イタリア料理ほんやく三昧: 6月 2009

2009年6月30日火曜日

ウニ

東北でウニを食べてきたので、その勢いで、今日はウニの話。

イタリア語でウニは、“リッチ・ディ・マーレ”ricci di mare。
“リッチ”とは、栗のいがのこと。
つまり、「海のいが」という、見た目そのままの名前。



Ricci di mare, photo by The artist previously known as flickrsucks



ウニはイタリアの海岸線のどこにでもいます。
この動画はサルデーニャの海辺のウニ。






食用にするのは主にヨーロッパムラサキウニの仲間ですが、ムラサキウニ、バフンウニ、など日本のように区別して呼ぶことはまずありません。
一応、ヨーロッパムラサキウニは、別名、リッチョ・フェンミナとも言います。

一年中獲れますが、身が一番厚くなるのは冬の終わりから春の初め頃。


カリアリ(サルデーニャ)のレストランで前菜にウニを頼むと、この量が出てくる!


日本では、生、焼き、吸い物、潮汁、炊き込みご飯など色んな料理にしますが、イタリアでは生かパスタが主流のようですね。
パンにのせてクロストーニにすることもあります。

次の動画は、ウニとファヴィニャーナのマグロのボッタルガのスパゲッティ・アッラ・キタッラ。
オリーブオイルを軽く熱し、プレッツェーモロとボッタルガを加えてさっと熱します。
パスタのゆで汁少々を加えて火を止め、ウニを入れます。
パスタを入れて和え、皿に盛り付けます。
仕上げにピスタチオを散らしてこしょうをかけ、オイルをたらします。








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2009年6月26日金曜日

シャコ

今日も、いただきもののお題から。
シャコです。


ヴェネチアの市場のシャコ, photo by Rui Ornelas


シャコはイタリア語では、“カノッキエcanocchie”。
他に、ヴェネトでは“カノーチェcanoce”、カンバーニアでは“スパルノッキsparnocchi”など、場所によって違う呼び方もします。
別名、「海のセミ」(チカーレ・ディ・マーレ)とか、「海のとうもろこし」(パンノッキエ・ディ・マーレ)とも言います。
ちなみに、英語だと“マンティス・シュリンプ”で、「カマキリ・エビ」という意味。


シャコのアル・ヴァポーレcanocchie al vapore(蒸しシャコ)の動画をどうぞ。
蒸すといっても蒸し器を使うのではなく、フライパンで蒸し煮にしています。
加熱時間はシャコの色が変わるまで(5~6分)。
冷めたら殻を取り、レモン汁ごく少量、塩、EVオリーブオイルで調味します。
プレッツェーモロのみじん切りを散らしてもOK。





次はシャコのラグーのガルガネッリ。
鍋に入れてシートをかぶせ、白ワインをかけて2分蒸し煮にします。
殻を取ったら刻み、オリーブオイル、にんにく、玉ねぎのみじん切り、唐辛子、白ワインで炒め煮に。
そして皮と種を取ったトマトを加えます。






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2009年6月22日月曜日

タコ

お題をいただいてタコのリチェッタを探していたら、いくつか写真や動画を見つけたので、今日はそれをどうぞ。

イタリア語でタコはポルポpolpo。
特に大型ものはピオーヴラpiovraと呼びます。
ミズダコのことを英語でジャイアント・オクトパスと呼びますが、そんな感じでしょうか。



ヴェネチアのリアルトの市場のピオーヴラ, photo by Mon Œil


ローマの観光名所、ナヴォーナ広場にある有名なネプチューンの噴水
ネプチューンにからみついているタコは、この大きさからすると間違いなくピオーヴラですね~。


バーリの港の風景
タコを岸壁に叩きつけています。
こうして繊維を切って柔らかくするんですね。

鍋にコルク栓を入れてタコをゆでてます
果たして、柔らかくなるか?

ナポリの市場のタコの解体ショー?


