イタリア料理ほんやく三昧: 3月 2009

2009年3月30日月曜日

ボッリート・ミスト

今日はボッリート・ミストの話。
『ラ・クチーナ・イタリアーナ』と『サーレ・エ・ペペ』の解説です。

ピエモンテなど北イタリアでおなじみの肉料理、ボッリート・ミスト。

牛、子牛、豚、鶏などの様々な部位を、香味野菜と一緒に長時間ゆでた料理。

こう言うと、ポトフみたいなものか、なんて思ったりもしますが、ピエモンテのレストランでこの料理がサービスされている様子を見ると、「あーここは肉食の国だったんだ」、ということを痛感します。
とにかく肉、肉、肉!
軽い気持ちで注文すると、後で泣く羽目に。



一人前はこの量!
ランゲ地方の南の端にあるカッルーという町の、オステリーア・デル・ボルゴ(hp)のボッリート・ミスト。






こちらもカッルーのトラットリーア・ヴァシェッロ・ドーロのボッリート・ミスト。
なんとボッリート・ミストの前に生肉の前菜食べてますよ!
1:50あたりにワゴンが登場します。
デカンターレしたワイン、飲みたくなりますねー。






オステリーア・デル・ボルゴのhpによると、この店は“グラン・ボッリート・ミスト”がスペチャリタ。
ピエモンテではただのボッリート・ミストではなくて、“グラン・ボッリート・ミスト”と呼ぶんでしたね。
一年中出しているそうです。

肉は7つの部位、サルサも7種類と、伝統のリチェッタをきっちりと守っていますねえ。
牛肉はピエモンテ牛だそうですよ。

リチェッタは、

材料/6人分
 牛かたばら・・300g
 牛そとばら・・300g
 牛すね肉・・300g
 牛頭肉・・300g
 牛舌・・1本
 牛尾
 サルシッチャ(多分)
 セロリ・・2本
 ポロねぎ・・1本
 にんじん・・1本
 ローズマリー・・1枝
 ローリエ

1.大鍋に水と塩適量を入れて沸騰させ、肉を入れる。
2.最低2時間ゆでて柔らかいものから取り出す。頭肉が一番時間がかかる。


サルサ・ヴェルデ
材料
 プレッツェーモロ・・1把
 にんにく・・1~2片
 アンチョビー・・2枚
 ケッパー
 ゆで卵の黄身・・2個
 ビネガーに浸したパンのクラム
 塩・・少々
 オリーブオイル

オリーブオイル以外の材料を一緒に刻み、オイルを加える。




見事なまでに牛肉、牛肉、牛肉!
野菜も食べないと~。
お勧めのワインは地元のドルチェット・ディ・ドリアーニ。



お口直しに、おまけの動画でもどうぞ。
でも、ボッリート・ミストとも、イタリアとも何の関係ありませ~ん。
去年日本で話題になった話がイタリアでも伝えられているのをたまたま見つけたもので。
タヴェルナ・ジャッポネーゼの「お猿のカメリエーレ」だって。





宇都宮の居酒屋「かやぶき」のやっちゃんとふくちゃんだそうです。



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関連誌;『ラ・クチーナ・イタリアーナ』、『サーレ・エ・ぺぺ』、'06年12月号(クレアパッソで販売中)
“ボッリート”と“ボッリート・ミスト”の解説とリチェッタは、「総合解説」'06&'07年12月号、P.17とP.21に載っています。


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2009年3月27日金曜日

ボローニャのトルテッリーニの詰め物

今日はトルテッリーニの話、その2。
『ア・ターヴォラ』の記事の解説です。

トルテッリーニの本家争いでは一歩リードした感のボローニャ。
『ア・ターヴォラ』の記事にもあるとおり、この街の商工会議所には、「本物のボローニャのトルテッリーニ」なるものの詰め物のリチェッタが登録されています。
中心となったのは、トルテッリーニ協会とイタリア料理アカデミーのボローニャ支部。
本物とはどういう意味かは別として、いわゆる公式リチェッタを大々的に発表して、その存在をアピールする目的は十分に達成したようですね。
35年たった今でも、遠い日本でこうして話題にされることがあるわけですから。

ボローニャの商工会議所は、イタリアで最初に料理のリチェッタを登録した所なんだそうです。
イタリア料理アカデミーはこの他にも様々なリチェッタをボローニャの商工会議所に登録していて、ボローニャ風タリアテッレの幅、ラグー・ボロニェーゼ、モルタデッラのスプーマ、ボローニャ風コトレッタなんていうのもあります。

