2009年5月18日月曜日

グアルティエロ・マルケージ

今日はイタリア料理界の大御所、グアルティエロ・マルケージ氏の話。
『ラ・クチーナ・イタリアーナ』と『V&S』の記事の解説です。


グアルティエロ・マルケージ氏は、1930年ミラノ生まれ。

写真の中央の人物

これは去年の写真。
当時78歳とは、お若いですねー。

彼は、1985年にイタリアで最初にミシュランの3つ星を獲得したシェフとして、文字通り一世を風靡しました。
1993年にミラノからエルブスコに店を移しましたが(その店、ラルベレータは2つ星)、その後もイタリア料理界の顔として精力的に活動を続けて現在に至っています。
マルケージ氏の元で修業した料理人たちは、マルケージ・チルドレンと呼ばれて注目を浴び、彼らも活躍しています(トゥルッサルディ・アッラ・スカラのアンドレア・ベルトン氏、ドーのダヴィデ・オルダーニ氏、クラッコのカルロ・クラッコ氏など)。
まさに、イタリア料理の一つの流派を築いた人。
その影響力はいまだに衰えず、今月も、クレアパッソで扱っている2つの雑誌が彼を取り上げています。


実際、彼ほどその料理が人々の記憶に残っているイタリアのシェフはいないのではないでしょうか。
『V&S』では、彼を“アーティスト系シェフ”の一人として紹介していますが、まさに、彼の料理は絵画のようで、その外見には強いインパクトがあります。


マルケージ氏の代表作と言えばこれ、“金箔とサフランのリゾット”。

幅広の真っ黒いリムの平皿に、鮮やかな黄色のリゾットを薄く広げ、その中央に輝く金箔をドーンと1枚平げた、2次元的な料理。
徹底的にシンプルでありながら、20年以上たった今でも、誰もが一目でマルケージ氏のリゾットだと判る強烈な料理。
料理を金箔で覆うという、ともすれば成金的で下品になりがちなアイデアを、ここまで品よく見せるには、そうとうな審美眼が必要なはず。
誰もやろうとしないことをやる人ですねえ。


彼の料理は、「ロンバルディアの伝統をばらばらに分解し、それを独自の感性で再構築したもの」、と評価されています。
それがもっともよく分かるのが、『ラ・クチーナ・イタリアーナ』の記事でも言及しているコストレッタ・ミラネーゼ。
文字通り、伝統的なコストレッタを分解して、また組み立てた一品です。
その名も、“コストレッタ・パズル”。

こちらの最後のページにある料理

これはなかなか衝撃的ですねえ。
いったい何を考えてこういう料理にしたのか、凡人の理解の範囲を超えています。

『ラ・クチーナ・イタリアーナ』では、こんな超前衛的な料理を作るマルケージ氏の店に、イタリアのスポーツジャーナリズム界の大物で、ロンバルディア料理の本も書いている食通、ジャンニ・ブレラ氏が訪れて、超前衛的なカッスーラを食べた時のエピソードを紹介しています。
イタリア中のスポーツファンから尊敬された頑固でこだわりのある大物ジャーナリストは、きっちり正方形に切られた豚皮を食べてなんと言ったのか!
その答えは「総合解説」でどうぞ~♪



マルケージ氏のアバンギャルドな精神は、今も健在です。
最近、彼の代表的な料理となっているのは、ジャクソン・ポロックの絵のような一品。
タイトルは、“ドリッピング・ディ・ペッシェ;魚の雫”。

こちら

年齢を感じさせないやんちゃぷりと言うか、元気ですねえ。


エルブスコのマルケージ氏の動画



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関連誌;『ラ・クチーナ・イタリアーナ』2007年1月号、『V&S』2008年1/2月合併号
関連記事の“豚肉と縮緬キャベツ”は「総合解説」'07年'081月号、P.5、“ロンバルディアのアーティスト系シェフたち”は同号、P.30に載っています。


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2 件のコメント:

Yuma Milano さんのコメント...

ちょうど今、ミラノでマルケージ氏と
イタリア料理に関する展覧会が
開催中です。
あとマルケージ氏についての記事を
ブログにアップしましたので、お時間あれば
見ていただければ嬉しいです。
http://yumamilano.exblog.jp/13642298/

prezzemolo さんのコメント...

Yuma Milanoさん
コメントありがとうございます。
マルケージさんは相変わらず話題の中にい続けているんですね。
ブログも見させていただきました。
なるほど、深くて大きな視野を持った料理人なんですねえ。
お弟子さんたちも大活躍で、ミラノのレストラン業界は話題がたくさんありそうですね。

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