イタリアでは、単にポルポではなく、polpo verace(ポルポ・ヴェラーチェ)という呼び方もよくします。
“ヴェラーチェ”とは、岩場のタコ、という意味。
もう一つ、砂場のタコ(ポルポ・シニスコ)、というのもあって、岩場のタコの方が味が良いとされています。
両者を見分けるポイントは、岩場のタコは吸盤が2列、砂場のタコは1列なんだそうです。

ポルポ・ヴェラーチェって書いてありますね。



タコのインサラータの動画をどうぞ。




材料は、ポルポ・ヴェラーチェ、プレッツェーモロ、にんにく、オリーブオイル、ビネガー、塩。
・たっぷりの熱湯に塩を加えます。タコをフォークに刺して熱湯に浸し、再沸騰してきたら取り出します。これを計3回繰り返します。
・別の鍋にたっぷりの水を入れて火にかけ、あら塩を加えます。ここにタコを入れ、蓋をしてゆっくり沸騰させます。
・沸騰してから約1時間30分ゆでます。
・フォークを刺してみて柔らかくなっていたら湯を捨て、蓋をして完全に冷まします。
・タコの口や皮を取り除いて小さく切ります。プレッツェーモロとにんにくのみじん切りを加えます。
・オリーブオイル、ビネガー(またはレモン汁)、塩をホイップしてタコにかけ、よく和えます。
・シーフード、ゆでたじゃがいも、トマト、オリーブなどを加えればボリュームのある1品に。


ラウラ・ラヴァイオーリさんのリチェッタをもう1品。

タコのカルパッチョ。
あのきれいな大理石模様はこうやって作るんですね。




・鍋に掃除したポルポ・ヴェラーチェを入れ、レモン、クローブ、ローリエ、セロリ、玉ねぎ、あら塩、水を加えて火にかけます。
・タコが軟らかくなるまでゆで、ゆで汁に漬けたまま冷まします。
・ペットボトルをカットしたものにまだ温かいタコを詰めます。
・ペットボトルにちょうど入るサイズの空き缶をラップで包み、これでタコをぎゅっと押し込みます。糸で縛って固定します。
・冷蔵庫で数時間から1日休ませます。
・これをスライスサーで薄く切り、オリーブオイル、レモン汁、塩、白こしょう、にんにく(漬けて取り除く)のシトロネットをかけます。スライサーで切ったフィノッキオやセロリを加えてもOK。


この動画のカルパッチョ、出来上がりがあまりきれいな大理石模様でないのが残念。

きれいな大理石模様のカルパッチョ

これは大作


エルバ島(トスカーナ)のタコは、海水の濃度の塩水でゆでます。



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2009年6月18日木曜日

フィノッキエット(フィノッキオ・セルヴァティコ)

今日はフィノッキオ・セルヴァティコ編です。

フィノッキオ・セルヴァティコ(フィノッキエット)を使った代表的な料理の一つは、パレルモのイワシのパスタ、パスタ・コン・レ・サルデ。



フィノッキエットたっぷりのイワシのパスタ, photo by u m a m i


イタリアでイワシのパスタと言えば、普通はこの、シチリア風のフィノッキエット入りパスタのこと。
イタリアで、フィノッキエットが入っていないイワシのパスタというのは少数派なんじゃないでしょうか。
だから、日本でイワシのパスタを作ろうとしても、フィノッキエットが手に入らないと、ただのイワシのパスタになっちゃうんですねー。


パレルモでこの料理を食べると、日本人とイタリア人の魚に対する考え方って、やっぱり違うんだなあ、と思わずにはいられません。
何しろ味も香りも、とにかく強い!
きっと生のイワシの香りが、とことん嫌いなんですね。
魚の生臭さをフィノッキエットの強い香りで消してしまえー、という感じですよ。
6人分でイワシ500gに対して、フィノッキエットも500g入れます。