もちろんこれらのリチェッタは、「本物」のボローニャ料理を知らない人に一定の指針を与えるためのもので、ボローニャの人に向けたものではありません。
つまり、ボローニャで生まれ育った人にとっては、母親から娘へと伝えられた各家庭のリチェッタがあるわけで、それこそが本物のリチェッタですもんね。



ボローニャのトルテッリーニ, photo by mrfink


それでは、商工会議所に登録された「本物のボローニャのトルテッリーニの詰め物」のリチェッタをどうぞ。
原文はこちらのサイトのもの


材料/約100個分
 豚ロース・・300g
 生ハム・・300g
 (本物の)ボローニャのモルタデッラ・・300g
 最低3年熟成させたパルミジャーノ・レッジャーノ・・450g(熟成が3年未満の場合は量を増やす)
 卵・・3個
 ナツメグ

1.豚肉は、ローズマリーとにんにくのみじん切り、塩、こしょうで覆って2日寝かせてからバターで焼く。
2.豚肉を取り出してローズマリーとにんにくを取り除き、生ハム、モルタデッラと一緒に細かく刻む。パルミジャーノ、卵、ナツメグを加えてよくこね、最低24時間休ませる。

これをパスタで包み、放し飼いの去勢鶏1羽と牛肉のブロード用部位から取ったブロードでゆでる。



もう一つ、『ア・ターヴォラ』で、“ボローニャのトルテッリーニのお勧め店”の一つとして紹介されているトラットリーア、カミネット・ドーロ(hp)のトルテッリーニの詰め物もどうぞ。
店主のノンナが店で出していたのと同じリチェッタだそうです。


材料/約1kg(20人)分
 豚ロース・・450g
 生ハム・・150g
 ボローニャのモルタデッラ・・150g
 パルミジャーノ・レッジャーノ・・150g
 鶏胸肉(季節によっては去勢鶏やホロホロ鳥)・・100g
 卵・・1個
 ナツメグ
 塩、こしょう

1.肉、生ハム、モルタデッラを生のまま挽く。
2.パルミジャーノ、卵、ナツメグを加えてじっくりこね、寝かせる。



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関連誌;『ア・ターヴォラ』'06年12月号(クレアパッソで販売中)
“トルテッリーニ”の記事、及びオステリーア・フランチェスカーナのモデナのトルテッリーニのリチェッタは、「総合解説」'06&'07年12月号、P.14に載っています。


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2009年3月24日火曜日

トルテッリーニとヴィーナスのへそ

今日はトルテッリーニの話。
『ア・ターヴォラ』の記事の解説です。



ボローニャの有名店、カミネット・ドーロのトルテッリーニ・イン・ブロード, photo by adactio


トルテッリーニはエミリア地方の名物料理。
中でもボローニャとモデナがその中心地。

トルテッリーニは、多分、イタリアで一番小さな詰め物入りパスタですよね。
「ヴィーナスのへそ」にたとえられるのは有名な話。

この伝説、よく知られているのが、宿屋の主人がヴィーナスだか貴婦人だかのおへそを覗き見して、その美しさに感動して作った、という話。
宿屋の場所は、ボローニャとモデナのちょうど中間のカステルフランコ・エミーリアで、宿屋の名前は“コローナ”と、なぜかやたら細かいところまで言い伝えられています。

ヴィーナスのへそ説は、なんでも、詩人タッソーニが17世紀に書いた『奪われた手桶』、という詩が出所らしい、とも言われています。

トルテッリーニのことを詳しく説明しているこちらのサイトでは、こう説明しています。

この詩は、13世紀にボローニャとモデナの間で起こった争いの歴史を語ったもの。
なぜかこの二つの町の戦いに、オリンポスの神々が参戦するんです。
でも、この詩の中にはヴィーナスのへその話は出てきません。

とてもややこしいのですが、この詩に感銘を受けた19世紀のジュゼッペ・チェーリという詩人が、この戦いで、ヴィーナス、酒神バッカス、軍神マルスの三人がモデナ側についた、という詩を書いたんだそうです。
その中に、三人がカステルフランコ・エミーリアの宿屋に泊まった、という話が出てきます。
なんで神様が宿屋に泊ったのかなんて、私に聞かないでくださいよー。
そんなこと私だって知りませんから。
そして後はお決まりの、宿屋の主人がヴィーナスのおへそを見て感動して・・・、という訳です。



