イタリア料理ほんやく三昧: ラルド

2009年9月18日金曜日

ラルド

まずは、クレアパッソの定期購読ご利用の皆様へ。

もうすぐ次号を配本の予定です。
現在、馬力をかけて総合解説の最終仕上げを行っておりますので、もう少しお待ちくださ~い。


今日はその、もうすぐ配本号の総合解説から。


『ラ・クチーナ・イタリアーナ』の「グルメ紀行」で紹介しているのは、アルト・アディジェのヴァル・ダヤスという渓谷です。

モンテ・ローザのふもとにあって、周囲には標高4,000mを超える山もあります。
なんでも、モンテローザスキーエリアという巨大なスキー場(?)の一部なんだそうで、ウインタースポーツが好きな人ならご存知かも。



ヴァル・ダヤスの乳牛, photo by kenyai
気持よさそう~


ヴァッレ・ダオスタの料理の話をする時、必ず登場するのが、“アルナのラルド”と“モチェッタ”。
今回の記事でも、たいていのレストランが、これらを前菜のメニューに載せています。

モチェッタは、元々はアイベックス(エイベックスじゃないですよ~)というアルプスに棲む山羊の一種のもも肉を干した生ハムのようなものですが、今は鹿やカモシカなどから作っています。



モチェッタ, photo by Rubber Slippers In Italy



ラルドは、豚の皮のすぐ下の脂身を塩やスパイスで漬けたもの。
ラードじゃないですよ~。
ちなみに、ラードはイタリア語では“strutto(ストゥルット)”。


今回は、ラルドの話。

ラルドというと、大理石の桶で漬けるコロンナータ(トスカーナ)のラルドも有名ですが、アルナのラルドは、木の桶で漬けます。
ヨーロッパで唯一のDOPのラルド。

アルナのラルド



コロンナータのラルド, photo by Claudio Cicali




アルナのラルドと蜂蜜のパニーノ, photo by Rubber Slippers In Italy


こうやっておしゃれな料理になっている姿を見ると、一瞬、これが豚の脂身だということを忘れてしまいそうですねえ。

メタボだなんだと動物性脂肪は嫌われがちな昨今、体脂肪を気にしながらも、あえて豚の脂身を食べるというのは、食通の意地というか、さがと言うか。
一見地味な食材のラルドですが、イタリア料理史上の様々な食通が、ラルドについて語っています。

中でも、教皇の料理人だった16世紀の人、バルトロメオ・スカッピが語った言葉は、ラルドの本質をついたもの。

「ラルドは、農家ではなく、森で育てた雄の若い豚から取ったものでなくてはならない」

なるほど、豚の脂身なら何でもいいわけじゃないんですね。

実はラルドは、昔のイタリアの農民に取っては、とても身近な食材でした。
農家では、豚を捌いたら、保存のきかない血や胸肉を食べて盛大な宴会をしました。
ももは、物々交換の材料や小作料の代わりになるので、滅多に食べることはできません。
サルシッチャやコテキーノ、ロース肉は、ある程度保存することができました。
そして、ほぼ一年間保存することができたのが、少量のサラミ、ラード、そしてラルドです。
ラードは、ラルド以外(皮の下以外)の脂身で締まっていない部分から取りました。


保存ができたとは言え、それは最低限の食料としてのラルドのこと。
食通が選ぶ上質なラルドの条件は、締まっていて塩分が少なく、新鮮なものです。

ペッレグリーノ・アルトゥーシは、
「揚げ油は、トスカーナでは植物油、ロンバルディアではバター、エミリア地方ではラルドが使われる。
エミリア地方のラルドは真っ白で身が締まり、ローリエの香りのするとても上質なものだ」
と書いています。
ビスケット生地を作る時も、バターの半量は溶かしたラルドにするとよいと言っています。

イタリアでも、豚の背脂は、消費の傾向に合わせてどんどん薄くなっていく傾向があるようです。
ラルドは今後、生き残っていくのでしょうか。



 - - - - - 

クレアパッソからもう一つ、ご連絡です。
ドルチェの本についてご質問いただいた方、メールアドレスをお知らせくださればご返信いたします。
ご質問等、いつでもお気軽にどうぞ。



-------------------------------------------------------

[creapasso.comへ戻る]

=====================================

10 件のコメント:

くるり さんのコメント...