魚のデリケートな味を味わう、という発想は、少なくともイワシのパスタにはないですね。
しかも、イワシもフィノッキエットも全部ぐちゃぐちゃにするので、味だけでなく、見た目も男前。

イワシとフィノッキエットのシンプルな組み合わせなら、それもありかなとは思うのですが、パレルモのイワシのパスタの主な材料は、イワシ、塩漬けアンチョビー、フィノッキエット、玉ねぎ、レーズン、松の実、サフラン、パン粉。
シチリア的な、かなりエキゾチックな組み合わせですよ。

・まず、玉ねぎ1個、アンチョビー6尾、レーズン70g、松の実30gをオイルでソッフリットにします。
・そこにゆでて刻んだフィノッキエットとそのゆで汁少々、こしょう、サフランを加えて10分煮ます。
・次に、切り身にしたイワシを入れて15分煮ます。
・仕上げにオリーブオイルをかけます。
・ブカティーニをゆでてイワシとフィノッキエットで和え、皿に盛りつけたら、オリーブオイルと砂糖少々(好みで)で炒めたパン粉を散らします。
(パレルモのOsteria Paradisoのリチェッタ)


日本人でこのパスタの味を出せる人は、ある意味、シチリア料理を極めた人なんじゃないでしょうか。
なんにせよ、パレルモの代表的な料理の一つですから、パレルモに行ったら一度は食べてみないとね。

こちらはフィノッキエットのコンキリエ
これもすごい量のフィノッキエットですねえ。


フィノッキエットも、使い方によってはこんな上品なパスタになります。

フィノッキエットのタリアテッレ

・にんにくとバジリコをオリーブオイルでソッフリットにし、刻んだフィノッキエットと生クリームを加えて熱します。
・ゆでたタリアテッレとゆで汁少々を加えてなじませ、こしょう、おろしたチーズ、フィノッキエットを散らします。

お勧めのワインはシチリアのシャルドネだって。
いいですね。


フィノッキエット入りサーモンのパイ

フィノッキエットのフリッター

空豆、フィノッキエット、リコッタのスパゲッティ

フィノッキエットとローストアーモンドのペーストのブカティーニ

サルシッチャのフィノッキエット風味


フィノッキエットと言えば、ポルケッタも忘れちゃいけません。
中にたっぷり詰まってます。







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2009年6月15日月曜日

フィノッキオ

今日はフィノッキオの話。

フィノッキオ(フェンネル)は、地中海の沿岸部が原産地。
地中海を象徴する野菜と言えばトマトやズッキーニなどがありますが、これらが中米や南米原産なのに対して、フィノッキオは純粋な地中海生まれ。
イタリア南部も原産地の中に含まれています。
日本の気候には適さないのか、地中海料理がこれだけ広まった今も、いまだに一般的な野菜にはなっていませんねえ。


フィノッキオには、栽培ものの“フィノッキオ”と、野生の“フィノッキオ・セルヴァティコ”、別名“フィノッキエット”の2種類があります。
フィノッキオは、主に茎の根元がふくらんだ球茎の部分が食用。
フィノッキエットは、主にバルベ(ひげ)と呼ばれる葉の部分を香草として使います。
種はスパイスとして使い、花はエッセンスオイルを取ったり、料理の飾りに使ったりします。



フィノッキオ・コルティヴァート, photo by sassyradish



手前にあるのがフィノッキオ・セルヴァティコ, photo by the weed one


フィノッキオは古くからある植物で、ギリシャ神話にも登場します。
人間に火を伝えたとされるプロメテウスは、フィノッキオの茎の中に火を隠してオリンポスから持ち出したんだとか。
なるほど、あの白くてぷっくりした球茎なら、葉をはがして、提灯のように火を包むことができたかも・・・。