大英博物館のヴィーナス, photo by xjyxjy



実はこの話、現在も続く永遠のライパル、ボローニャとモデナの争いの一因にもなっているようなんです。
タッソーニはモデナの人でした。
現在のカステルフランコ・エミーリアは、行政的にはモデナ市。
でもチェーリは、「宿屋の主人はボローニャ人だった」、と書いたんですねえ。
つまり、“トルテッリーニの発祥地はポローニャ説”の強力な援護射撃。
そのせいかどうかは知りませんが、やはりボローニャ説の方が有力のようですねー。


このトルテッリーニ、小さければ小さいほどよいと言われますが、ボローニャとモデナではボローニャの方が小さい、という話も聞きます。
成形する時も、モデナでは人差し指に巻きつけて、ポローニャでは小指に巻きつける、なんていう話もあります。



ボローニャの惣菜店のトルテッリーニ, photo by markcbrennan


確かに小さい!

ただし、小粒のトルテッリーニを小指に巻きつけながら大量に作るのはかなり効率が悪く、実際にはほとんどの人が人差し指で作っているもよう。

エミリア・ロマーニャ地方のパスタ職人は“スフォリーナ”と呼ばれる女性たち。
ベテランスフォリーナのトルテッリーニ作りをどうぞ。





この店のパスタの配合は、小麦粉1kgにつき新鮮な卵12個。
生地は麺棒で薄~く伸ばし、3~4cm角にカット。
麺の出来はスフォリーナの腕次第だと言ってますねー。
のせる詰め物の量も何gかは決められておらず、すべてスフォリーナの感覚にまかされているそうで。

麺をこねて伸ばすのは力がいる作業で、詰め物をのせて閉じるのは繊細で細かい作業。
おばちゃんでなければできない仕事ですねえ。


トルテッリーニの話、次回に続きます。



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関連誌;『ア・ターヴォラ』'06年12月号(クレアパッソで販売中)
“トルテッリーニ”の記事の解説は、「総合解説」'06&'07年12月号、P.14に載っています。


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2009年3月19日木曜日

インサラータ・ルッサ

今日はサラダの話。

インサラータ・ルッサ Insalata russa 。

英語で言えば、「ロシアンサラダ」。

こんなサラダです。

一見、何の変哲もないポテトサラダですねえ。
じゃがいもやにんじんの小角切りやグリーンピースをゆでて、マヨネーズで和えた一品。
ゆで卵やツナを加えることもあります。
見た目だけでなく、中身も何の変哲もないポテトサラダです。

このサラダ、日本では、マセドニアンサラダとか呼ぶんでしょうか。
マセドニアンサラダをイタリア語にすると、マチェドーニア・ディ・ヴェルドゥーラかなあ。
でも、そういう呼び方は聞いた覚えがないなあ。
やっぱりイタリアでは、「インサラータ・ルッサ」です。


インサラータ・ルッサは、イタリア中どこでも見かける料理。
しかもクリスマス料理の定番にまでなっています。

以前、ペッレグリーノ・アルトゥージの話を書いた時に、彼のインサラータ・ルッサのリチェッタを紹介したことがあります(こちら)。
1891年に出版された著書の中で、アルトゥージはインサラータ・ルッサのことを「流行の一品」と書いていました。


イタリアでは定番サラダの一つとして昔からおなじみのロシアンサラダ。
でも、ロシアンサラダが定番なのは、イタリアだけではないようですね。

これはメキシコのKFCで出しているロシアンサラダ。


メキシコのKFCのensalada rusa, photo by El Gran Dee


ロシアンサラダは世界中に広まっている料理。
別名、サラダ・オリヴィエ。

wikipediaには、ロシア人のルシアン・オリヴィエというシェフが1860年代に考案した、と書いてありますねえ。
材料は季節によって変わるので、重要なのはドレッシングの方だったとか。
それはフランスのワインビネガー、プロヴァンスのオリーブオイル、マスタードを使ったマヨネーズの一種でしたが、レシピは極秘にされて、シェフだけが知っていました。
しかもこのサラダ、オリジナルではキャビアだのライチョウだのゴージャスな素材ばかりで、じゃがいもは入っていなかった!

