piatto un anello cilindrico, riempirlo con un poco di tartara di tonnina e sovrapporre i gamberetti ben pressati.
Sfilare l'anello e sopra appoggiare alcune uova di salmone.
Guarnire la tartara con una macinata di pepe e le erbette aromatiche.
Con un cucchiaio disporre di lato una lacrima di uova di gamberetti emulsionata con un filo d'olio e colorare il bordo dei piatti con le spezie in polvere.




次回はこのリチェッタを解読していきます。



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関連誌;『クチーナ・エ・ヴィーニ』2008年5月号
ピエトロ・ダゴスティーノシェフのリチェッタは、「総合解説」'07&'08年5月号P.18に載っています。
トンニーナは「マグロの赤身」と訂正させていただきます。大変申し訳ございません。

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3 件のコメント:

vittorio さんのコメント...

地方や作る人によって呼びかたも違う場合がありますよね、

パン・オ・ショコラと言うショコラスティックにクロワッサン生地を巻いて焼き上げたものがありますよね、ボルドーの方ではショコラティーヌ言う呼び方なんですが、ニースの人達ほとんどその言葉は知らなかったんです、

中生ビールのことをディスタンゲと言っていたんですが、それも知らなかったんです、

トンニーナは知らなかったです、大変でしたねぇ、勉強になりました

行きつけの卸売市場にいくと、駐車場の番号を覚えてて車の後ろのカギを開けておいて場内に入ります、

地方の為マグロ業者が多く競り落とされた200KG以上のクロマグロがゴロゴロしています(市場では本マグロと言っています)
刀包丁や電ノコなどで切り分けています、

そのバカでかいクロマグロをすり抜けて場内を進んで行きます。

クロマグロは高価でお店ではめったに使えません、最初に行くのはマグロ屋です、おばちゃんが中落ちをかいています、それを予約してからいろいろな魚貝を仕入れます、会計の時に駐車場の番号とナンバーを告げると帰る時には品物が全部車の中に揃ってます、ターレー(市場専用三輪車)が運んでくれているんです、忙しい時はみんな早く帰りたいので業者の取り合いです(笑)

とにかくみんなプロが買いに来るので一般的な常識が通用しない所です(笑)

中落ちはセルクルにします、サクは違う料理になりますが高価たからめったに買わないんです、

「おはよう兄さん、マグロ買って」

「これ値段じゃ俺はいいけど、お客さんはどうかなぁ~これで値段でどぉ~全部買うからさ」

「わかったよーそれでいいよ、全部もってけ馬鹿野郎ー」

こんな感じです(笑)、帰りの車の中でメニューは考えます。

クロマグロの頭にぶっかってタンコブができたことがあります、私の頭の5~6倍はあります(笑)

くるり さんのコメント...

本題とは関係ない横入り失礼します

>クロマグロの頭にぶっかってタンコブができたことがあります

すいません、これ大笑いしました。
vittorioさんて面白い人ですね(笑)

そういえば、もう16年近く前でしょうか。
その頃は本マグロなんて専門の料理屋でもとてもとても手が出なくて、南マグロ(インドマグロ)でも超ありがたがっていたと記憶しています。それがいつの間に回転寿司に出て来たんだと驚いていたら、巻き網だったんですね。それじゃあいっぱい獲れるわけだ。よくないですね。巻き網は。

prezzemolo さんのコメント...

Vittorioさん
イタリア語で聞いたこともない食材が出てくると、とことん調べたくなります。
DNAレベルでそういうのが好きな性分みたいです。
でも、その結果外してしまうことも少なくなくて、まだ未熟者です(汗)

卸売市場の人たちは、買う方も売る方もカッコイイですねえ。
部外者には近寄りがたい雰囲気です。
ねじり鉢巻きとゴム長の世界・・・(妄想中)


くるりさん
Vittorioさんて面白い人ですよねえ。
確かグラナ・パダーノにぶつかって気絶したこともあるんですよ~。

クロマグロは、「数が減っているのは日本人のせいだ」という話をさんざ聞かされて、高い金払ってまで食べたいなんて、もう全然思わなくなりましたよー。
マグロ漁の方法は日本が世界に広めている訳だから、食べるのが後ろめたい方法なんて嫌ですよねえ。

マリア・ルイジアの小さな街、パルマのバターとグラナの娘、アノリーニ。本物は牛と去勢鶏のブロードでゆでます。

昨日の最後にサラっと登場したアノリーニですが、このパスタ、(CIR12月号P.5)にもリチェッタが載っていました。クルルジョネスの次の料理です。花の形の可愛い詰め物入りパスタ、なんていうのがこのパスタの印象ですが、イタリア人は、こんな風に思ってるんですね。 「マリア・ルイジアの小...