ん?
そう言えば、栽培もののフィノッキオは野生のものよりずっと後に登場したんじゃなかったっけ。
シャルルマーニュ大帝(別名カール大帝、742~814)は、フランス南部でフィノッキオを栽培するべし、という法令を出したことがあるそうです。
その時、皇帝が栽培するように指定したのは、当時の新しい品種でした。
それまでのフィノッキオは、細い茎に“ひげ”がわさわさとついていた(つまりフィノッキエットですね)のに対して、新しいフィノッキオは、食べることのできる球茎の部分が大きく膨らみ、葉の部分が小さい品種でした・・・。

つまり、ギリシャ神話の時代には、ぷっくりしたフィノッキオはなかったということでは?
いやいや、これ以上追及するとギリシャ神話にケチをつけかねないのでやめておきます。

ちなみに、シャルルマーニュ大帝はフランク王国の王だった人で、ローマ皇帝の称号(別に東ローマ皇帝もいましたが)も手に入れました。
フランク王国は、ローマ帝国没落後の西ヨーロッパで最大の勢力があった国で、後に分裂して、フランスと神聖ローマ帝国になります。
神聖ローマと言う言葉に反応したあなた、『ヘタリア』好きですね~(笑)♪
(今や、日本だけでなく世界中の女の子たちに大人気のwebコミック&アニメ『ヘタリア』)


フィノッキオの基本的な調理方法は、蒸す、ゆでる、ブラザーレする、煮る、焼く、揚げる。
あるいは生でインサラータに。
ゆでた後にグラティナーレしたり、キッシュのようなタルトにしてもいいですよね。


フィノッキオのブラザートの動画です。
薄切りにして、樹脂加工のフライパンでオリーブオイルで約10分ブラザーレしています。




野菜のブラザーレは、炒めるのではなく、放っておく調理方法。
この動画の場合はカリッと仕上げるために蓋をしませんが、しんなりさせたい時や厚いくし切りの時は蓋をします。
フィノッキオは、くし切りにしてバターでブラザーレすることもよくあります。
オイルにアンチョビーを加えたり、仕上げにチーズや香草を散らすのもいいですね。


次回はフィノッキエットのリチェッタです。


今日のおまけ。
『ヘタリア』の海外での人気はなかなかすごいですねー。
アメリカのサンノゼで行われたアニメコンで、ヘタリアのコスプレをした女の子たちの楽しそうな姿をどうぞ。
こちら
登場人物の一人、ロマーノ(南イタリアを擬人化したキャラクター)が歌う日本語のトマトの歌に合わせて、自然発生で踊ってます。
「パスタ~!」は、もはや世界中のヘタリア好きの合言葉。



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2009年6月11日木曜日

イタリアのレモン

今日はレモンの話。

近頃、シチリア産レモン入り、という製品がずいぶん多くなりましたねえ。
イタリアでレモンの産地と言えば、やはりまずシチリア。
そしてカラブリアやカンパーニア。




シチリアの代表的なレモンの産地の一つ、シラクーザの店先に積まれた大小のレモン。
手前のレモンは1kgで0.5ユーロ、約70円! photo by sharkbait


レモンは年に何度か花が咲く植物です。
イタリアでは、3月から6月にかけて花が咲いたものは、9月半ばから翌年の5月の間に実が熟します。
この実をリモーネと呼びます。
6月から7月末に花が咲いて、翌年2月から5月に実が熟したものはリモーネ・ビアンケット、8月半ばから10月に開花して、翌年4月末から9月の間に実が熟したものはリモーネ・ヴェルデッロと呼ばれます。

イタリアで栽培されるレモンの70%を占めていて、主にシチリアで栽培されているのが、フェンミネッロ・コムーネという品種。
果汁が多いのが特徴です。

こんなレモン


シチリアレモンと言えば、グラニータ。

アイスクリーマーがなくてもできるグラニータの作り方(前置きがちょっと長いですが)。
砂糖と水を熱したシロップに無農薬のレモンの汁と皮を入れて30分置き、漉して凍らせます。
半分固まったらミキサーにかけ、再び冷やして適度な堅さに固めます。