1900年代になって、スーシェフのイワン・イワノフという人物が、極秘だったドレッシングのレシピを盗み見て、別の店に移って“キャピタルサラダ”(ロシア語では“スタリーチヌイ”サラダ)という名前で出し始めます。
でも、オリジナルと比べると何かが足りなくて、味はいまいちだったそうで。

その後イワノフ氏はあちこちの出版社にレシピを売ったので、この料理は広まっていきました。
ただ、材料がゴージャスすぎたので、次第にもっと庶民的なじゃがいもやにんじんを使ったサラダに姿を変えていったのでした・・・。

というのがwikipediaの話。

でも、これをそのまま信じてはいけませんよね。

まず、1891年に出版されたアルトゥージの本に、当時すでにイタリアでこの料理が流行していたと書いてあります。
イワン・イワノフという名前も、なんだかちょっとうさん臭いですよ。
ただ、実際にロシアでは、ロシアンサラダのことをスタリーチヌイと呼んでいるようですが。

イタリアのwikipidiaでは、
19世紀末にピエモンテでサヴォイア家の料理人がロシアの要人をもてなすために考え出した、
という説と、
16世紀にボーナ・スフォルツァ(ミラノ大公の娘で、ポーランドに嫁いでポーランド王妃になった)がこのサラダの原型をポーランドに伝え、それがロシアンサラダという名前で逆輸入された、
という説も紹介しています。
どちらもロシアンサラダはイタリアで生まれた、というのが前提の話。
これもうさん臭いなあ。


一般にイタリアでは、インサラータ・ルッサは、ベル・エポック時代(19世紀末から20世紀初め)のパリで生まれた料理ではないか、という説が比較的有力のようです。
当時のパリは、エッフェル塔が造られたりした華やかな時代。
ロシアと言う名前がついたのは、ロシア貴族の間で人気だったとか、キャビアのようなロシアのゴージャスな食材が入っていたからとか諸説ありますが、どうなんでしょうねえ。


貴族だのキャビアだの、ゴージャスな世界で生まれたかもしれないロシアンサラダ。
それが日本では、コロコロポテトサラダなんて呼ばれたりして・・・。
国によっちゃあ、サラダ・オリヴィエ、なんて上品な名前なんですがねえ。

そうそう、イタリアでは、「ロシアンサラダはロシアではイタリアンサラダと呼ばれている」という話も広まっているんですよ。
ここまで言われると、ひょっとしたらロシアンサラダは本当にイタリアで生まれたのかも、とちょっと思ったりして。



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関連誌;『サーレ・エ・ペペ』'06年12月号(クレアパッソで販売中)
“クリスマス料理~インサラータ・ルッサのゼラチン寄せ”のリチェッタは、「総合解説」'06&'07年12月号、P.10に載っています。


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2009年3月16日月曜日

パッサテッリ

今日は、ロマーニャ地方(エミリア・ロマーニャ州の東側)やマルケ地方のプリーモ・ピアット、パッサテッリ passatelli の話。
『ラ・クチーナ・イタリアーナ』の記事の解説です。


パッサテッリは、パン粉とパルミジャーノをこねた麺。
ブロードでゆでて、スープとして食べるのが伝統的。


パッサテッリ・イン・ブロード, photo by Marco40134


見た目はちょっとあれですが、クリスマスや復活祭など、祝日のご馳走の定番料理でもあるパッサテッリ。
ボローニャ近郊のブドゥリオという所にあるアグリトゥーリズモ、ラ・ドンディーナ(hp)のパッサテッリ作り(4~5人分)の動画をどうぞ。





・台にパン粉(卵1個につき100g)とおろしたチーズ(卵1個につき100g)を盛って中央をくぼませる。
・柔らかくしたバター約20g(骨髄を加える場合もあるが手に入りにくいのでバターで代用)、卵3個、塩、こしょう少々、ナツメグを加える。
・よくこねる。硬すぎる時はオリーブオイルを加えて調整する。
・直径4~5mmの穴のポテトマッシャーに入れて押し出し、カットする。
・沸騰したひね鶏のブロードに入れ、浮かび上がったらすぐに火を止める。沸騰させない。
・スープ皿に注ぎ、好みで色付けにシブレットを散らす。



パッサテッリと言えば、独特の型を使いますよね。
直径15㎝程度の金属の円盤に取っ手がついたこの型、特に名前はなくて、“フェッロ・ペル・パッサテッリ”などと呼ばれているようです。
穴の直径は4~5mm。
下の動画では02:08頃に登場します。






