イタリア料理ほんやく三昧: イタリアワインの20年、その2

2009年4月30日木曜日

イタリアワインの20年、その2

今日は、過去20年のイタリアワインの紆余曲折の話、その2。
『ガンベロ・ロッソ』の記事の解説です。


ワインスキャンダルでどん底に落ちた後、次々に誕生した新しいスタイルのイタリアワイン。
そのワインが華やかに開花したのは、1995年から2000年のことでした。

当時、世界に一大ワインブームが訪れます。
特に、アメリカとアジアの市場が熱狂の舞台。
ガンベロ・ロッソは、「集団泥酔」の時代だったと言っています。
アジアでは、日本だけでなく、韓国、インドネシア、シンガポールもワイン業界が注目する市場となりました。

高級ワインがバンバン売れる。
値段がぐんぐん上がる。
それでも売れる・・・。

当時のワインの値段は、「良識の範囲を超えていた」とガンベロ・ロッソは言っています。
きっかけは、ボルドーの95年のアン・プリムールだったとか。

イタリアで一番の勝ち組になったのは、トスカーナワインでした。
アルト・アディジェの白ワインも注目されるようになり、南では、プラネータ(プラネタ)とフェウーディ・ディ・サン・グレゴーリオが頭角を現します。

まさに、イタリアワインのバブル時代だったんですねえ。


泡がはじけたのは、2001年初めでした。
2001年と言えば、アメリカで同時多発テロが発生した年。
この年の9.11より前に、すでにイタリアは経済危機に突入していました。
きっかけの一つは、1999年のユーロ導入。
最初は目立たないほどの小さな変化から始まって、気がつけば、物価が劇的に上昇しだしたのです。

ガンベロ・ロッソは、「“太った牛”の時代が終わった」と表現しています。
これは、旧約聖書の創世記に出てくるエピソード。
こんな話です。

ある夜、エジプトのファラオが夢を見た。
自分はナイル河のほとりに立っている。
すると、7頭の雌牛が河から上がってきて、草をはみだした。
よく肥えた美しい牛だった。
さらにその後に、別の7頭の雌牛が河から上がってきた。
今度はやせ細った醜い牛だった。
そしてその痩せた牛たちは、なんと太った牛たちを食べてしまった。

ファラオは、夢解きをするというヘブライ人のヨセフに、この夢はどういう意味なのか尋ねた。
するとヨセフはこう答えた。

「それは神のお告げです。
エジプトは、これから7年間、豊作でとても潤う年が続くでしょう。
しかしその後に、飢饉が7年続きます。
だから王様、豊作の7年の間に出来るだけたくさん蓄えて、その後の飢饉にそなえなくてはいけません」

ファラオはヨセフを信頼して彼を宰相に任命し、飢饉に備える大役を任せた。
そして実際に、大豊作が7年続いた後に大飢饉が7年続いた。
もちろんエジプトは、この困難を乗り切ることができたのだった。


この太った牛の話は有名なようで、経済危機になるとエコノミストが必ず持ちだす話なんだそうです。
確かに、いくらでも売れる~とウハウハしていた時代に、売れなくなる時のことをもっと考えておけばよかったですねえ。
でも、もう後の祭り。

すべての物の値段が上がり、イタリアワイン業界は、経費の値上がりに四苦八苦します。
しかもそのうちに、お得意様のドイツやアメリカの経済も雲行きが怪しくなってしまいました。
そうなると、輸出向けの高級ワインが売れない。
外国市場向けに外来品種のぶどうで造ったワインが売れない。
しかも、2003年以降は天候不順で、気温上昇と雨不足。
踏んだり蹴ったりです。

当時のイタリアワイン業界の気分は、「みんな、ちょっと後ろに下がって!」

原点に戻ろう!
やっぱり伝統は大切だよ!!
イタリアの土着のぶどうだって素晴らしいじゃないか!!!

事態が深刻だっただけに、原点回帰の傾向は、時に度を越してしまうこともあったようです。
でもその後、適度に原点回帰、という流れに落ち着きました。
さらに、有機ワインも目立つようになってきました・・・。


これが2007年末までのイタリアワインの流れです。
伝統への回帰とオーガニック、この2つをキーワードに、それなりに頑張ってきたイタリアワイン。
この後に、未曽有の世界的な大不況に見舞われるとは、ガンベロ・ロッソもまったく予想していなかったでしょうねえ。
2009年末あたりにはどんな記事が載るか、注目です。



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関連誌;『ガンベロ・ロッソ』2007年12月号
“ヴィーニ・ディ・イタリア2008”の記事の解説は、「総合解説」'06&'07年12月号、P.38に載っています。


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