一方、カンパーニアのソッレント(ソレント)などで栽培されているのが、リモンチェッロの原料になるオヴァーレ・ディ・ソッレントという品種。
こちらは、香りのエッセンスを含む油が皮にたくさん含まれています。

こんなレモン

今やソッレントの名物となったレモンとリモンチェッロですが、実は、このレモンと日本は、多少のかかわりがあるんです。
あまりイメージが湧かないかもしれませんが、19世紀のソッレント地方の主な産業は、ぷどう栽培と絹織物でした。
ところが、ぶどうの木がフィロキセラにやられ、絹も中国や日本の製品に押されて、競争力を失ってしまいます。
ソッレントの人々は、短期間でまったく新しい産業を興す必要に迫られました。
そこで取り組んだのが、以前から行われていた柑橘類の栽培です。
それまでたくさんあった桑の木は、あっという間にレモンの木に姿を変えてしまったのだそうです。
日本が国を挙げて絹を造った結果が、私たちが今飲んでいるリモンチェッロと結びついているとは・・・。



今日のおまけ。
リモンチェッロなど、カンパーニア地方の味覚を紹介する動画。
行きたくなります。






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2009年6月8日月曜日

モンテヴェトラーノ

今日はワインの話。
『クチーナ・エ・ヴィーニ』の記事の解説です。


カンパーニアのワイン、モンテヴェトラーノ





ラベルのデザインが印象的なワインですね。

モンテヴェトラーノは、造っているカンティーナの名前もモンテヴェトラーノ。
というか、このカンティーナでは、このワイン以外造っていません。
コッリ・ディ・サレルノIGTの赤ワインです。
サレルノからほんのわずか内陸に入った、サン・チプリアーノ・ピチェンティーノというところで作られています。
近くにはアマルフィやポンペイがあって、場所的には典型的なカンパーニア地方ですね。

ところが、このワインのぶどう品種は全然カンバーニア的ではありません。
カベルネ・ソーヴィニヨン60%、メルロー30%、アリアニコ・タウラージ10%。
90%が外来種です。

このワイン、商業的な最初のビンテージである1993年のものが世に出た時は、イタリアでは誰も注目しませんでした。
それが、あることを境に、突然スーパーワインとして絶賛されるようになります。
ロバート・パーカーが、モンテヴェトラーノを「南のサッシカイア」と称賛して、100点満点中96点という高得点をつけたんですねえ。
とたんに世界中が注目しました。
それでイタリアもこのワインの存在に気づき、大人気となったわけです。
10年以上たった今でも、このワインのセールストークに、「ロバート・パーカーが南のサッシカイアと呼んだ」、という話は欠かせないようですね。


ここまでなら、ふーん、格付け本の影響力って半端じゃないんだなあ、なんて話で終わってしまいます。
でも、『クチーナ・エ・ヴィーニ』の記事はなかなか面白いですよ。
この話の裏にあった人間模様にスポットライトを当てたんです。

このモンテヴェトラーノの生みの親で、カンティーナの経営者でもあるのは、シルヴィア・インパラートさん。
この女性、元々はカメラマンでした。
カメラマンとして活躍していた頃は、ワイン業界に入ることは全く想像もしていなかったそうです。
でも、ワイン好きと知り合って影響を受け、家族が農場を所有していたこともあって、いつしか、上質のワインを造ることを本気で考えるようになります。
次第にその思いが強くなり、友人たちとの間で生まれた“上質なワイン”の漠然としたイメージを元に、小さな畑でワイン造りを始めました。

出来上がったワインは想像以上に良い出来で、知り合いの間でも大好評でした。
それに自信を得て、シルヴィアさんはロバート・パーカーに試飲用のワインを送ります。
当然、高得点を期待していたのでしょうが、実際に起きたことは、彼女の想像を超えていました。
突然、世界中が彼女の小さなカンティーナに注目しだしたのです。