『GRANDE ENCICLOPEDIA ILLUSTRATA DELLA GASTRONIMIA』より、ロマーニャ風パッサテッリのリチェッタをどうぞ

■ロマーニャ風パッサテッリ Passatelli Romagnoli
4人分
・新鮮な牛の骨髄25gを裏漉しし、ナイフで5分練って柔らかくする。
・ボールに卵3個、おろしたパルミジャーノ100g、パン粉(硬質小麦粉のパンが最適)100g、ナツメグ少々、レモンの皮のすりおろし、塩、白こしょう、骨髄を入れ、よくこねる。
・硬すぎる時はブロード、柔らかすぎる時はパン粉を加えて適度に締まった生地にする。
・上質の牛のブロードか牛とひね鶏のブロード1リットルを火にかける。
・生地の上に型を置いて押し、パッサテッリにする。できたものから皿の上に重ならないように広げておく。
・ブロードが沸騰したらパッサテッリを入れ、表面に浮かび上がったら(通常3~4分)スープ皿に注ぐ。
・おろしたパルミジャーノを添える。



このパッサテッリを、『ラ・クチーナ・イタリアーナ』ではクリスマスイブ用にアレンジしています。
イタリアのクリスマスイブは、肉を食べない日。
チーズと肉のブロードを使わないでパッサテッリを作ったらどうなるか・・・。


そこで考えだしたのが、チーズの代わりにスカンピを使い、ブロードもスカンピの頭と殻で取ったフメットに換えた一品。
スカンピのパッサテッリ!

味は分かりませんが、なかなか面白そうですよ。

多分これは、牛肉のパッサテッリの応用ですね。
“牛肉のパッサテッリ”は、マルケ料理として知られる1品。

こんな料理

生地に挽いた牛ヒレ肉とゆでたほうれん草が入っています。

『GRANDE ENCICLOPEDIA ILLUSTRATA DELLA GASTRONIMIA』では、
・ロマーニャ風パッサテッリのパン粉の量を1/3、パルミジャーノを半分にし、代わりに牛ヒレ150g(挽いて裏漉しする)を加える。
・レモンの皮は加えない。
・ゆで時間は10分。

と、ほうれん草なしのリチェッタを紹介しています。
色々バリエーションがあるようですね。


スカンピのパッサテッリがあるなら、オマールのパッサテッリやカニのパッサテッリとかがあってもいいかも、と思ってweb上をちょっと探してみたら、いろいろありましたよー。

こちらはシーフードのパッサテッリ。

・パッサテッリは卵、パン粉、小麦粉、塩、こしょうで作る。
・アサリとムール貝を熱して開ける。
・エビとスカンピの頭と殻、香味野菜でビスクを作る。
・ヤリイカ、殻をむいたエビとスカンピを細く切る。
・パッサテッリを湯で塩ゆでする。
・ブロード・ディ・ペッシェ、アサリとムール貝の汁、甲殻類のビスクをフライパンで熱し、パッサテッリを入れてなじませる。イカ、エビ、スカンピを加えて3分熱し、貝を加える。



下の動画は、ロマーニャ地方のパスタメーカーが紹介する、冷凍パッサテッリを使った“ムール貝とブロッコリーのパッサテッリ”。






他にも、スカンピのパッサテッリにウニのソース、パッサテッリ・イン・ブロード・ディ・ペッシェなんていう料理も見つけました。
色々できるものなんですねえ。



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関連誌;『ラ・クチーナ・イタリアーナ』2006年12月号(クレアパッソで販売中)
“クリスマスと新年の定番料理”より。
リチェッタの日本語訳は「総合解説」'06&'07年12月号、P.2に載っています。


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2009年3月12日木曜日

ペコリーノ・ロマーノとペコリーノ・サルド

先日、Foodexでサルデーニャの食材をつまみながら、ふと思ったことがあります。
ペコリーノ・サルドとペコリーノ・ロマーノの違いってなんだっけ。


ペコリーノ・ロマーノの表面に押される管理組合のスタンプ
photo by macsimil2000



ペコリーノ・サルド、パーネ・カラザウ、アルジョラスのワインでサルデーニャに浸る
photo by LiFFu



ペコリーノ・サルドはサルデーニャで作っていて、ペコリーノ・ロマーノはラツィオで作っている、と言えれば簡単ですが、そうでないからややこしい。

こちらはペコリーノ・ロマーノDOPの製造規定。

これによると、ペコリーノ・ロマーノDOPと名乗れるチーズは、ラツィオ州、サルデーニャ州、そしてトスカーナ州のグロッセート県で造られたもの。

たとえサルデーニャやトスカーナで作っても、名前はペコリーノ・ロマーノ。
しかもペコリーノ・ロマーノの大部分はサルデーニャ産なんですねー。
つまり、ペコリーノ・ロマーノはもはや、サルデーニャ名物の一つでもあるわけで・・・。

たとえばこちらのサルデーニャのチーズメーカーは、ペコリーノ・ロマーノもペコリーノ・サルドも作っています。

これはつまり、千葉だけど東京ディズニーランド、みたいなもの?