このモチェッタって、ハート形でかわいいですね〜。ラルドって日本にいたら絶対にのいて食べてたものだろうけど(脂身が苦手なので)、不思議と向こうではパクパク食べられちゃうんですよね。肉加工文化の歴史の厚みがなせる技かなぁ。

prezzemolo さんのコメント...

くるりさん
このモチェッタはおいしそうですね。
ラルドを食べる時は、どうしても自分の皮下脂肪を想像してしまいます。
私はまだパクパクとまではいきませーん。

話は変わりますが、モンテプルチャーノ・ダブルッツォから造ったパッシートの「コッリーネ・ペスカレージ・IGT・クレマティス Clematis 2002」(Zaccagnini)というのが美味しいらしいですよ。
クチーナ・エ・ヴィーニの『パッシート・ディ・イタリア2008年版』で、最も感動的なパッシートに選ばれてるんです。
赤の甘口ですが、アブルッツォで機会があったら、味見してみるのもいいかも。

畠山 さんのコメント...

ヨーロッパも山奥になると牛の種類も様々ですね。うちにもこういうの一頭いると面白いのですが。

ラルド、聞いたことはあるのですがまだ食べたことありません。
プロシュートやパンチェッタほど知られてないからでしょうか。日本でも輸入食料品店で気軽に手に入ればいいのですが。

くるり さんのコメント...

Zaccagniniの情報ありがとうございます。うれしい次回の宿題だなぁ。
実は短い滞在でもう戻ってますが、ciff' e ciaff'はどうもアドリア海沿いの山側にあるみたいですね。今回あまり胃の調子がよくなくて食が進まなかったのですが、とにかく自家製リコッタだけはおいしかった。どの店もほんのりあったかで、とにかくミルクの味が濃い!って感じでした。あと、ラルドと唐辛子を練ったものやモスカート・コットもおいしかったです。

italiamama さんのコメント...

山の牛はのびのびと本当に幸せそうですね。世話をする側の人間の苦労は大変そうですが。
さて、ラルド、おいしいですよね。コロンナータには何度か出かけて、製造現場も見せてもらいました。この大理石の箱はアイモ エ ナディア用、これはピンキオリ用と有名レストランからの注文で作られているものもありました。昔は大理石を切り出す職人の栄養源だったものが、スローフードのプレシーディオになってからすっかり有名になって、高級食材になり、値段も上がってしまいました。

prezzemolo さんのコメント...

畠山さん
牛も色んなのがいるもんですねえ。
交配も進んでいるから、アルプスの山の上にジャージー種の血を引いた牛もいるし。
詳しく知っていたら面白そうですね。

そういえば、ラルドは専門店でしか扱ってないですよね。
国産品を作っているところあるのかなあ。
日本じゃ売れないかな。

prezzemolo さんのコメント...

くるりさん
アブルッツォのヴィーノ・コット、飲んでみたいんですよー!
リコッタも美味しいんだろうなあ。

prezzemolo さんのコメント...

italiamamaさん
コロンナータのラルドは、レストランごとに造り分けてるんですか。
す、すごい~。
今頃気がついたんですが、皮の下の脂身って、つまり皮下脂肪じゃないですかー!
大金払って皮下脂肪食べるって、私には、ある意味すごく勇気がいります(笑)

Vittorio さんのコメント...

ラルドは私はお肉のテリーヌのベースにしています、他はクビ〔豚トロ〕の部分とか、背脂を使っていますが…コクと深みが違います。お客様も絶賛です。

私はそのままカナッペで赤ワインと食べます(笑)

prezzemolo さんのコメント...

Vittorioさん
やっぱり脂身は美味しさのポイントですよねえ。
豚も肉だけじゃなくて脂身まで全部おいしく食べるのがエコってもんだ~。
でも皮下脂肪・・・(笑)