世界中が注目するワインを、趣味のレベルで造ることはもはや不可能。
自分が持っているものは、わずかな畑と4匹の猫。
これでこの先、市場にワインを出し続けることができるのか。
シルヴィアさんは、ワイン造りをやめることも考えたそうです。
世界的な名声を手に入れながら、それを手放そうと考えるなんて、名声のプレッシャーってそんなに重いものなんですねえ。

しかも、モンテヴェトラーノは外来品種のぶどうが90%。
これはカンパーニアのワインではない、フランスワインだ、という言われ方もしたそうです。
畑と地元に強い思い入れがあるシルヴァーナさんにとっては、きっときつい批判だったはず。
そんな時、頼れる相談相手となったのは、エノロゴのリッカルド・コタレッラ氏でした。
悩んだ末に、シルヴィアさんはワイン造りを続けようと決断します。

結局、モンテヴェトラーノはますます注目を集め、カリスマワインの一つとなった訳です。

シルヴィアさん、こんなことを語っています。

「他のカンティーナを訪れるたびに、いいなあ、と思うのですが、ここに戻ってくると、この場所にかけた私の情熱は、他の誰にも負けていない、という思いが強くなります」

一見、ラッキーなサクセスストーリーのように見えるカリスマワインにも、色んな物語が隠れているんですねえ。

シルヴィア・インパラートさんとモンテヴェトラーノ




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関連誌;『クチーナ・エ・ヴィーニ』2008年1月号
“モンテヴェトラーノ、シルヴィア・インパラートへのインタビュー”の解説は、「総合解説」'07&'08年1月号、P.38に載っています。


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2009年6月4日木曜日

メッシーナ海峡のシッラとカリッディ

今日はコスタ・ヴィオラの話の続き。

シッラは、コスタ・ヴィオラの南部にある古い町。
そして、ギリシャ神話や『オデュッセウス』に登場する、海に棲む怪物の名前でもあります。

シッラは、ギリシャ語では“スキュラ”。
このスキュラはたいてい、“カリュブディス”という怪物と二人ひと組で語られます。
カリュブディスは、イタリア語ではカリッディ。

スキュラとカリュブディスは、メッシーナ海峡の両側に棲んでいる、というのがよく知られた伝説。



メッシーナ海峡, photo by NegliOcchiDiFrida


カリュブディスはポセイドンとガイアの娘で、異常なほどの大喰いでした。
ある時、家畜の群れを丸ごと食べてしまったため、ゼウスによって怪物の姿に変えられて、海に追放されてしまいます。
それ以来カリュブディスは、一日に三回、渦巻きを起こしながらあたりの海水を大量に吸い込んでは吐き出すようになりました。
たまたま船が通りかかろうものなら、船もろともです。

オデュッセウスと海の魔物と言えば、セイレーンの話が有名ですよね。
セイレーンは、その歌声を聴いたものは惑わされ、結局、船を難破させてしまうという怪物。
オデュッセウスは、このセイレーンに出会った後に、カリュブディスとスキュラに遭遇します。
片や何でも飲み込でしまう怪物で、片や6頭の獣の頭で人を喰う怪物。
カリュブディスはなんとかやり過ごすのですが、スキュラには襲われて、6人の乗組員がやられてしまいます。
怖いですねー。


シッラ(スキュラ)は、メッシーナ海峡の右側(カラブリア側)にある町です。
ということは、カリュブディス(イタリア語ではカリッディ)という町が、メッシーナ海峡の左側(シチリア側)にある?
地図にそういう地名は無いようですが、言い伝えでは、シチリアの北東の端、メッシーナ海峡に突き出たファーロ岬のあたりに、カリュブディスは棲んでいたと言われています。
今でも、メッシーナ海峡の渦巻きはカリュブディスが起こしている、という言い伝えは現役。