ペコリーノ・ロマーノ管理組合によると、2005年度のペコリーノ・ロマーノの総生産量のうち、サルデーニャ産は約23,414トン(98.15%)、ラツィオ産は441トン(1.85%)。
情報源はこちらのページ
ラツィオは前年よりぐんと生産量が減っています。

どうやら今やペコリーノ・ロマーノは、ほぼ全てサルデーニャ産なんですね。


それでは、ペコリーノ・ロマーノがどこで作られたものかを知るには、どうしたらいいのか。

それはペコリーノ・ロマーノのマークの下に記載されています。

ちょっと見にくいですが、これがペコリーノ・ロマーノDOPのマーク。
「AB 000」の所に生産者の県が記載されます。


今や幻となりつつあるラツィオ産のペコリーノ・ロマーノ。
下の動画はラツィオのペコリーノ・ロマーノを紹介しています。
「本物のペコリーノ・ロマーノ」としきりに言っていますねー。




製造過程は
・殺菌後38~40度に熱し、子羊のレンネットを加えて固める。
・ホエイを出す。
・マークをつける。
・約70日かけて塩漬け。
・そして最低5ヵ月熟成。5ヵ月のものはテーブルチーズ、8ヵ月のものはおろして使う。

出来上がりは高さ25~40㎝、直径25~35㎝、重さ25~30kg。
味は辛口で羊特有の塩気。


そしてペコリーノ・サルドが出来るまで。
ついでにリコッタも作っています。




基本はロマーノとほぼ同じ。

違いは
・サルデーニャでのみ作られている。
・ドルチェタイプは熟成は20~60日、重さ1~2.3kg、高さ6~10㎝、直径15~18㎝。
・マトゥーロタイプは熟成は2ヵ月以上、1年寝かせるものもある、重さ1.7~4kg、高さ10~13㎝、直径15~20㎝。
・味はドルチェはマイルドで、アロマと軽い酸味があり、マトゥーロはもっと味が強く、心地よい辛さ。


ペコリーノ・サルド管理組合によると、ペコリーノ・サルドの2005年の生産量は1,603トン。
うちドルチェは626トン、マトゥーロは977トン。
ペコリーノ・ロマーノの10分の1以下なんですね。


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2009年3月9日月曜日

イタリアの歴史をマンガで知る?

まずはクレアパッソからのお知らせ。
次の配本の発送は3月14日の予定です。
遅くなってしまって申し訳ありませ~ん!


さて、今日はちょっと趣を変えて、イタリアの歴史の話。

歴史と聞いて興味が無くなってしまったそこのあなた、まあちょっと待ってください。
確かに歴史の話なんですが、実は今、アニメやマンガの世界で、イタリアの歴史を取り上げたマンガが、ちょっとした話題になっているんですよ。

そのマンガは「Axis powers ヘタリア」。

作者はニューヨークのデザイン大に通う23歳の日本人男性、日丸屋秀和さん。
この人が自身のサイトに掲載しているマンガが発信源で、今では本やアニメにもなっています。
日本だけでなく、世界中にファンがいます。

“ヘタリア”とは、「へたれなイタリア軍」という意味でweb上で使われていた言葉なんだそうです。
どんなマンガかというと、世界の様々な国を擬人化して可愛いキャラクターにし、実際の歴史をネタにしながら展開するコメディー。

確かにおこちゃま向けではありますが、だからと言ってあまり馬鹿にはできませんよー。
神聖ローマ帝国、イタリア戦争、オーストリア=ハンガリー帝国、第二次大戦、そんな時代がこのマンガの舞台なんです!
マンガやアニメでここまでイタリア史を取り上げるなんて、本当に日本のおたく文化って半端じゃない!


