今日はワインの話。
『V&S』の記事の解説です。
『V&S』で取り上げているのは、コルヴィーナ。
主にヴェネト州で栽培されているコルヴィーナ種のぶどうを使った赤ワインです。
ぶどうのコルヴィーナは、アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラにも使われる、ボディーとデリケートなアロマのある品種。
ヴァルポリチェッラ地区のぶどう畑, photo by Marinus van Opzeeland
コルヴィーナとは、カラス(コルヴォ)という言葉が語源。
なんでカラスという名前がついたのか。
その由来を伝えるのは、こんな伝説・・・。
その昔、ヴァルポリチェッラの丘で栽培さていれたのは、すべて白ぶどうでした。
農民たちを悩ませていたのは、畑を荒らすカラスたち。
そこで農民たちは、ぶどうを守るためにカラスを一掃します。
ところがある日、一人の農民が傷ついて飛べずにいるカラスを見つけました。
哀れに思った彼は、そのカラスを手当してやりました。
やがて傷が癒えて、カラスは飛び立ちました。
去っていく際に、カラスはぶどう畑の上を低く舞いました。
するとなんと、畑のぶどうがすべて黒ぶどうに変わっていったのです。
こうして、ヴァルポリチェッラでは黒ぶどうが栽培されるようになったのでした・・・。
これがコルヴィーナの伝説。
そして、カラスがその上を舞ったと言われている丘は、“ラ・グローラ”という名前。
ヴェネトの方言で「カラス」という意味なんだそうです。
1978年、この丘の畑を、ジョヴァンニ・アッレグリーニという人物が買い取りました。
そして、そこで栽培したコルヴィーナを使って、イタリアで初めて、コルヴィーナ100%のワインを造りました。
La Poja(ラ・ポーヤ)というワインです。
アッレグリーニのhpのLa Pojaのページ
↓
www.allegrini.it
コルヴィーナの伝説は、いわばカラスの恩返し。
そう言えば、イタリアにはもう一つ、カラスと言う名前のワインがありましたねー。
そう、シチリアのコルヴォ。
このワインのカラスは、こんな言い伝えを残しています・・・。
その昔、パレルモ県のカステルダッチャという町のぶどう畑に、朝から晩までやかましく鳴き続ける一羽のカラスがいました。
あまりにうるさくて、農民たちはイライラして畑で仕事をすることもできません。
そこで、ある修道士に相談しました。
その修道士は、動物と話をすることができると評判だったのです。
修道士の説得で、カラスはもう畑では鳴かないと約束します。
ただし、一つだけ条件がありました。
嫌われ者のカラス、というイメージを改めてほしい、というのです。
そこで農民たちは、カラスが鳴かなくなった畑に“カラス(コルヴォ)”という名前をつけて、ぶどうを大事に育てたのでした。
19世紀初め、この地方の領主だったサラパルータ公のジュゼッペ・アッリアータは、この畑から造られたワインに“コルヴォ”という名前を付けました。
そして1824年に、ワインメーカー、ドゥーカ・ディ・サラパルータを創業し、館の客に出すことのできるような、上質なワインを造り始めます。
こうしてワインのコルヴォが誕生したのでした。
この修道士さん、動物と話ができるってのもすごいですが、カラスを説得できるってのはもっとすごい!
冬のカラス, photo by Andrea Zanivan
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関連誌;『V&S』2007年9月号(クレアパッソで販売中)
“コルヴィーナ”の解説は、「総合解説」'06&'07年9月号、P.35に載っています。
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