メッシーナのネプチューンの泉の足元には、スキュラ(左)とカリュブディスの像も。
この大口を開けているのがカリュブディス



メッシーナ海峡の神秘的な美しさを伝える動画。
メッシーナ海峡と言えば、原始的で勇壮なメカジキ漁が有名。
動画の前半は、そのメカジキ漁を再現した映像。





かつてのメッシーナ海峡のメカジキ漁。
見張りの人は大変ですねー。





現在のメカジキ漁は、もっと大型の船で行います。





この古風なメカジキ漁、船の維持費がかなりかかるそうです。
それに反比例して魚の数は減っていて、かなり苦境に立たされています。
地元では、ペスカトゥーリズモなどで生き残る道を模索しています。



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関連誌;『ヴィエ・デル・グスト』2008年1月号
“シッラ”の解説は、「総合解説」'07&'08年1月号、P.36に載っています。


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2009年6月1日月曜日

コスタ・ヴィオラのシッラ

今日はカラプリアのヴィオラ海岸の話。
『ヴィエ・デル・グスト』の記事の解説です。

ヴィオラ海岸。
イタリア語ではコスタ・ヴィオラ Costa Viola 。
日本語ではスミレ海岸・・・。

きれいな名前の海岸ですねえ。
この名前を付けたのがプラトンだとは、歴史を感じますねえ。
なんでも、船から見た夕暮れ時の海岸や海が、さまざまなトーンのスミレ色に染まっている光景に魅了されて、こう名付けたんだとか。
スミレが咲く海岸という訳じゃないんですね。
もちろん、プラトン名付け親説に確たる根拠はありませんが・・・。


コスタ・ヴィオラの場所は、ここ

シチリアとカラブリアの間にあるメッシーナ海峡のすぐそばにあって、ティレニア海に面しています。
西側に海が開けているから、海に日が落ちる夕暮れ時が美しいのでしょうか。



コスタ・ヴィッラを代表する町、シッラの城, photo by fataetoile It's a dream...isn't it?



山の上から見下ろしたシッラと城, photo by ~Tony~


コスタ・ヴィオラの真珠、と形容されるシッラは、ホメロスの『オデュッセイア』にも登場する町なんだそうです。
『ヴィエ・デル・グスト』の記事には、ギリシャ神話に登場するシッラというニンフの話が出てくるのですが、日本人の私たちにはまったく馴染みのない話なので、クレアパッソの「総合解説」には、この神話のもう少し詳しい説明を載せました。

大体こんな話・・・。

シッラはギリシャ語でスキュラと言います。
ニンフのスキュラに、ポセイドンの息子グラウコスが一目惚れします。
グラウスコは魔女キルケに惚れ薬の調合を頼むのですが、なんとここで、キルケがグラウスコに一目惚れ。
ところがグラウスコはキルケを拒否!
げに恐ろしや、女の嫉妬。
キルケは毒薬を惚れ薬と偽ってグラウコスに渡します。
あほグラウコスは、海に毒薬をどぼどぼ・・・。
何も知らないスキュラは、水浴びをしようとその海に下半身を浸しました。
すると、な、なんと、スキュラの下半身は、犬の頭が6つついた蛇になってしまったのですよ~。
ひえ~、ひどすぎる~。
ショックのあまりスキュラは海に飛び込み、それ以来、岩場の岩窟の中で暮らしたのでした。


ギリシャのコインに描かれたスキュラ


『オデュッセイア』の中では、スキュラは通りかかった船の船員を6人食べてしまう怪物とされているんだそうです。
逆恨みでこんな目にあわされたというのに、可哀そすぎる・・・。

フィレンツェのシニョリーア広場にある有名なネプチューンの噴水の台座の一部にも、スキュラの像があるんだそうです。
知らなかったなあ。



1999年のTVドラマ『オデッセイ』から、スキュラの登場シーン。





スキュラとばかり書きましたが、イタリア語ではシッラです。

コスタ・ヴィオラの話、次回に続きます。



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関連誌;『ヴィエ・デル・クスト』2008年1月号
“シッラ”の記事の解説は、「総合解説」'07&'08年1月号、P.36に載っています。


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