ヘタリアの登場人物はこんな国々

マンガはこちらのサイトで読むことができます。
こちらが本家。

アニメはこちらのサイトで配信されています。

第1話
(注!もしあなたがイタリア人なら、広い心で観てください。たわいもない子供向けのアニメです。作者はイタリアのことが好きだからこれを描いたはずです。でも、プライドの高い人は観ない方がいいかもしれません。)


イタリア料理の話をする時は、あなたがイタリアの歴史をある程度知っている、ということが大前提。

例えば以前にストゥルーデルの話をしましたが、このドルチェがイタリアの地方料理になったのは、かつて北イタリアが、オーストリア=ハンガリー帝国の支配を受けていたということが大きな理由の一つでした。
ミラノ風コトレッタの話をした時は、オーストリアのラデツキー将軍がロンバルド=ヴェネト王国の司令官としてミラノに赴任した、という話もしましたねえ。

こういう話をする時に、本当はイタリアの歴史をもっと詳しく説明したいのですが、そうすると複雑すぎて、料理の話より長くなってしまいます。

地方料理の話を書く時は、本で歴史を確認することがよくあります。
実はそっちを調べている時間の方が長かったりするんです。

カダイフという中東系の麺の話を書いた時も、プーリアとイスラエルの歴史的なつながりを知るためにあれこれ調べました。
でも実際の文章になったのは、

「パレスチナは、かつてヨーロッパから十字軍が渡ってエルサレム王国を築いた地。
その十字軍の中継地となったのがプーリアでした。」
の2行。

あーん、もっと説明したいこといっぱいあるんだけどなあ。

そんなジレンマを、ヘタリアは少し癒してくれます。
このマンガを見て、イタリアの歴史に興味を持つ子供たちもいるんだろうなあ・・・。
まあ女の子たちは、歴史どうこうよりもキャラの可愛さに夢中になるようですが。


もちろん、ヘタリアはあくまでギャグ漫画で、歴史を忠実に伝えている訳ではありません。
だからこれを観てイタリア史が分かるとも思わないし、ある程度イタリアの歴史を知らないと面白くありません。
イタリアの擬人化にしても、ちょっと違うよなあ、と激しく思いますが、まあパロディーとはそういうもの。
ただイタリア人の中には、残念ながらここらへんのジョークが理解できなくて不快に思う人もいるようです。
つまり万人向けではない、ということでしょうか。
でも、ヘタリアを観ていると、「世界はみんな仲良くしようよ」、という作者の思いもほんわかと伝わってきます。

ヘタリアは第二次世界大戦を主に描いているので、イタリアだけでなく様々な国が主役として登場します。
そのためか、web上では世界中のファンがヘタリアについて熱く語り合っています。
イタリアの歴史をもっと勉強する気になった、と言う心の広いイタリアの子もいますよ。
歴史を知りたい、と思うきっかけは人それぞれ。
こんなマンガから入ったっていいじゃないですか。
それに、イタリアの歴史を知るとイタリア料理が2倍面白くなる!


おまけ
ヘタリアのコスプレが大受け


おまけその2
ヨーロッパの某国の人が悪のりしました。
イタリアのみなさん、ごめんなさい。
でも、みんな好きなんです。
「パスタあ~!!!!」



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2009年3月6日金曜日

ボラのスモーク

久しぶりにFOODEXに行って、あれこれつまみ食いをしてきました。
今年は3月3日から6日まで開催中。

イタリア関連はかなり広いスペースを取って展示していましたが、こういう展示会の時のイタリアの皆さんて、いつも思うんですが、なんというか、よく言えば力が抜けてますよねえ。
頑張って売り込もう、という素振りは皆無。
展示されている商品を眺めていても、「・・・・・」と無言で眺め返されて、なんだかいたたまれない気分になる~。

そんな中で、優しい通訳さんがいるブースはほんとにホッとします。
今回も、そんなブースがいくつかありました。
その一つが、サルデーニャの食材を販売しているタロス・ペスカTHARROS PESDAという会社。
hpはこちら


サルデーニャ関係で多く展示されていた食材は、ボッタルガやペコリーノ・サルドなど。
ボッタルガと言えばボラの卵ですが、この会社ではボラの身のスモークも売っていました。

味見をしたいと言うと、パーネ・カラザウにボラのスモークをのせ、パウダー状のボッタルガをたっぷり散らして、さらにオリーブオイルもたっぷりかけて出してくれました。


ボラのスモークのボラのボッタルガがけ


食べる前に写真を撮ろうとカメラの準備を始めたら、とたんに周りの人たちから「なんだなんだ」と手が伸びてきて、あっという間に横取りされたー!

そこで今度は、ボッタルガ倍がけで作ってくれましたよー。


ボラのスモークは初めて食べたなあ。
でも正直言うと、ボッタルガのパウダーが大量過ぎて、ボラの味がよく分からなかった・・・。
一緒に食べたメカジキのスモークよりはマイルドで、くせがない味ですね。



ボラのスモーク


最初はとっつきにくそうだったブースの人も、あれこれ味見させてもらっているうちに、可愛い(?)笑顔で写真撮影に応じてくれましたよー。



ご馳走さまでした。


ちなみにこの会社、まだ日本の取引先はいないそうです。


ボラはイタリア語でムッジネ muggine 。
そのスモークは、ムッジネ・アッフミカート muggine affumicato 。
サルデーニャではおなじみの食べ物。

イタリアで魚のスモークの盛り合わせというとサーモンやメカジキあたりが一般的ですが、ボラもなかなか面白いですね。
ポイントは、オリーブオイルをたっぷりめにかけることでしょうか。
ワインが進む味でした。



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2009年3月2日月曜日

オスカーワイン、白

オスカーワインの話の続きです。

今日は白ワイン。

ガンベロ・ロッソが出版している8ユーロ(約1000円)以下のおいしいワインのガイドブック、『アルマナッコ・デル・ベーレベネ』。
その2008年版でベスト白ワインに選ばれたのは、ウンブリアのワイン。

ルンガロッティ(hp)の“トルジャーノ・ビアンコ・トッレ・ディ・ジャーノ2006” Torgiano Bianco Torre di Giano

オスカーワインの常連さんです。
こちらのショップでは、2007年のものが6.9ユーロ。
約860円。

経営者の一人、キアーラ・ルンガロッティさんは、『ガンベロ・ロッソ』にこう語っています。

「“トッレ・ディ・ジャーノ”は、私たちの歴史そのものです。
45年前に造り始めて、今では年間50万本近くを製造するまでになりました。
このワインは常に、毎日飲むワインであることを念頭に置いて造っています。
だからフレッシュで飲みやすいのが特徴です。
さらにここ数年はより詳細にこだわって、もっと豊かなアロマとこくのあるワインを目指しています」


そして『ガンベロ・ロッソ』はこう評しています。

このワインは、1968年に誕生したイタリアで最初のDOCワインの一つだ。
そのような長い伝統に、磨き上げられた技術が見事に結びつき、中部イタリアのこの価格帯の白ワインからは想像もできないような豊穣さを生み出すことに成功している。
使われているぶどうは伝統的なブレンドで、トレッビアーノ・トスカーノ(70%)とグレケット。
生産量は45万本。
素晴らしい白。
注目に値する、買うべきワイン。
しかもこの値段なのだから感激だ。
香りは、まず、はっきりとしたアロマを感じ、すぐに想像以上に強くて長く続く香りが現れる。
口に含むと、しっかりしたボディーと深さが際立つが、飲みやすさ、フレッシュさ、締まった味わいも失ってはいない。
ここ数年では最高の出来。


これまた、イタリアで買えば860円のワインだということを忘れてしまいそうな褒めっぷりですねー。
今すぐ買いたい気分ですよ。


白ワインの第2位は、マルケのワイン。

コッレステファノ(hp)のヴェルディッキオ・ディ・マテリカ・コッレステファノ2006 Verdicchio di Matelica Collestefano

こちらのショップでは8.6ユーロですね。

コッレステファノは、ヴェルディッキオ・ディ・マテリカのみを造っています。
製造量は年に6万本。
経営者のファビオ・マルキオンニさんはドイツで醸造学を学び、アルザスで働いた経験もある人物。
『ガンベロ・ロッソ』によると、ファビオのワインにもどこかドイツの製法を感じさせるところがあるのだそうです。
ファンが多いワインのようです。


第3位は、シチリアのワイン。

クスマーノ(hp)のアンジンベ2006 angimbé

こちらのショップでは、2008年のものが7.2ユーロ。

ぶどうはインゾリア70%とシャルドネ30%。
2006年のヴィンテージは30万本生産。
『ガンベロ・ロッソ』いわく、「常に成功の道を歩む若いカンティーナ」。
カッコイイですねー。


それにしてもイタリアの男性はどうしてこんなにフォトジェニックなんでしょうねえ。
コッレステファノのファビオさんとクスマーノのディエゴさん、『ガンベロ・ロッソ』のどアップ写真は、二人ともまるでイケメンモデルみたいです。

おまけ
このクスマーノのプロモ写真、モデルはクスマーノ兄弟自身。



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関連誌;『ガンベロ・ロッソ』2007年11月号
“オスカー2008”の解説は、「総合解説」'06&'07年11月号、P.37に載っています。


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